100とは

コンパクトコットンクルーネックT(長袖)

コンパクトコットンクルーネックT(長袖)

はじめてのハーレム

僕らはロウェナと、ハーレムの中心である地下鉄125丁目駅のホームで待ち合わせをした。

わずか数十分で行ける場所であっても、アシャと一緒に出かけるということが僕には嬉しかった。ちょっとした小旅行ははじめてだった。

この日のアシャは、真っ白の長袖Tシャツを着て、オーバーサイズのビンテージデニムをはき、足元はワークブーツで、ヤンキースのベースボールキャップのつばを後ろに被っていた。

125丁目駅には当然ながら、白人の姿は少なく、そこにいるのはアフリカ系アメリカ人やスパニッシュ系の人たちばかりだった。

アシャは、自分の目の前を若者たちが通り過ぎるたびに、彼らの服の着こなしや、斬新な色使いに目を見張って、「かわいい! かっこいい!」を連呼していた。

いつものタンクトップにシャツを羽織ったロウェナは、待ち合わせ時間に10分遅れでやってきた。

「絶対に10分遅れるという、相変わらずのロウェナタイムね」

アシャはチクリと皮肉を言ってロウェナをからかった。ロウェナは「あら失礼しました」と言って、負けじとアシャの着ている長袖のTシャツの裾をめくり上げた。

その一瞬、おへそから胸までがむき出しになったアシャは「ちょっとやめてよ!」とムキになって怒った。ロウェナは笑い転げて、「今日はピンクのブラジャーか」とからかってお返しをした。

「この辺のように人がたくさんいる場所は安全よ。でも、ここから北へ行くほど人通りが減って危なくなるの」

ロウェナは少しだけ緊張した面持ちで言った。路上にはゴミが散乱し、決してきれいな街ではないが、独特の活気には満ちていた。

「さあ、出発しましょう!」
そう言ってアシャは意気揚々に僕らの先頭を歩いた。

「ちょっと右も左もわからないのに、勝手に歩かないでよ」とロウェナはアシャの腕に自分の腕をからませ、まるで幼い姉妹のようにじゃれあって歩いた。

はじめてのハーレム ストーリーイメージ

「知ってる? ハーレムってオランダ語で『楽園』って意味。昔ここはオランダ人の別荘があったエリアなのよ」

ロウェナは街のあちらこちらを指差しながらハーレム案内をしてくれた。目抜き通りには商店が連なっているが、一歩路地に入ると、シャッターの閉まった店や、窓ガラスが割れたままになった建物が多い。

ハーレムには、ニューヨーク特有のタクシーである、イエローキャブが走っていないことに驚いた。その代わりにジプシータクシーと呼ばれるグリーン色のタクシーが走っていた。その多くは乗る前に行先を告げて、値段交渉をするらしい。

1860年代に建てられた、有名な劇場アポロシアターの前を通った時、アシャがぴたりと足を止めた。

コンパクトコットンクルーネックT(長袖)

進化したベーシック

大定番の長袖Tシャツが素材、フィット、ネックのデザインを変更して生まれ変わりました。

通常よりも毛羽立ちを抑えたコンパクトコットン糸を使用し、上品な光沢と滑らかな肌ざわりの生地が完成。太めの番手の糸を用いたことによるしっかりとした生地感は、インナーが透けにくく、1枚でも綺麗に着ていただけます。また、横方向への伸縮率が抜群のフライス編みで仕上げているので、ほどよいフィット感とストレッチ性もアップしました。

コンパクトコットンクルーネックT(長袖)
コンパクトコットンクルーネックT(長袖)

通常よりも毛羽立ちを抑えたコンパクトコットン糸を使用し、上品な光沢と滑らかな肌ざわりの生地が完成。太めの番手の糸を用いたことによるしっかりとした生地感は、インナーが透けにくく、1枚でも綺麗に着ていただけます。また、横方向への伸縮率が抜群のフライス編みで仕上げているので、ほどよいフィット感とストレッチ性もアップしました。

