100とは

ドレープブラウス(半袖)

ドレープブラウス(半袖)

ポートランドの朝

朝起きると、アシャからのメールで、自分がもうすぐ30歳を迎えることに気がついた。まったくもって自分の誕生日を忘れていたのだ。そうか、30歳か……と思った。30歳の自分は、日本を離れ、今アメリカのポートランドにいる。

ふと、自分にとっての20代とは何だったのかと考えた。

あてもなくアメリカにやってきて、書籍商という仕事を覚え、日本とアメリカを行き来し、アシャと結婚し、一人娘を授かった。

ポートランドの空はとびきり青かった。その空をぼんやりと眺めていたら、十年は濃厚な時間だったとしみじみ思えた。何を成し遂げたわけではないが、自分を褒めてやりたい。まあまあ、よくやってきたなと。

たしかにいろいろなことがあった。いろいろあったけれど、それはこれから生きていくための基礎体力作りのようなもので、今わかっているのは人生とはこれからということ。

やっとスタート地点に立った。いや、立てたような気がする自分がここにいる。自分には、時間とアイデアと体力がたっぷりとある。愛する家族もいる。「何かがやれる。やり遂げられる」。僕の心はそんな根拠のない自信で満ちていた。

今日はランチタイムにジャックとピザ屋で待ち合わせをしていた。それまでポートランドのダウンタウンを少し歩こう。

街は緑が多く、歩道は清潔だった。朝早くからオープンしていたカフェでラテを買い、窓際の椅子に腰を下ろした。テーブルの上には誰かが忘れていったのか、チャールズ・ディケンズの『OUR MUTUAL FRIEND(互いの友)』が置いてあった。

なにげなく手に取り、ぱらぱらとめくっていくと、あるページの角が大きく折られていて、そこに書かれた一節に薄い鉛筆で線が引いてあった。

「世の中には役に立たない人間なんて一人もいないんだ。誰もが他の人の重い荷を軽くしているんだ」

僕はその一節が自分の心の琴線に触れるのを感じた。

30歳を迎えようとしている今、自分にとって、ディケンズの書いたこの言葉は、何を暗示しているのだろう。何を気づかせようとしているのだろう。このタイミングで、こんな不思議なことが起きるのかと僕は驚いた。

ポートランドの朝 ストーリーイメージ

どんな仕事であっても、必ずどこか誰かの重い荷を軽くしている。困っている人を助けている。仕事とはそのためにある。僕はそんなふうに解釈した。なんてすばらしい言葉なのだろう。ああ、僕はこの言葉と出会うためにポートランドに来たような気さえした。

一人で深く感動し、本を閉じ、テーブルに置くと、一人の女性が何かを探している様子でテーブルにやってきた。

「あ、やっぱりそこに置き忘れていたんだわ。ありがとう! うっかり忘れてしまって……」と女性は微笑みながら言った。

ドレープブラウス(半袖)

美しいベーシック

しなやかな素材感が生み出すドレープが魅力のドレープブラウスです。生地は薄くて柔らかいレーヨンブレンドを採用。ポイントは、フロントから見たらプレーンなTシャツ型、バックにはプリーツが入っているところ。シルエットはソフトで丸みのある印象に仕上げました。

どなたでも着こなしやすいシンプルベーシックにこだわりながらも、ふわりと揺れる軽やかさとクリーンさで、女性を美しく見せることを目指したデザインが自慢です。

ドレープブラウス(半袖)
ドレープブラウス(半袖)

どなたでも着こなしやすいシンプルベーシックにこだわりながらも、ふわりと揺れる軽やかさとクリーンさで、女性を美しく見せることを目指したデザインが自慢です。

ドレープブラウス(半袖)

書店員のジェーン

女性は肩をすくめて申し訳なさそうにして、テーブルから本を手に取り、コットンのトートバッグにしまった。

「いい本ですね」と声をかけると、「ありがとう……」と女性は言った。

「少しだけ読ませてもらったんです。なんだかとっても元気をもらいました」と僕が言うと、「ディケンズは『クリスマス・キャロル』が有名だけど、これもいい本よ。おすすめします」と女性は言った。

「ちょっとここに座っていいですか? 忘れ物を探すついでに、ボーイフレンドと待ち合わせしたんです」

女性はジェーンと名乗った。真っ白なブラウスを着て、ゆったりとしたチノパンツをはいていた。とてもシンプルだけど、上質さを感じさせる着こなしが、ポートランドという街に似合っていた。

「ポートランドは旅行ですか?」とジェーンが聞いたので、「ニューヨークから友人に会うために来たんです。もしかしたらポートランドで仕事をするかもしれません」と答えた。

「仕事?」

「はい、書籍商なので本屋の手伝いを」

「ちょっと待って。私は書店員よ。本屋で働いているの、すぐそこにある大きな本屋よ。あなた日本人よね」

ジェーンは嬉しそうにひとしきり笑ってから、「なんて偶然なのかしら! もう少しするとあなたの友だちがここに来るわよ。私のボーイフレンドの」と言った。

「ジャックのこと?」と僕が聞くと「そう、もうすぐ来るわ。あなたたち今日の昼に待ち合わせしてるんでしょ。あなたのことはジャックからよく聞いているわ。ニューヨークで活躍していることも。もう一度、挨拶させて。はじめまして。ジェーンです」

ジェーンは右手を差し出した。

「はじめまして! こんなことってあるんですね。朝、カフェで一冊の本に出会って、そこにあった言葉の一節に感動していたら、その本が、親友のジャックのガールフレンドの持ち物だったなんて……。いやあ、世界が狭く感じました」と僕は笑った。

書店員のジェーン ストーリーイメージ

「ようこそ、ポートランドへ。この街はそんなミラクルがたくさん起きる街よ」とジェーンは微笑んだ。

「あなたたちのプロジェクトも聞いてるわ。それは私の働く本屋のプロジェクトなのよ。ジャックとあなたが作る本屋を、この街のみんなが楽しみにしているのよ」

彼女の言う「この街のみんなが」という言葉と、あのディケンズの一節が、僕の中で重ね合った。

窓から差し込む朝の光に包まれたジェーンのブラウスが、きらきらとまぶしく見えた。

ドレープブラウス(半袖)

女子力を後押し

きれいに見えるデザインと、さりげなく体型をカバーできるシルエット。両方を兼ね備えたブラウスは他になかなかありません。さらにドライ機能とイージーケアもプラス。忙しい毎日を軽やかに過ごしたい女性にぴったりのアイテムです。

今季はベーシックカラーに加え華やかなパステルカラーも多数ご用意。オフィスカジュアルはもちろん、清潔感あるタウンユース。そして旅先へのお供にもおすすめしたいLifeWearです。

ドレープブラウス(半袖)

今季はベーシックカラーに加え華やかなパステルカラーも多数ご用意。オフィスカジュアルはもちろん、清潔感あるタウンユース。そして旅先へのお供にもおすすめしたいLifeWearです。

シンプルで、控えめだけど、
静かで美しい。そんな一着。

松浦弥太郎
ドレープブラウス(半袖)
094 WOMENドレープブラウス
(半袖)
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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