100とは

ドライカノコポロシャツ(半袖)

ドライカノコポロシャツ(半袖)

次の日の朝

アシャとはじめて手をつないだ日の翌日、待ち遠しい気持ちで朝を迎えた。アシャに会いたい。そんな気持ちで胸が一杯だった。

「コーヒーショップ」へと向かった。

朝のきらきらした陽射しは、もう夏そのもので、地面に映った、うきうきと小走りする、アシャのお気に入りのポロシャツを着た自分の影は、まるでダンスをしているように見えた。

「コーヒーショップ」のコーヒーカウンターには、これからオフィスに出勤するサラリーマンらが、朝のコーヒーを買うために五人ほど並んでいた。背伸びをすると、人の肩越しにアシャの顔が見えた。透明のウェリントン型の眼鏡をかけていた。なんだかいつも以上にすてきに見えた。

アシャはお客を待たせないように、てきぱきと注文を聞き、次から次へとコーヒーを淹れては手渡し、「行ってらっしゃい、今日もがんばって!」と、お客一人ひとりに笑顔で声をかけて送り出していた。

「びっくりするかな?」僕もその列に並び、自分の番が来るのを待った。

前に並ぶ人が二人になった時、アシャと目が合った。アシャははっとしてから、顔を伏せた。いつもの満面の笑顔が無かった。あれ、気がついていないのだろうか?「お次の方、何にいたしましょうか?」アシャが僕に言った。

「おはよう、アシャ」

「何にいたしましょうか?」と、アシャは僕にもう一度聞いた。「あ、はい、Mサイズのカプチーノを……」と告げると、「わかりました」と答えて、うつむいてコーヒー豆をセットし、コーヒーマシーンのボタンを押した。

「2ドルです」僕は代金を払い、カプチーノを受け取った。「ありがとう、アシャ……」と言うと、アシャはこちらを見ようとせず、次の客からの注文を受けていた。僕は立ち止まることが出来ず、そのまま店の外へと出た。

なぜアシャは僕に素知らぬ顔をするのだろうか。なぜ冷たい態度を取るのだろうか。僕はカプチーノを片手に持ったまま、そこに立ちすくんだ。

昨日、別れる時、「また明日ね」とアシャは笑顔で言った。つないだ手を離そうとしても、ふざけて離そうとしなかったアシャ。道路の反対側に渡っても手を振ってくれたアシャ。

僕は何がどうなったのかわからず、自分がひどく嫌われてしまったような気持ちになって悲しさに包まれた。

次の日の朝 ストーリーイメージ

真新しいポロシャツに、プレスをしたスラックスをはき、足元は革靴という、彼女の好きそうな着こなしで出かけた自分がひどくむなしくなった。

僕は道端に座っていた老人に「もしよかったらどうぞ」と言ってカプチーノを渡し、その場を離れた。

僕が一体何をしたって言うんだ。なぜあんな態度をとられないといけないんだ。なんだか自分がばかみたい……。

僕はポケットに手を入れ、背中を丸めて、ワシントンスクエア公園を横切って歩いた。

もしかしたら前のように、アシャが追いかけてきてくれるかもしれない。二、三度、後ろを振り返ったが、アシャの姿はどこにも見えなかった。

ドライカノコポロシャツ(半袖)

大定番だからこそ

表地は、上品な光沢となめらかな風合いが魅力の、希少なスーピマコットンを用い、さらに汗をかいても乾きやすいドライ機能をプラスして鹿の子編みに。縫製糸の裏糸には、やわらかくて伸縮性に富んだウーリー糸を使用し、肌あたりを軽減しました。

ポロシャツの顔である襟は、首のラインに美しく沿うように「伸ばし付け」という縫製を採用。前立ては縫い代の厚みを軽減させる「切り前立て」仕様にすることですっきりとした着用感に仕上げました。もっともベーシックでクラシックだからこそ、LifeWearの精神が宿ります。

ドライカノコポロシャツ(半袖)
ドライカノコポロシャツ(半袖)

ポロシャツの顔である襟は、首のラインに美しく沿うように「伸ばし付け」という縫製を採用。前立ては縫い代の厚みを軽減させる「切り前立て」仕様にすることですっきりとした着用感に仕上げました。もっともベーシックでクラシックだからこそ、LifeWearの精神が宿ります。

