100とは

フリースルームシューズ

フリースルームシューズ

服って何?

僕は、アパートのクローゼットの前に椅子を置いた。

座ると、クローゼットの端にある鏡に自分が映った。自分という姿をしげしげと見た。ちからが抜けて、とてもリラックスしている。

僕は、僕自身に対して少し安心した。これまで、自由な旅とはいえ、とにかくいろいろなことを悶々と考えがちで、不安が募るばかりの日々だった。けれども、ここニューヨークで、わずかに成長しているような実感があった。自分の中の何かが変わっていた。

その成長と変化って何か。

ひとつは、引きこもり気味の僕に何でも話し合える友だちができたこと。そして、もうひとつは、「自分が」という自己中心的な意識から、もっと広い世の中に対する「自分を」という意識に変わったことだ。

ニューヨークでの生活は、二週間が過ぎようとしていた。グランドピアノが置かれた、この小さな部屋にも、アッパーウエストサイドという町並みにも、マンハッタン中を歩いてふれあう人々にも慣れてきて、なんとなく緊張していた気持ちに余裕が生まれていた。

僕は椅子に座って、ジャックが置いていった服をじっと見つめた。

ジャックのワードローブが、なぜ自分を魅了するのだろう。そこから何を感じているのだろうと、まるで美術館の絵画を見るように、ひたすらじっと見続けた。クローゼットの一角には、僕自身の服も積み上がるように置かれていた。

頭によぎったのは、服って一体なんだろう……という素朴な問いだ。

服が欲しい。いつからかこんな思いを、当たり前のように、ずっと抱いている自分がいる。

服って何? ストーリーイメージ

なぜ服が欲しいのだろうか……。

かっこよくなりたいから、かっこよく見られたいから、服が欲しいという気持ち。

服は人をかっこよくしてくれるのか。いや違う、服は、自分が他人からどう思われたいか、というためのひとつの表現かな?すなわち、自分がどんな人間であるかを、知ってもらうためのもの。言葉にできない自分の中にある何かしらの主張を表したもの。ひとつのコミュニケーション。そのために服を選んでいる。服を着ている。

ジャックのワードローブは、とてもシンプルだ。限られた色、親しみのある素材、簡素なデザイン、それらが上質という品質で統一されている。その上質というものが、ジャックという人をそのまま表したものであった。

僕はこうも考えてみた。服を着るとどうなる?と。

フリースルームシューズ

ミッドソールの秘密

「世界一履き心地のよいルームシューズを」ユニクロのルームシューズに込めた想いです。快適な履き心地を実現したのは二層式のミッドソール。足を入れた瞬間からずっと続くフカフカな感触の秘密は中反発ウレタンシート。体重が移動するたびにウレタンが戻ることで、履いている時は常に絶妙な弾力を体感していただけます。

そして底面の「SOFT EVAカップソール」が足裏の形にフィットし、クッション性を発揮。フカフカと衝撃性を両立しているのです。

フリースルームシューズ
フリースルームシューズ

そして底面の「SOFT EVAカップソール」が足裏の形にフィットし、クッション性を発揮。フカフカと衝撃性を両立しているのです。

フリースルームシューズ

自分で選ぶこと

服を着ると、僕は元気になる。なんだか嬉しくなる。セスが言っていた、寒い朝にダウンに袖を通すのが楽しみというのも、そうだ。様々なデザインや素材によって、寒さや暑さから身体を守ってくれるのも、元気を生むための役割だ。

服とは、着る人を元気にするもの。すてきにするもの。しかも毎日。

考えてみたら、今日は何を着ようかなと服を選ぶことは、今日の自分は、どんな服を着たら元気になるのかと無意識的に考えているのだろう。

僕が今、部屋で履いているコロンとしたかたちのルームシューズにしても、履くと心地良い(元気になる)から、どこにでも持って行くようになっている。

服って何だろう?の答え。

それは、暮らしや仕事、あらゆる日常につながる、人を元気にするために、人をすてきにするために考え抜かれた、様々な知恵と発明から生まれた必需品。

服は、自分が自分らしくあるためにある。考えた末、僕はこう辿り着いた。

その日の午後、僕はジャックのワードローブから、赤いダウンジャケットと、白のタートルネックのニット、色の落ちたデニムを選んで、ストランド書店に取り置きしてある、本を引き取りに行った。

ホリデーシーズン間近だからか、ストランド書店は、いつにも増してにぎわっていた。

どこかにジャックはいるだろうか、と思いながら店内をぶらぶらと歩いていると、本を抱えたジャックが、店員らしき人と立ち話しているのを発見した。

自分で選ぶこと ストーリーイメージ

僕は近づいていって「やあ、ジャック」と声をかけた。

ジャックは、すぐに挨拶を返してくれたが、少しばかりシビアな話をしているようだった。ジャックは「ちょっと待ってて」という素振りを見せて、店員との話に戻った。

ジャックを待っている間に、僕は取り置きしていた本の代金を払い、あの日に選んだ本を自分のものにした。

ジャックの元に戻ると、立ち話に品の良い老紳士が加わり、さらに深刻な話になっているように見えた。どうやら、ジャックの抱えている本を、老紳士が受け取ろうとしているのを、ジャックは首を振りながら拒んでいる。

僕に気づいたジャックは、片目をつむって、「もう少し待ってて」と言った。

フリースルームシューズ

ころんとしたシルエット

つま先が上がった可愛らしいフォルムにも意味があります。上がっていることで足を一歩前に出しやすくなり、歩行が楽になるのです。そして履いている際に圧迫を感じない秘密は、足全体の形に沿う立体フォルム。つま先には空間があり、指も自由に動かせる設計になっています。

最後の工程で、靴を作成するときに使用する足型を用いて熱成形を行い、立体フォルムを完成させるのです。手洗いもできるから、いつも清潔。世界で一番快適なルームシューズです。

フリースルームシューズ
フリースルームシューズ

最後の工程で、靴を作成するときに使用する足型を用いて熱成形を行い、立体フォルムを完成させるのです。手洗いもできるから、いつも清潔。世界で一番快適なルームシューズです。

家だけでなく、
旅先など、どこでも、
これを履くと、
そこは自分の部屋になる。

松浦弥太郎
フリースルームシューズ
018 フリースルームシューズ
閉じる

LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

閉じる閉じる