100とは

オックスフォードシャツ

オックスフォードシャツ

友情の証

僕は20ドルで、アンディ・ウォーホルの希少な「A GOLD BOOK」を手にいれた。

後から聞いたのだが、この本を手離した、ダコタハウスに暮らす老婦人は、アートディレクターだったブロドヴィッチの恋人だった人で、その当時、ブロドヴィッチ本人から本をもらったらしい。

「この前、引き取った本の中に、ウォーホルの珍しい本がありましたよ」と、古書店の店主が伝えると、その記憶を思い出したそうだが、「好きな方の手に渡ればいいですね」と答えたという。

「君はこの本を売ってもいいし、持っていてもいい。自由にすればいいよ。売りたくなったら声をかけてくれ。僕の顧客を紹介する。そして、よかったら、これから僕の仕事を手伝ってくれないかい。君は本に詳しいし、本を見つける目と、本を引き寄せる運が良さそうだから」とジャックは言った。

僕は喜んでジャックの申し出を受け入れた。

今回のような出来事は、宝探しのようで、とってもスリリングだったし、何よりジャックと仕事ができるのが嬉しかった。

その日の夜、ジャックは僕が借りている部屋の、自分が残していった服と、大量の本をクローゼットから出して、整理をしてもいいかと言った。もちろん、いいよ、と僕は答えた。

友情の証 ストーリーイメージ

「懐かしいなあ。この部屋で彼女と暮らしていたんだ」とジャックは言った。そして、クローゼットから自分の服を取り出し、「今の僕には、いるものが少ないから、よかったらもらってくれないかい?」と言い、自分が着る服だけを除けていった。

「あとはすべて君にあげるよ。いらなかったら捨ててもいいし、どうにでもしてくれ」とジャックは言った。

見ると、ジャックは、オックスフォードのボタンダウンシャツだけを選んでいた。

「ボタンダウンシャツが好きなの?」と聞くと、「ああ、そうなんだ。僕はトラッドな服が好きなんだけど、学生時代のお金の無いときに、がんばって最初に揃えたのが、オックスフォードのボタンダウンシャツなんだ。洗いたてのオックスフォードは、ごわっとしていて、素肌に着ると気持ちがいいんだ。これをさ、チノパンやデニムの上に合わせて、ボタンを2つくらい外して、ラフに着るのが好きで、一年中、そんな着こなしをしていたな」

白、ブルー、ピンクやイエロー、ストライプなど、七、八枚のオックスフォードのボタンダウンシャツをジャックは懐かしそうに畳んで自分のバッグにしまっていった。

「もしよかったら、これ、もらってくれないかい?」と言って、ジャックは、真っ白なオックスフォードのボタンダウンシャツを僕に手渡した。

「このシャツは、かなり前に、友情の証として、歳上の友人からもらったシャツなんだ。だから次に君にあげたいんだ」とジャックは照れくさそうに言った。

僕は飛び上がるくらいに嬉しかった。「ありがとう。大切に着るよ」と言って、僕はシャツを受け取った。

「ボロボロだけどね。まあ、いいシャツだよ」と、ジャックは笑いながら言い、照れを隠した。

オックスフォードシャツ

ユニクロの大定番

デニムやチノはもちろん、きれい目パンツとの合わせでビジネスやトラッドな着こなしにも対応できる。ユニクロのオックスフォードシャツはLifeWearを体現する存在と言っても過言ではない万能アイテムです。その秘密は糸にあります。

高級綿糸として知られるコーマ糸を用いてオックスフォード生地に仕上げることで、オックスフォード特有のしっかりとした素材感に、コーマ糸が持つ柔らかな肌触りと美しい光沢が同居。カジュアルな中に上品さが宿りました。

オックスフォードシャツ
オックスフォードシャツ

高級綿糸として知られるコーマ糸を用いてオックスフォード生地に仕上げることで、オックスフォード特有のしっかりとした素材感に、コーマ糸が持つ柔らかな肌触りと美しい光沢が同居。カジュアルな中に上品さが宿りました。

