100とは

ヒートテッククルーネックT(9分袖)

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母のぬくもり

ある日の朝、いつものようにセントラルパークを歩いた。

僕は冬のセントラルパークが大好きだ。淡い冬の色をした空、うっそうとした木々、澄んだ空気など、時に驚くほどの静寂さを感じて、なんだか、ファンタジーの世界に迷い込んだような気持ちになる。

あそこにも一人、あちらにも一人と、ここを訪れた人は、一歩一歩ゆっくりと歩いて、散歩というひとときを楽しんでいる。みんなここで何を思い、何を考え、何を味わっているのだろう。そこにはどんな暮らしの日々があるのだろう。そんな気持ちで、僕も枯れ葉舞うセントラルパークをゆっくりと歩いた。ジャックから借りたダウンジャケットのポケットに手を入れて。

小さい頃の冬、遊びから帰った僕の冷たい手をあったかい手で包んでくれた母のぬくもりを思い出した。

学校が終わった夕方、どんなに寒かろうと、毎日のように、僕は友だちと、公園のすべり台やブランコや鉄棒で遊んだり、木登りを楽しんだりした。だからか、僕の手の甲はいつもあかぎれができていて、水で手を洗うとひりひりと痛んだ。

日が暮れ、夕飯の時間が近くなると、バイバーイと手を振って友だちと別れ、家に帰ると、母はいつも僕の手をとり、「ああ、こんなに手を冷たくしてこの子は」と言い、あかぎれのできた僕の手を見て、「手を洗ったらちゃんと拭かないからよ」と叱りつつ、僕の手を、自分の手の内側であたためてくれた。

かさかさになった指先を見て、「ささくれもこんなに作って、親不孝だねー」と微笑んだ。

「あったかいお湯で手をよく洗って、しっかり拭くのよ」と母は言い、手を洗い終わると、僕の手にハンドクリームを入念に塗ってくれるのだった。

僕は母に手をあたためてもらったり、ていねいにハンドクリームを塗ってもらうのが好きで、毎日そうしてほしいから、わざと手や指の先のことは構わずに遊びまわった。

「あんた、手をもっといたわって大切にしなさいよ。この手に感謝しないといけないよ……」と母は言い、僕の手を包んだり、さすったりして、いつまでも、いつまでも、あたためるのだった。

母のぬくもり ストーリーイメージ

僕は、シープメドウ脇の大きなくすの木の下のベンチに座って足を休め、ぼんやりと空を見上げ、「この空は、きっと日本にもつながっている……」と呟き、母を想った。

明日から僕は、ジャックの仕事を手伝うことになっていた。あることがきっかけになり、週に三日だけ手伝ってほしいとジャックに言われたのだ。

仕事を始めることを、母に手紙を書いて知らせよう……。そう思って、もう一度、空を見上げた。手をダウンジャケットのポケットから出し、しげしげと見た。

「手をもっと大切にしなさい。手に感謝しないといけないよ」と、母の声がどこかから聞こえてきた。

ヒートテッククルーネックT(9分袖)

最高のインナーであるために

ヒートテックインナーはユニクロが誇る機能服。お客様からの声を元にプロダクトを見直し、毎年改良を行なっています。4種の糸を組み合わせて独自開発した生地は、高いストレッチ性とつっぱりの軽減を実現。

縫製糸は通常よりも柔らかなタイプを採用し、肌に直接触れる部分の摩擦を軽減させる工夫を行いました。軽量で肌当たりよく、着ていることを忘れるような快適さと、究極の心地よさを目指しました。

ヒートテッククルーネックT(9分袖)
ヒートテッククルーネックT(9分袖)

縫製糸は通常よりも柔らかなタイプを採用し、肌に直接触れる部分の摩擦を軽減させる工夫を行いました。軽量で肌当たりよく、着ていることを忘れるような快適さと、究極の心地よさを目指しました。

ヒートテッククルーネックT(9分袖)

