100とは

特別編

特別編

アメリカン・クラシックを

21歳になったばかりの冬の日、吹雪が舞うニューヨークを歩き回って、冷えた身体をあたためようと、イーストヴィレッジのストランド書店に飛び込んだ。

その頃はまだオーナーのフレッドさんがレジの近くに座っていて、ひっきりなしに訪れる客の中から知る人を見つけると、手を上げて挨拶をしていた。

フレッドさんとは、ある希少本のやりとりで知り合った。それ以来、店を訪れる僕を見つけると「やあ」といつものように手を上げて、「今日は何を見つけたんだい」と声をかけてくれた。

ある日、フレッドさんの紹介で、アート本の著名なコレクターに会うことになった。「きちんとした格好をしていくといい」とフレッドさんはいった。そういわれて、何を着たらよいかわからず困っていると、「スーツを着るといい」といって、一冊の写真集を見せてくれた。

写真集は、ロバート・F・ケネディの選挙キャンペーンを記録した一冊だった。トラディショナルなスーツ姿のロバート・F・ケネディの、きちんとしながらも堅苦しくない若々しいスーツの着こなしが満載で、見方によっては、アメリカン・クラシックの教科書のようだった。

その中に、ネイビーのスーツに、セミワイドスプレットの白いシャツ、ダークネイビーのネクタイを締めたロバート・F・ケネディが、どこかのクラブハウスでくつろいでいる写真があった。僕はなんてかっこいいんだろうと惚れ惚れした。

言うまでもない。ロバート・F・ケネディが僕のファッションのお手本になった。人と会うときやビジネスシーンにおいて、スーツを着るときはなおさらだ。

アメリカン・クラシックを ストーリーイメージ

話は脱線するが、その写真集を読んで知った「未来は与えられるものではない。それは、達成するものだ」というロバート・F・ケネディが残した有名な言葉がある。この言葉は、二十代の僕の、どれだけ力強い励みになったかわからない。

アメリカン・クラシックを偏愛した僕が学んだスーツの心得を書いてみよう。

特別編

袖口の
バランスを

手を下げた時、ジャケットの袖からシャツが1センチほど見えるバランスに整える。袖裏のストレッチ素材で動きやすく。

特別編

袖口の
バランスを

特別編

手を下げた時、ジャケットの袖からシャツが1センチほど見えるバランスに整える。袖裏のストレッチ素材で動きやすく。

しなやかさと
耐久性

打ち込みがしっかりした、しなやかで耐久性の高い生地「Super110'sウール」を98%使用。内側には機能的なポケットを採用。

特別編

しなやかさと
耐久性

特別編

打ち込みがしっかりした、しなやかで耐久性の高い生地「Super110'sウール」を98%使用。内側には機能的なポケットを採用。

絶妙な
Vゾーン

ラペルの大きさやかたちは絶妙のバランスに。上襟と下襟を区切るゴージラインの位置は、すっきり見えるバランスの位置に。

特別編

絶妙な
Vゾーン

特別編

ラペルの大きさやかたちは絶妙のバランスに。上襟と下襟を区切るゴージラインの位置は、すっきり見えるバランスの位置に。

動きやすさと
快適さを

裏地を肩の後ろで交差させた「観音仕立て」にすることで、肩と腕の動きやすさがアップ。ジャケットは着丈も重要なので注意。

特別編

動きやすさと
快適さを

特別編

裏地を肩の後ろで交差させた「観音仕立て」にすることで、肩と腕の動きやすさがアップ。ジャケットは着丈も重要なので注意。

特別編

スーツのきほん

最も大事なのは髪型だ。スーツを着こなすには、きちんと整えられた髪型でなければならない。どんなに上等なスーツを着ていても、だらしない髪型をしていたらすべて台無しになる。普段着であれば、それもひとつのスタイルかもしれない。けれども、スーツを着るときは、整った髪型が必須である。無精髭や伸びた爪なども論外。清潔感を心がけよう。

最近はタイトフットなスーツが人気だが、それはスーツと身体のサイズが合ってのこと。必要以上にタイトなスーツを選んではいけない。家に帰って早くスーツを脱ぎたい。そんなふうに窮屈に感じるスーツであっては残念だ。ぴったりより、ほんの少しだけ余裕があるサイズ感によってスーツに威厳が加わる。色はネイビーかグレーがいい。

ネクタイは、レジメンタルか無地がおすすめだ。何本も持たないなら、無地のネイビーとグレーが一本ずつあればいいだろう。個人的には、ネイビーのスーツにネイビーのネクタイという同色のシックな組み合わせが好きだ。地味だが実はいちばんノーブル。

