100とは

スリムフィットジーンズ

スリムフィットジーンズ

本はどこに?

僕とジャックは、タクシーに乗って、ブロードウェイを北上し、74丁目へと向かった。

「ウォーホルの『A GOLD BOOK』は、希少本の中でも特別な一冊。僕は人生で二度しか手にしていないんだ。そんな本が、ストランドの子ども絵本の棚の隅に、目立たぬように棚差しされていたんだ。おそらく何も知らない店員が、年代だけを見て、適当に値段をつけて、薄い本だから絵本と思って置いたんだろう。古書の世界にはこういうことがよくある。それと出くわすのは運しかない。1分後には、もう誰かに買われてしまっているかもしれないからね。もちろん、その本の存在を知っていることが大事だけど、毎日、本屋の見回りをしていても、出会わない人もいるし、出会う人もいる。持っている運の違いさ」

タクシーの中でジャックはこう話して、「君は運が良さそうだな」と言った。

僕らは、ブロードウェイ沿いにあった、小さな古書店の前でタクシーを降りた。

「ここか!昔、毎日のように通った本屋だよ」とジャックは言った。

この古書店は、アパートから数分の場所にあり、ニューヨークに来て、僕が最初に入った古書店でもあった。二階が希少本のコーナーになっていて、挿絵付きの初版本などが充実していた。
つい先日、訪れた時、「A GOLD BOOK」は、その二階の棚の上に、価値のなさそうな本と一緒に重ねて置いてあった。

ジャックは店に入ると、店主とスタッフに挨拶をした。「久しぶりだな、ジャック」、「ああ、近くを通りかかったんだ」

「上か?下か?」とジャックは小さな声で僕に聞いた。「上。奥の棚の上」と僕は答えた。

ジャックと僕は階段を上り、二階へ向かった。「どこだ?」とジャックが聞くので、僕が見つけた場所を指差すと、そこにあったはずの、雑多に積み重なっていた本がきれいに無くなっていた。

本はどこに? ストーリーイメージ

「遅かったか……」とジャックはつぶやいた。「確かにここにあったはずなんだ……」と、僕は言い、あたりを見回すと、棚の上に置かれていた本が、あたかも捨てられたかのように床の上に置かれ、さらに雑多な本が重ねて置かれていた。

「ここだ!」と僕は声を上げ、土を掘るようにして、床に積まれた本をどかして、この目で確かに見た、金色の表紙の薄い本を探した。

すると、積み上げられた本の一番下に「A GOLD BOOK」はあった。「ジャック、あったよ!」僕はジャックにその本を手渡した。

ジャックは一言も言わずに、びっくりした顔をし、僕から本を受け取り、その金色の本の表紙や中身をしげしげと見て、「こんなことってあるのか……」とつぶやいた。

「たしかに『A GOLD BOOK』だ。すごいな……。程度が抜群にいい。しかも、ウォーホルの筆記による献名が書かれているけれど……」

「信じられない……」そう言って、息を呑んだジャックの手が震えていた。

スリムフィットジーンズ

ロサンゼルス産デニム

2016年秋、ユニクロは最先端の設備で最高のジーンズを研究開発する拠点として「ジーンズイノベーションセンター」を、カリフォルニア州ロサンゼルスに設立しました。あらゆるジーンズ文化と最新のトレンドが集まる“ジーンズの聖地”と呼ばれる場所です。

世界中からジーンズのスペシャリストが集い、生地の開発から染め、さらにはフィットやデザイン、そして加工までを一貫して行い、理想のジーンズへの挑戦を続けています。

スリムフィットジーンズ
スリムフィットジーンズ

世界中からジーンズのスペシャリストが集い、生地の開発から染め、さらにはフィットやデザイン、そして加工までを一貫して行い、理想のジーンズへの挑戦を続けています。

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友だちのような

「ここを見てごらん」と、ジャックは本のページを開いて僕に見せた。

そこにはウォーホル自身の署名があり、その上に「親愛なる」と書かれていて、「Alexey Brodovitch」と献名があった。

1957年に自費出版された「A GOLD BOOK」は、ウォーホルのイラストレーター時代のもの。ウォーホルは、当時「ハーパースバザー」からイラストの注文を定期的に受けていた。

