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はじめてみると…簡単!楽しい!
話題のサイト「プラなし生活」の
お二人に聞いた、
プラスチックを減らすヒント。

  • 中嶋 亮太生物海洋学者
  • 古賀 陽子プラなし生活実践中の主婦

「プラなし生活」とは
日常生活でプラスチックを「なるべく」減らす・使わないようにするために、すぐに取り入れられる知恵や知識をまとめたウェブサイト。中嶋さんと古賀さんが2017年に開始しました。月に1〜2回のペースで更新を続けています。

はじめてみると…簡単!楽しい!話題のサイト「プラなし生活」のお二人に聞いた、プラスチックを減らすヒント。

誰にでも簡単にできるのでしょうか?
家計の負担になったりしませんか?
すぐできる! 安心「プラなし生活」。

『プラなし生活』を始めたきっかけは?

古賀2017年まではプラスチックごみ問題なんて全然意識してなかったんです。レジ袋も平気で使ってました。でも、中嶋さんからプラごみ問題を詳しく聞いたら、自分でも何かできるかなと、プラごみを減らす生活を始めてみたんです。これが意外とおもしろくて、すっかりハマってしまって。
中嶋もっとも効果的な解決方法は、使い捨てのプラスチックを減らすことです。生活レベルでできることの情報をわかりやすくシェアしたいと思って、『プラなし生活』をスタートしました。

「プラなし生活」は楽しみながらできると書いてあります。本当ですか?

古賀プラスチックではないものを選ぶと、木・ガラス・ステンレスが増えます。自然と身の回りのものがセンスアップするんですね。見ても、触れても、うれしい。使っているときの気分が上がる。新しいものを取り入れるワクワク感もあります。生活が変わると、気分も変わりますよね。
中嶋完全にゼロにしなくてもいいんです。ゲーム感覚で減らし始めるのもいいですよ。お子さんと一緒に、まず1週間分のプラごみを溜めてみて「これをどれだけ減らせるかやってみようか」と声をかけると、おもしろいほど張り切って参加してくれたりします。

「プラなし生活」にすると、
家計が楽になりますか?

古賀飲料用ペットボトルは災害対策用以外、買わない。洗剤もクエン酸や重曹で作ることができます。液体せっけんやボディーソープも、固形せっけんで問題なし。シンクの水切りネットはなくても事足りますし、生ごみ用のポリ袋は新聞紙で作れるんですよ。それぞれ安価ですから、生活費の節約にもつながります。

レジ袋はやめてマイバッグにしていますが、他におすすめの「マイ○○」は?

古賀外食をテイクアウトするとき、お弁当箱やタッパーを持っていけば、プラごみなしです。マイストローやマイフォークも持ち歩く。レジ袋やポリ袋も「使い捨て」がダメなので、完璧にやめなくても、マイポリ袋として持ち歩いて、繰り返し使う手もあります。

マイボトル選びのポイントって
ありますか?

中嶋シンプルな構造で、洗いやすいボトルにするのがいいですね。余計な機能がついていないもの。
古賀お気に入りのボトルに出会うまで、じっくり探すのって楽しいですよ。

マイボトル選びのポイントってありますか?

ガラス瓶にすれば、
環境にはいいのでしょうか?

中嶋ペットボトルとガラス瓶。同じように一回だけで使い捨てにしたら、ガラス瓶のほうが環境に負荷をかけます。重いので輸送コストがかかるし、製造時の熱量も大きい。割れたガラスで怪我をする。でも、使い捨てにしなければ、ガラス瓶は半永久的に使えますから、総合的にはプラスチックより環境に負荷をかけないわけです。
古賀なんであれ、使い捨てが問題なんですよね。
中嶋プラスチックも海などに流れ込まないようにきちんと回収してリサイクルすれば、環境への負荷は小さくなります。プラスチックが悪いというより、プラスチックの使い方が問題なんです。