スーツは胸から上のバランスが大切。ジャケットのラペルの幅と、同じ幅くらいのネクタイを選ぶ。幅広のラペルに幅の狭いネクタイや、狭いラペルに幅広のネクタイではバランスが悪くなる。結び方はプレーンノットでもいいが緩みやすいのでしっかり締める。僕はいつも胸ポケットに白いポケットチーフをいれている。これで上半身はきゅっと締まる。

スーツのきほん ストーリーイメージ

スラックスのシルエットは丈の長さが左右する。長すぎても短すぎても、せっかくの美しいテーパードが崩れてしまう。必ず靴をはいて採寸してもらおう。ダブルはクッションなしで靴の甲に触れるくらい。シングルはわずかにクッションがあったほうがいい。ウエストの位置をしっかり決めて、ポケットに手をいれた時に、パンツの丈が短くなって足首が見えてしまわないように注意する。

スーツの着こなしで大切なことにソックスがある。立っているときは見えないが、座った途端に、スーツや靴の色に合っていないソックスが見えてしまって、恥ずかしい思いをしてはならない。基本は無地の黒、ネイビー、グレーを揃えておく。できればスーツと同じ色を選ぶこと。座って足を組んだ時、すね毛が見えないように長めのソックスを選ぶと安心だ。

最後に、スーツは手入れをしてこそ美しさが保てる服である。着た後にハンガーにかけてみると、背中や肩周り、肘の内側などシワがあり、スラックスのひざ裏にもシワができているだろう。ていねいにブラッシングをしてほこりを落とし、アイロンをあててシワを取ることを忘れてはいけない。結びシワのあるネクタイもしかり。

特別編
特別編

感動ジャケットを

スーツを着ない日は、感動ジャケット(ウルトラライト)のセットアップがいつしか定番になっている。軽くて動きやすく、夏はTシャツ、春はシャツ、秋冬はニットというようにインナーを選ばないので、仕事着として万能な一着だ。旅行にも感動ジャケットのセットアップは必ず持っていく。

同素材のパンツは、あえて長めのレングスを選び、二回ほどロールアップして短めではいている。足元はスニーカーでもいいが、全体的にカジュアルなので、ストレートチップでバランスをとる。

どんなファッションにも仕上げがある。それは、まっすぐに背筋を伸ばして胸を張った姿勢である。そして笑顔。冬のおしゃれは姿勢良く歩くこと。夏のおしゃれは清潔な素肌。これを心得たい。

特別編

感動ジャケットを

スーツを着ない日は、感動ジャケット(ウルトラライト)のセットアップがいつしか定番になっている。軽くて動きやすく、夏はTシャツ、春はシャツ、秋冬はニットというようにインナーを選ばないので、仕事着として万能な一着だ。旅行にも感動ジャケットのセットアップは必ず持っていく。

同素材のパンツは、あえて長めのレングスを選び、二回ほどロールアップして短めではいている。足元はスニーカーでもいいが、全体的にカジュアルなので、ストレートチップでバランスをとる。

どんなファッションにも仕上げがある。それは、まっすぐに背筋を伸ばして胸を張った姿勢である。そして笑顔。冬のおしゃれは姿勢良く歩くこと。夏のおしゃれは清潔な素肌。これを心得たい。

インナーには
ニットを

感動ジャケットには、エクストラファインメリノのクルーネックニットを着る。ビジネスの場でも、最近はこれが僕の定番。

特別編

インナーには
ニットを

特別編

感動ジャケットには、エクストラファインメリノのクルーネックニットを着る。ビジネスの場でも、最近はこれが僕の定番。

スラックスを
ロールアップ

ベリーショートソックスで、ドレッシーなストレートチップをはく。カジュアルなセットアップでも足元をエレガンスに。

特別編

スラックスを
ロールアップ

特別編

ベリーショートソックスで、ドレッシーなストレートチップをはく。カジュアルなセットアップでも足元をエレガンスに。

スーツを着ると、
自信が湧いてくる。
チャレンジしたくなる。

松浦弥太郎

スーツを着ると、
自信が湧いてくる。
チャレンジしたくなる。

松浦弥太郎
073
特別編
上から時計回りに
ストレッチウールジャケット(スリム・オールシーズン)
ストレッチウールパンツ(オールシーズン)
ネクタイ
ファインクロスブロードシャツ(レギュラーカラー・長袖)

シンプルで上質、
軽くて、動きやすい。
究極の普段着。

松浦弥太郎

シンプルで上質、
軽くて、動きやすい。
究極の普段着。

松浦弥太郎
073
特別編
上から時計回りに
感動ジャケット(ウルトラライト・コットンライク)
感動パンツ(ウルトラライト・コットンライク)
エクストラファインメリノクルーネックセーター(長袖)
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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