五十年代の「ハーパースバザー」は、そのアーティスティックなファッション表現と、グラフィカルなエディトリアルデザインで、抜群のクリエーティブを発揮したファッションマガジンとして名を高めていたが、その立役者が、敏腕アートディレクターのアレクセイ・ブロドヴィッチだった。

当時の若かりしウォーホルからすると、ブロドヴィッチは雲の上の存在。この献名からすると、ウォーホルは、自分の作品を知ってもらいたい一心でブロドヴィッチに献本したことが見受けられる。

この一冊には、そんな貴重な事実がしっかりと残されていた。それだけで、この「A GOLD BOOK」の価値は何倍にもなる。ジャックの手が震えるのは当然だった。

「すごい本を見つけたな……」とジャックは言った。そして「さて、どうやってこの本を手にいれようか…」と唇を噛んだ。

「確かにこの店はアートブックには詳しくない。だから、見落としもあるだろう。どこにも値段が書いていないのは、まだ整理してない証拠。だから、きっと店主は気づいていないんだ」とジャックは言った。

「二階の未整理の本は最近買い取ったものかい?」ジャックは本を手に持って、店主に話しかけた。

友だちのような ストーリーイメージ

「ああ、近所のダコタハウスに住む老婦人から引取りに来てくれって言われたので、先日、引き取ったものだ。何か欲しいものでもあったかい?」と店主は答えた。

「これが混ざってたよ」と言って、ジャックは店主に「A GOLD BOOK」を手渡した。

すると店主は「20ドルでいいよ」と言った。僕とジャックは目を見合わせた。

「それより、君の履いているデニムはいいな。ビンテージかい? いい色落ちをしてるな」と言って、店主は僕に話しかけてきた。

「いいえ、ビンテージではありません。でも、ずっと履き続けているから、友だちのようなものです」と僕は答えた。

「デニムは、君のいうように友だちみたいなものだね。私もデニムが好きだから、人の履いているデニムをどうしても見てしまうんだ。友だちを大事にするように、そのデニムも大事にしてやってくれ」と店主は言った。

ジャックは店主の肩を抱いてこう言った。「この本はべらぼうに価値がある。そんな値段で買うわけにはいかないよ」

「私には、知っている本もあれば、知らない本もある。それは君も一緒だろう。その本は知らない。ただそれだけのことさ。その本がどんなに価値があろうと、私は20ドルで売ると言ったんだ。損はしない」と店主は言った。

「ヤタロー。君が見つけた本だ。この本は君が買うといい…」ジャックはこう言った。

「君がこの店に何度も来たことは知っているよ。これも何かの縁だ。本屋と客というのは親しくなるための機会が必ずあるものなんだ。今日はきっとそういう日じゃないかな」と、店主はそう言って僕にウインクした。

僕はデニムの前ポケットに手を入れた。そこには丁度20ドル札一枚と、小銭が入っていた。

スリムフィットジーンズ

革新とヴィンテージのハイブリッド

世界屈指のデニム生地製造メーカー「カイハラ社」とともに糸の段階から開発。頑丈なデニムらしい表情を持ちながら柔らかな風合いとストレッチ機能をあわせ持つオリジナル生地を採用しています。さらに本物のヴィンテージデニムから着想を得たユーズド加工は、何度も洗いの研究を重ねて完成した自信作。

ボタン形状やリベットの刻印、ステッチワーク、ヒップポケットの位置調整で脚長効果を出すなど現代的なフィットやデザインを融合。クローゼットに欠かせない存在だからこそ徹底的に追求した1本です。

スリムフィットジーンズ
スリムフィットジーンズ

ボタン形状やリベットの刻印、ステッチワーク、ヒップポケットの位置調整で脚長効果を出すなど現代的なフィットやデザインを融合。クローゼットに欠かせない存在だからこそ徹底的に追求した1本です。

たくさんある服の中で、
ただひとつ、
友だちみたいになれるのが、
デニムなんだ。

松浦弥太郎
スリムフィットジーンズ
021 MENスリムフィットジーンズ
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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