バイオプラスチックなら、ごみにならずに自然に還る、と聞きましたが。

中嶋卵の透明のパックなどには、トウモロコシのデンプンで作るバイオプラスチック「ポリ乳酸」が使われていたりします。でも、じつはポリ乳酸は土の中では分解しないんです。60度くらいの温度が必要になります。ましてや海の中は水温が低くて分解しません。植物由来なので、石油の使用量は減らせますが、バイオプラスチックならすべて解決、というわけではありません。
古賀ポリ乳酸を25パーセント配合しているだけのレジ袋もありますが、使い捨てにしてしまったら同じことになりますね。
中嶋ポリ乳酸は石油を原料にせず、リサイクルもできますから、きちんと回収するシステムになっていればいい材質です。また、水温の低い海中でも分解するプラスチックの開発が軌道に乗り始めているので、将来性が期待できます。プラスチックは完全にゼロにはできません。病院で使う注射器も使い捨てのプラスチック製で、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種でも活躍しましたしね。
古賀点滴もそうですよね。
中嶋医療用のものは使い捨てられるから衛生的なんです。私たちの寿命が延びているのは、プラスチックのおかげもあるんですね。

バイオプラスチックなら、ごみにならずに自然に還る、と聞きましたが。

「プラなし生活」をしたら、1年間でどれくらいのプラごみが削減できるのでしょう?

古賀私が実際に量ってみた量で言うと、うちは3人家族で、1カ月でプラごみの量は約1キロ。日本人のプラごみの平均量と比べると大体3分の1ぐらいにはなります。少し気をつけるだけで。
中嶋家庭でいちばん手っ取り早いのは、ペットボトルを減らすことです。ペットボトルは重いので、それだけでプラごみの重量はかなり減らせます。

「今すぐ」実行できる「プラなし生活」のおすすめは?

古賀いちばん簡単で良かったのは固形せっけんです。ボディーソープやハンドソープを固形せっけんに替えるだけでもかなりごみが減りますし、節約にもつながります。ごみ袋もポリ袋を買うとお金もかかるし、それ自体がプラごみになるので、新聞紙でごみ袋を作ることもできます。洗濯ばさみやハンガーは外に干したままにすると紫外線で劣化してボロボロになりますよね。ステンレスのものに買い替えるだけでプラスチック対策ができてしまいます。
中嶋毎日使うキッチンのスポンジを、たとえば棕櫚のタワシに替えるとかもおすすめです。簡単にできますし、長く使い続けられて、何も困らないですよ。
古賀ほんとに全然困らない。むしろ快適で、気分がいいですね。

コロナになって、
プラごみが増えた気がします。

古賀そうですね。感染症対策で、やむを得ず食品ひとつひとつがプラスチックでラッピングされたりしましたね。外食をテイクアウトすると容器のごみも増えます。マイお弁当箱、タッパーを活用して、減らすしかないかな。
中嶋コロナ禍で景気が減退したため、プラスチックの生産量はわずかに減りましたが、マスクや手袋など感染対策のための使い捨てプラスチックが一気に増えました。プラスチックに助けられている面もあるので、今はしばし我慢のしどころですね。

中嶋 亮太

中嶋 亮太 Ryota Nakajima

生物海洋学者。2009年に博士号を取得。米国スクリプス海洋研究所の研究員を経て、現在、国内の海洋
研究所・研究員。海洋プラスチック問題、とくに海底に沈んだごみについて研究を進めている。
著書に『海洋プラスチック汚染 「プラなし」博士、ごみを語る』(岩波書店)。

古賀 陽子

古賀 陽子 Yoko Koga

プラなし生活実践中の主婦。2005年に電機メーカーに入社し、10年にわたり技術職として勤務。
その間、出産・育児を経て現在はフリーランス。
海洋プラスチック汚染の深刻な実態を知り、プラスチックフリーなアイテムやヒントを探す日々を送る。