100とは

スウェットフルジップパーカ(長袖)

スウェットフルジップパーカ(長袖)

約束の日に

あの日、僕はパリへと発つアシャを、JFK空港で見送った。

ゲートで別れる時、「じゃあ、また」とアシャはいった。

「うん、何か困ったことがあったらいつでも連絡して」と僕はこたえ、小さく手を振った。アシャは後ろを振り向かずに歩き、僕の視界から消えていった。

五年後の約束のことをお互い一言も話さなかったのは、五年という歳月があまりに長く感じたからだった。

五年後の約束なんてありえるのだろうか。そんな気持ちで一杯だった。しかし、そんな約束でもしない限り、離ればなれになる寂しさを乗り越えることはできなかった。

僕は空港からの帰り道、最後に見せてくれたアシャの笑顔を思い浮かべ、「五年か……」とつぶやいた。

それからというもの、僕は仕事に打ち込んだ。アシャがパリで服作りを学んでいるのと同じように、自分もニューヨークで出会った古書の仕事を、一所懸命に学んで、今よりもっと成長しようと励んだ。

 

五年後を信じるしかなかった。

五年の間、僕はニューヨークと日本を行き来しながら仕事をした。アシャからの便りは、一年に一度、誕生日になるとバースデーカードが、ジャックのアパートの住所に届くだけだった。「毎日を大切に……」といつも小さなメッセージが書かれていた。寂しくなって何度電話をしようと思ったかわからない。けれども、声を聞いてしまうと会いたくなる。この気持ちは、日本にいる両親に対するものと同じだった。「会いたい」という気持ちを声にしてしまったら、もうそればかりを考えてしまう。だから、僕はアシャから届いたバースデーカードだけをお守りのように持ち歩き、仕事と学びに自分を向かわせた。

たしか、四年経った頃だった。二人の共通の友人だったロウェナから、アシャが故郷のエチオピアに帰ったと聞かされた。ロウェナはそんな手紙をアシャからもらったと、僕にいった。

「アシャはパリを離れて、エチオピアで暮らしているみたい。ニューヨークにはいつ帰ってくるの?と聞いたけど返事はなかった」とロウェナはいった。

約束の日に ストーリーイメージ

今や僕自身、一年の間、日本とニューヨークを半々の生活だった。古書の仕事は順調だった。

そうして、あれから五年が経とうとしていた。もし互いに会いたい気持ちが残っていたら再会しようと約束した、僕らが出会った日が近づいていた。

アシャが約束の日にやってくるかどうか、わからないけれど、僕はその日その場所に行こうと決めていた。時間は午後三時。

僕のアシャへの気持ちは五年経っても変わっていなかった。

スウェットフルジップパーカ(長袖)

ベーシックの追求

ベーシックにこそ、とことんこだわる。LifeWearの哲学を詰め込んだフルジップパーカです。

生地は、ソフトな手触りながらも適度な弾力としなやかさを持つ裏毛スウェットを使用。重すぎず軽すぎない、1年を通して袖を通せる程よい厚みが魅力の素材です。シルエットは今季からボックスシルエットに変更。現代のスタンダードであるリラックス感と、着こなしとしてもバランスのよい身幅・丈感をもつあたらしいフォルムです。

スウェットフルジップパーカ(長袖)
スウェットフルジップパーカ(長袖)

生地は、ソフトな手触りながらも適度な弾力としなやかさを持つ裏毛スウェットを使用。重すぎず軽すぎない、1年を通して袖を通せる程よい厚みが魅力の素材です。シルエットは今季からボックスシルエットに変更。現代のスタンダードであるリラックス感と、着こなしとしてもバランスのよい身幅・丈感をもつあたらしいフォルムです。

スウェットフルジップパーカ(長袖)

ある老人との出会い

ふと気がついたのだが、今日という待ち合わせの日に僕が着ていた服は、アシャがいたく気に入っていたジップパーカーだった。

僕もアシャもパーカーが大好きでいくつも持っていたけれど、中でも、最もスタンダードなデザインの、このグレイのパーカーは一番のお気に入りで、もう何年着ているかわからないほどの一着だった。

「たしかアシャとお揃いだったな……」と僕は一人で微笑んだ。このジップパーカーは、同じものを二人で買ったのだ。

僕もアシャもシンプルな服が好きだった。シンプルというセンスは、すべてアシャから教わったのだ。

待ち合わせ場所の「コーヒーショップ」には、三時少し前に着いた。あの頃のように知り合いは少なくなったが、店の活気が変わらずだった。今もニューヨークのランドマーク的なカフェとして人気だった。

僕は道に面したテーブルに座り、カプチーノを注文した。

「席が空いていないので、ここに座ってもいいかな?」と一人の老人が僕に声をかけてきた。

「コーヒーショップ」では、混んでいる時の相席は日常的だった。「もちろんです。どうぞ」と僕は答えた。

老人は「ありがとう」といって、「日本の方ですか?」と聞いた。

「はい、そうです」と答えると、「私は日本人が好きですよ。なぜなら、みんなやさしいからです」といい、もう一度「ありがとう」と発音のいい日本語でいって頭を下げた。そして、「ここはいい店だ」と微笑んだ。

時計を見るとすでに三時を過ぎていた。店を見渡してもアシャの姿はどこにもなかった。

僕は持ってきていた文庫本をバッグから取り出しページを開いた。サマセット・モームの「中国の屏風」という僕の大好きな一冊だった。

しばらくすると、「読書中、申し訳ありません。何をお読みになっているのですか?」と老人が聞いた。

「いえ、いいんです」といって、本のタイトルを告げると、「なんてすばらしい。私の家にもその本はあります。大好きな本です」と老人はいった。

「中国の屏風」は、作家が旅した中国各地で出会ったそこに暮らす人々の様々なストーリーを描いた短編集で、旅行記ともいえる名著だった。

ある老人との出会い ストーリーイメージ

「若い頃、私はサマセット・モームに憧れて、彼のように世界旅行にでかけたんですよ」。

老人は、ヨーロッパからインド、アフリカ、アジアを巡った旅の日々の思い出を、僕に語り始めた。

「そして、私は中国である女性に恋をしたんです……」。

老人は遠い目をしてささやくような声で話しを続けた。

スウェットフルジップパーカ(長袖)

こだわりの凝縮

まずこだわったのはフードの立ち方。フードをかぶっていない時でもすっきりと綺麗に見せるために、生地、パターンの最適なバランスを何度も探してたどりついた自慢の形です。また、フード裏にポリエステル混の生地を使用することで、洗濯後に乾きやすくなる工夫をしました。

フロントポケット両端にはリブを採用。耐久性とヴィンテージの要素を取り入れました。カジュアルスタイルに対応できるベーシックカラーはもちろん、今季はキーカラーとしてレッドやオリーブをご用意。着こなしのアクセントとしてもお楽しみいただけます。

スウェットフルジップパーカ(長袖)
スウェットフルジップパーカ(長袖)

フロントポケット両端にはリブを採用。耐久性とヴィンテージの要素を取り入れました。カジュアルスタイルに対応できるベーシックカラーはもちろん、今季はキーカラーとしてレッドやオリーブをご用意。着こなしのアクセントとしてもお楽しみいただけます。

パーカーを着た日は、
きっといいことが起きる。
今日もそう信じている。

松浦弥太郎
スウェットフルジップパーカ(長袖)
075 MENスウェット
フルジップパーカ
(長袖)
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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