A GOLD BOOK

ジャックに会おうと12丁目のストランド書店に行くと、店の中でジャックは、一冊の本を脇に抱え、店員と、エレガントな雰囲気の老紳士との三人で口論をしていた。

僕に気がついたジャックは目配せしたあとに、「やあ、こんばんは。ヤタロー」と言い、少し大げさに「彼は日本から来ている僕の友だちなんだ。紹介しよう」と言って、店員と老紳士に僕を紹介した。老紳士は、「ようこそ、ニューヨークへ」と柔和な笑顔で言った。

三人の話を聞いて事情がわかった。ジャックは、ある貴重な本を格安の値段で見つけた。そして、その本を買おうとした時、あまりの安さにレジ係の店員が気づき、値段を確かめると、その本はとんでもなく価値が高い本だとわかった。

しかし、ジャックは引き下がらず、価値があろうとなかろうと、値段を書いたのは店の責任だから、この値段で売るべきだと主張した。

揉めているところに、偶然、ジャックのクライアントであるコレクターの老紳士が通りかかり、今度は、その本を自分が正しい値段で買い取ると言い出した。

ジャックとしては、掘り出し物を見つけたのは自分であるから、クライアントとはいえ譲るわけにはいかず、ここに書かれている値段で買う、と言ってきかなかった。

その本は、ポップアートで知られたアンディ・ウォーホルの「A GOLD BOOK」という、1957年に作家本人によって手作りされた作品集だった。金色のペーパーボードに、花や猫や、少女などが細い線で描かれた、オフセットリトグラフで、わずか22ページながら、表紙カバーが金色に輝く、実に美しい一冊だった。手作りなので、当然、数は少ない。

僕はジャックの耳元で「いくらで見つけたの?」と聞くと、「80ドル……」と言った。店員はオーナーに値段を確かめなくてはならないから、この本は一旦預かると言い、コレクターの老紳士は1万ドルなら買おうと言った。

外出先のオーナーと電話がつながったらしく、あれこれと交渉の末、ジャックは渋々と本を店員に渡し、「決して値段のつけ間違いをしないでほしい」と店員に言い、コレクターの老紳士には、この本を買う権利を自分は得たので、入手したら連絡しますと告げた。
「1万ドルで買いますので……」と、老紳士はジャックに何度も伝えていた。

A GOLD BOOK ストーリーイメージ

店を出た僕とジャックは、いつものドーナツ屋に入って、コーヒーを注文した。ジャックはひどく落ち込んで一言も話さなかった。

「ジャック…。さっきの本だけど、アパートの近くの古本屋で僕見たよ。値段はいくらかわからないけれど、本棚の上のほうに積んであったよ。金色だから覚えているんだ」

僕がそう言うと、ジャックは驚いた顔で僕の顔を見て、「え!ほんとかい?確かにあの本かい?今すぐ行こう。あの本が本棚にあるはずがないんだ!!」と言った。

僕とジャックは大急ぎでタクシーを捕まえて、その古本屋へと向かった。

ヒートテッククルーネックT(9分袖)

着心地はさらなる高みへ

美容オイルとして支持される希少なモロッコ産アルガンオイルを繊維に練りこんだのは、世界初の試みです。これによって極細繊維の生地はしっとりと滑らかに、保湿効果を備えました。着脱時の不快な静電気も心配ありません。

ヒートテックの発熱、保温、吸湿速乾の性能はそのままに、暖房の効いた電車や部屋などで汗をかいた後もムレを軽減して汗冷えしにくいドライ機能をプラス。普段着から仕事着まで、冬の素肌にいつでも寄り添うLifeWearです。

ヒートテッククルーネックT(9分袖)
ヒートテッククルーネックT(9分袖)

ヒートテックの発熱、保温、吸湿速乾の性能はそのままに、暖房の効いた電車や部屋などで汗をかいた後もムレを軽減して汗冷えしにくいドライ機能をプラス。普段着から仕事着まで、冬の素肌にいつでも寄り添うLifeWearです。

あの日の
母の手の平を思い出す、
やさしさと、
しっとりしたあたたかさ。

松浦弥太郎
ヒートテッククルーネックT(9分袖)
019 MENヒートテッククルーネックT
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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