ドライカノコポロシャツ(半袖)

アシャからの手紙

アシャのことを思うと胸がキュッと締めつけられるような気持ちで一杯のまま、三日が過ぎた。

あの日以来、同じように冷たい態度をとられるのが怖くて「コーヒーショップ」に行く気にもなれなかった。けれども、いつか電話がかかってくるかもしれないと思い、部屋の電話の前から離れられない自分が情けなかった。

何かしら理由があって、きっと僕はアシャに嫌われたんだ。アシャのことはもう忘れよう。考えるのはやめよう、と思っても、日を追うごとに悲しみは増すばかりだった。

僕はアシャのことが本当に好きだった。ニューヨークに一人でやってきて、はじめて好きになった女性がアシャだった。孤独を当たり前と思い、まさか恋愛ができるとは思わなかった自分にとって、アシャはかけがえのない存在だった。

少しおしゃべりして、公園を散歩したりして、ちょっと手をつないだだけで、仲良しのつもりになった自分が間違っていたのだろう。
期待しすぎた自分が嫌になった。ぐるぐるとそんなことばかり考えた。そのあげく、もういいや、と開き直る自分がいた。

あの朝から七日後、僕はようやく気持ちが吹っ切れた。そして「コーヒーショップ」へと行った。今日を最後の日にしようと思ったのだ。何気なくアシャを探すと、いつものように忙しそうにコーヒーを淹れていた。

コーヒーカウンターに立ち、「Mサイズのカプチーノを」と言った。僕に気づいたアシャは、はっとしたような表情を見せ、僕の目をじっと見てから、「わかりました」と答え、カプチーノを淹れてくれた。

僕は代金を置き、カプチーノを受け取り、「ありがとう。じゃまた」と言って店を出ようとした。すると、「待って……」とアシャが小さな声で言った。

「もう大丈夫。気にしないでいいから」と僕はアシャに言った。「そうじゃないの……。これ読んで」と、アシャは一通の手紙を僕に手渡し、再び僕の目をじっと見つめた。

アシャの目には涙が浮かんでいた。そして、「じゃ、またね……」と言ってアシャは僕に背中を向けた。

手渡された封筒を見ると、隅にピンクのクレヨンで「Love、Asha」と小さく書かれ、その横に記号のようにxxxが添えられていた。

アシャからの手紙 ストーリーイメージ

「ピンクが好き……。子どもの頃、ピンクのクレヨンが宝ものだったの。だから減らないように大切に使っていたのよ。今でもピンクのクレヨンを使う時は時別な時よ」

セントラルパークで自転車を漕ぎながら、アシャはそんな話を僕にしてくれた。

片手にカプチーノを持ち、もう片手にアシャから渡された手紙を持ち、ニューヨークのワシントンスクエアパークで、呆然と立っている自分がいた。なぜ、アシャは目に涙を浮かべていたのだろう? この手紙には何が書かれているのだろう?

僕はアシャの手紙を読むのが怖かった。もう何も言ってくれなくていい。放っておいてくれていい。そういう気持ちだった。

手に持った手紙を見つめれば見つめるほど、読んだら何かが起きそうな予感がしてならなかった。

僕はポロシャツのボタンをひとつ外した。夏のじりじりとした暑さが僕を包み込んでいた。

ドライカノコポロシャツ(半袖)

夏の毎日に

耐久性の高い特殊な紡績糸を使用した襟は、色あせにくく毛羽立ちにくいのが特徴。これは、夏の日々にくり返し洗うことを想定したこだわりの改良ポイントです。今季はネイビーやホワイトなどの定番カラーに、フェードしたピンクやグリーンといった西海岸の夏を思わせるトレンドカラーをご用意。

お仕事やプレッピーな着こなしには定番色を、トレンド色はショーツに合わせて軽快な大人のカジュアルスタイルをお楽しみください。

ドライカノコポロシャツ(半袖)
ドライカノコポロシャツ(半袖)

お仕事やプレッピーな着こなしには定番色を、トレンド色はショーツに合わせて軽快な大人のカジュアルスタイルをお楽しみください。

着るとわかる、
秘められた襟の美しさ、
究極のこだわり。

松浦弥太郎
ドライカノコポロシャツ(半袖)
043 MENドライカノコ
ポロシャツ
(半袖)
閉じる

LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

閉じる閉じる