オックスフォードシャツ

熟知する

僕はジャックに、本を探す仕事には、何が必要なのかと聞いた。

すると、ジャックは「かんたんだよ!」と言い、「あ、でも、かんたんだけど、なかなかむつかしい」と答えた。

ジャックは部屋の隅にあった椅子を持ってきて、そこに座り、僕にも椅子に座るのをすすめて話しはじめた。

「そうだね。とにかく熟知することかな。まず、マンハッタン中の古書店を熟知すること。これが基本。それぞれの古書店が、何を専門にしているか、そこにはどんな客がいるのか。店にある一番希少な本は何か。儲かっているのか、儲かっていないのかなど。そして、君自身が専門とするジャンルの、本の歴史に熟知し、希少本の数々、それらの市場価格、それぞれの本を手にとって、なぜ価値が高いのかを知り尽くして熟知すること。大切なのはこれだけ。今、僕が言ったようなことを徹底的に学んで、誰よりも詳しくなることだね。そうすれば、君もすぐにプロのブックハンターになれる」とジャックは言った。

「とにかく熟知。熟知に勝るものはないんだ」とジャックは話し続けた。

そこで熟知した様々なことを、常にアップデートしていくことも大切で、とにかく必要な新しい情報をどれだけたくさん集められるのか、どうやって自然と自分に新しい情報が集まるような人間関係と仕組みを作っていくのか。そのためには、毎日のようにマンハッタン中の古書店を歩きまわって、人とふれあい、たくさんの本棚を見尽くすことだと、ジャックは言った。

熟知する ストーリーイメージ

「とにかく一番詳しい人になればいい。そうすれば、みんな君を頼りにする。顧客もすぐに君の噂を聞きつけて、自分のリストを渡してくるし、古書店も情報を流すようになる」と。

自分がこれと決めたジャンルなり対象について、とにかく熟知し、一番詳しくなれば、自分の顧客を喜ばせるために、何をどうしたらいいのかがよくわかる、とジャックは話してくれた。

「あとは、一番詳しくなったら、矛盾しているようだけど、自分よりも、さらに詳しい人を探すのさ。不思議なもので、一番詳しくなると、必ず自分よりも詳しい人がいるってことに気づくんだ。上には上がいるってことだね。そして、その自分よりも詳しい人に会って、自分に足りないこと、次に学ぶべきことは何かを教えてもらうんだ。もしくは、それを感じ取るんだ」

「週に三回ほど、僕と一緒に古書店をまわろう。何をどんなふうに見て、何を集めていくのか、少しずつ教えていくよ」とジャックは言った。

「ジャック、ありがとう。ところで、『A GOLD BOOK』だけど、僕よりも欲しい人に売ろうと思うんだ」と僕は言った。

すると、「やっぱり君は素質があるな。いくらで売るのかは君の自由さ。ブックハンターである僕らがしてはいけないことは、本を所有すること。僕らの目的は、自分を喜ばせるためではなく、あくまでも顧客を喜ばせることだからね」

ジャックは「これからよろしく」と言って、笑みを浮かべて僕の手を握った。僕もジャックの手を握り返した。

オックスフォードシャツ

細部へのこだわり

アームホールは動きやすさを考慮し身頃はすっきりと、生地のドレープがきれいに見えるシルエットを探しました。時代のトレンドを見据えながら微調整を繰り返し、パターン設計を行なっています。

襟は伝統的なボタンダウンカラーに、袖裏の剣ボロは太め、背中のボックスプリーツにはハンガーループを付属。随所にクラシックシャツの仕様を取り入れました。洗いざらしを自然体で、少しプレスをかけて品良く、どちらのスタイルにも違和感なくフィットするデザインに仕上げています。

オックスフォードシャツ
オックスフォードシャツ

襟は伝統的なボタンダウンカラーに、袖裏の剣ボロは太め、背中のボックスプリーツにはハンガーループを付属。随所にクラシックシャツの仕様を取り入れました。洗いざらしを自然体で、少しプレスをかけて品良く、どちらのスタイルにも違和感なくフィットするデザインに仕上げています。

僕のおしゃれは、
オックスフォードの
ボタンダウンシャツから、
はじまった。

松浦弥太郎
オックスフォードシャツ
022 MENオックスフォードシャツ(長袖)
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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