100とは

コットンカシミヤセーター

コットンカシミヤセーター

あの日あの時の

たしかここにあったはず……。

ある朝、目が覚めた時、ベッドから起きてすぐに、クローゼットの奥に頭を入れて、折り畳まれた服の中から、一枚のニットを探しあてた。

朝方、ぼんやりしていたのでそれが夢なのか、ただの記憶の思い出し(フラッシュバックともいう)なのかわからなかったけれど、グレーのニットを着て、冬から春に変わる頃のセントラルパークを歩いている自分の姿が、まるで映画を観ているように頭に浮かび上がった。

それと同時に、そのグレーのニットが、クローゼットのどこにしまっていたのかを思い出し、寝ぼけまなこでほんとうにそこにあるのか確かめたくなった。

「あった、あった」と、ニットがちゃんとそこにしまってあったので安心して、そのニットを手にしたまま、もう一度ベッドで横になった。

ニットはコットンにカシミヤをブレンドしたもので、カジュアル過ぎない上質さが気に入り、ニューヨークではずいぶん世話になった一着だった。

おもむろに鼻を近づけてみると、気のせいかもしれないが、懐かしいあの頃の匂いが残っていて、いろいろな記憶が甦った。

この匂いはきっと……。彼女の匂い。そして、あの頃よく飲んだハーブティーの匂い。74丁目の小さなアパートの少しだけ薬品っぽい匂い。そんな断片的な匂いがいろいろと混ざりあった、とにかくそれは、しばらく記憶の外にあった匂いだった。

ベッドに横になったまま、窓の外の景色に目をやると、すがすがしい朝の青空が見えた。きらきらした陽射しが眩しい。

「この空は遠くのどこであってもつながっている」。

そんな声が耳の奥から聴こえてきた。空を見るのが大好きな彼女は、両手を広げて、よくそういっていた。

僕はためいきをひとつついて、丸めて抱えていたニットに顔をうずめ、ほのかに香るあの頃の匂いから蘇る、あの日あの時のニューヨークの記憶に浸った。

「あれからもう十年も経つのか……」

あの日あの時の ストーリーイメージ

肩を出して、横で寝息を立てている彼女にブランケットをかけてあげると、「まぶしいからカーテンをしめて……」といった。

時計を見ると、そろそろ子どもたちを起こさないといけない時間だった。

窓の外に広がる青空はほんとうにきれいだった。

今日はこのニットを着て出かけよう。横にいる彼女を後ろから抱きしめながら、そう思った。

コットンカシミヤセーター

あたらしいスタンダード

やわらかな着心地と上品な風合いが楽しめるコットンカシミヤセーターです。これまでは天竺、リブ編みでの展開でしたが、今回は片畦(かたあぜ)編みを採用。伸び縮みが少なく肉感があって、空気を含むのであたたかい仕上げです。まだ肌寒い時期でもすぐに着られる生地感を目指しました。

一番のこだわりはあたらしいコットンカシミヤにぴったりなデザインとシルエット。首元は編み立てによって女性らしいすっきりとした仕立てに、ドロップショルダーにしてリラックスシルエットを。試行錯誤を重ねてたどり着いたフォルムです。

コットンカシミヤセーター
コットンカシミヤセーター

一番のこだわりはあたらしいコットンカシミヤにぴったりなデザインとシルエット。首元は編み立てによって女性らしいすっきりとした仕立てに、ドロップショルダーにしてリラックスシルエットを。試行錯誤を重ねてたどり着いたフォルムです。

コットンカシミヤセーター

仲良くすること

二人いる小さな子どもたちをどうやって育てたらいいのだろう。子育てをしながら、ずっと思い悩んでいることだった。

そんなふうに悩んでいたとき、元気づけてくれた知人がいた。

「ちいさい子どもにとって、もっとも大切なのは、限りない安心感です。子どもにとっての安心とはなにか。それはおかあさんとおとうさんがいつも仲良くしていること。仲睦まじくしあわせそうにしていること。できるかぎり夫婦が仲良くしている姿や様子を、子どもたちに見せてあげることです。そうすれば安心して育つのです」

自分が小さかった頃のことを思い出した。

両親は共働きで、ひとつ年上の姉と僕の四人家族だった。うちのおとうさんとおかあさんは、朝から晩まで、どうしてこんなに忙しいのだろうと、毎日のように僕は思っていた。

そんな日々であっても週末の土日は特別だった。

休日になると、見ていて気恥ずかしくなるほど、父と母は仲良くなるのだ。たとえば、家族で出かけた時など、父と母は必ず手をつないで歩いた。父は母に優しく接し、母もそんな父に甘えたりして、普段の日とは別人のように、いたって穏やかに過ごしていた。だからか、僕と姉は土日が大好きだった。父と母の仲良くしている姿は安心そのものだったからだ。

「子どもが一番安心感を抱くのは、おとうさんとおかあさんが仲良くしている時だね。子どもの頃、僕もほんとにそうだった。嬉しかった記憶がある」

彼女にそういうと、「そうね。ほんとうにそう思うわ。私たちがいつも仲良くしていることが、子どもたちにしてあげられる一番のことかもね」といった。

「あら、懐かしいニット着てるね。それはたしかヴィレッジで買ったんじゃなかったっけ?」

「そうそう、クローゼットの奥にずっとしまってあったのを今朝思い出したんだ。袖を通してみたら、まだ着れると思って」

「似合ってるわ」と彼女はいった。

「このニット、気のせいかもしれないけれど、懐かしい匂いがする」

仲良くすること ストーリーイメージ

「あの日、あなたがこのニットを着ていたのを覚えているわ。あなたは走り回って、私を探してくれたのよね。懐かしい……」

僕らにとって奇跡のようなあの日あの時。このニットがそのすべてを知っている。

コットンカシミヤセーター

あたらしい着こなし

最高の肌ざわりとリラックスシルエットのコットンカシミヤセーターは、着こなしの幅を広げてくれる自信作です。ジーンズと合わせてカジュアルに、ワイドパンツやスカートでタウンユースとして。新展開のチュニックやカーディガンなどは、あえてワンサイズ大きめにして抜け感あるスタイリングを。

シーンによって自由なサイズでお楽しみいただけるのはユニクロならではの強みです。また、深い色味の中にもソフトカラーでアクセントを効かせて、ピンクやブルーも織り交ぜた色構成は、お客さまに春を感じていただける工夫です。

コットンカシミヤセーター

シーンによって自由なサイズでお楽しみいただけるのはユニクロならではの強みです。また、深い色味の中にもソフトカラーでアクセントを効かせて、ピンクやブルーも織り交ぜた色構成は、お客さまに春を感じていただける工夫です。

いつまでも
ずっと着続けたい、
シンプルで上質な定番。

松浦弥太郎
074 WOMENコットンカシミヤ
Vネックカーディガン
(長袖)
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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