コンパクトコットンクルーネックT(長袖)

アシャのアイドル

アシャは口に手を当てて、「待って、あの人、知ってる…」と言って立ちすくんだ。

アシャの視線の先は、雑踏の片隅に立っている三人の女性と一人の男性だった。

「あの人、マリポールじゃない? いや、きっとそう。私の憧れの人。どうしてここにいるの? え、うそ!」

アシャは一人で興奮して、「どうしよう、どうしよう」と言葉を繰り返した。

「マリポールって誰?」と僕は聞いた。

「スタイリストでカメラマン、ファッションデザイナーもやっている人よ。マドンナのスタイリストでも有名だし、『フィオリッチ』のアートディレクターもやっているし、ほら、みんなが夢中になったラバーのブレスレット。あれも彼女のデザイン。とにかくニューヨークでいちばんおしゃれでクールな女性よ。アシャの憧れよね。袖を切ったTシャツに黒いスリムデニムはいた人。ほら、真ん中に立っている」

ロウェナがアシャの代わりにこう言った。

僕はマリポールという女性のことを知らなかった。しかしアシャやロウェナにとって彼女は、いや、今のニューヨーク・アンダーグラウンドにとって彼女は、ものすごい影響力を持ったクリエイターであるらしい。

「アシャ、せっかくだから話しかけておいでよ。何かのチャンスだよ」と僕が言うと、アシャは「無理無理……」と言って退いた。

マリポールらしき女性は、細くて長い煙草を吸って、仲間たちとおしゃべりをしていた。

いざって時は、絶対に照れたらいけない。恥ずかしがってもいけない。あとで必ず後悔するから。といういつかの学びを僕は思い出した。

僕はアシャにいいところを見せたいという思いと、またマリポールという名前を知らないという強みもあって、一人で彼女に話しかけにいった。

アシャのアイドル ストーリーイメージ

「こんにちは。あなたはマリポールさんですか?」

すると、彼女は煙草の煙をふーっと吐いてから「あら、こんにちは。そうよ。私はマリポールだけど、あなたとどこかで会ったかしら?」と微笑みながら言った。

ただものでないその瞳に、僕は一瞬ひるんだ。なんてきれいなんだろうと思った。

「いえ、お会いしてません。僕の彼女があなたのファンで、もしよかったら挨拶だけでもしてくれませんか? 彼女『コーヒーショップ』で働いているんです」

「あそこにいるかわいい彼女? いいわよ」

マリオポールはアシャに向かって「ハーイ」と言って、「こっちにおいでよ」と言った。

「マリポールさん、はじめまして。私はアシャです」とアシャは言った。

「あなたかわいいわね。よろしく」と、マリポールはアシャをぎゅっと抱きしめた。

コンパクトコットンクルーネックT(長袖)

ながく付き合えるように

どんな世代にも満足いただけるベーシックを目指して。重ね着のインナーとしてだけでなく一枚でも着ていただけるように。さまざまな試行錯誤を重ねて完成した長袖Tシャツ。

ネックは深すぎず詰まりすぎず、デコルテラインを美しく見えるデザインを探しました。着丈にもこだわり、どんなボトムスにも合わせやすく、幅広いコーディネートにお使いいただけるはずです。夏の冷房対策に、秋口はジャケットのインナーなどに、旅先ではバッグの中に。ロングシーズン着回せる心強い定番です。

コンパクトコットンクルーネックT(長袖)

ネックは深すぎず詰まりすぎず、デコルテラインを美しく見えるデザインを探しました。着丈にもこだわり、どんなボトムスにも合わせやすく、幅広いコーディネートにお使いいただけるはずです。夏の冷房対策に、秋口はジャケットのインナーなどに、旅先ではバッグの中に。ロングシーズン着回せる心強い定番です。

ずっと着たい、
上品きれいな、
デイリーウェア。

松浦弥太郎
コンパクトコットンクルーネックT(長袖)
056 WOMENコンパクトコットン
クルーネックT
(長袖)
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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