ジェーンは、ポートランドの朝のまぶしい光に目を細めながら、「ジャックはそろそろ来るわ……」と言った。

ポートランドのカフェは、サロンのように客同士のつながりがあり、家庭的であたたかな雰囲気に満ちていた。

「おまたせ！ジェーン」という懐かしい声が聞こえたので後ろを振り向くと、ジャックが立っていた。

僕が「やあ」と手を上げると、「なんてこった！」とジャックは驚いて、僕を両手で引き寄せてハグをした。偶然ジェーンと会った経緯を話すと、「世界が狭いのか、街が狭いのか、すごいなあ」とジャックは大笑いした。

「あのさ、二人に話したいことがあるんだけどいいかな？」

カウンターでコーヒーを買ってきたジャックは、なんだか秘密の告白をするかのように僕とジェーンに語りかけた。

「昨夜すごくいい話を聞いてさ、誰かに話したくて仕方がないんだ」

「どんな話？」とジェーンが聞いた。

「いや、とりとめもない話なんだけどさ。昨日、僕が尊敬している経営者に会ったんだ。ポートランドで成功している一人なんだけど、どうしてあなたは成功できたんですか？って僕は聞いたんだよ。そしたら、彼はこう言うんだ。運だよ、と。みんな仕事を一生懸命やっている。けれども、どこで差がつくかというと、最後は運だと思うと……」

「なるほどね。運……」とジェーンは言った。

「そう、運。で、僕はさらに聞いたんだ。では、その運を味方につけるにはどうしたらいいか？　ってね。そうしたら彼はこう言ったんだ。顔、そして目だと。おもしろいだろ？」

「顔？目？」と僕は聞いた。

「うん、どんなにつらいことや大変なことがあっても、暗い顔をしていてはダメ。いつも元気で明るい顔を作って仕事をする。そういう人の目はいつでもキラキラしている。そんなふうに目の輝きのある人に、勝利の女神は微笑むんだって」

ジャックは話を続けた。

「で、僕は、いい顔ってどんな顔ですか？って聞いたんだ」

「その人がいうには、一番いい顔っていうのは、生まれたばかりの赤ん坊の顔だって言うんだ。ありのままで嘘のない、そのまんまの顔。彼は僕にこう言ったよ。生まれたばかりの自分を思い出して、そういう顔してごらん。赤ん坊の時の笑顔を思い出して仕事をやってごらん。そうしたら、運が自分をきっと味方してくれるぞと」

「な、すごいいい話だと思わないかい？　生まれたばかりの頃の自分の顔を思い出してやってみるっていうのが、僕はなんてすてきなことだろうと感動したんだ……」

ジャックは興奮しながら、「だから、僕もこれからは、できるだけいい顔を作って生きようと思ったわけさ。運を味方につけるために」と言った。

「あなたは充分いい顔をしているし、目もキラキラと輝いてるわ」。

ジェーンはこう言ってジャックを抱きしめた。