100とは

ブロックテックウォームイージーパンツ

ブロックテックウォームイージーパンツ

美の出発点

「そのカメラをちょっと見せてくれないか?」と、ブロードウェイ12丁目の角に建つ、大きな古書店「ストランド書店」の地下フロアで、僕に話しかけてきた男がいた。

このカメラは、ある人から借りているものだと告げると、男は、「うんうん」と頷いてから、カメラをしげしげと見て、「やっぱりそうだ、このカメラの持ち主は僕の知り合いだ」と言った。

「もしかしたら、あなたはジャックさんですか?」と聞くと、「なんで僕の名前を知っているんだい?」と男は驚いた。

西74丁目のアパートを、期限付きで借りた経緯、クローゼットの中に残されていた服や本、雑誌に興味を持って、ケイトからあなたの存在を知ったことを僕は男に話した。

男は「なるほど」と言って、クスクスと笑い、「僕がジャックです。面白い出会いだな。よろしく」と言って、手を差し出した。

「君は本が好きなのかい?いや、古い本が好きなのかい?選んだ本を見ると、君はグラフィックデザインに詳しくて、いろいろなことを知ってるようだけど……」と、ジャックは僕に聞いた。

「本は新しいのも古いのも好きです。デザインについては、ひとつも詳しくはありません。しいて言えば、自分が出会って感動した何か、それは文章であったり、写真であったり、絵であったり、デザインであったり、そういうもののルーツというか、その感動の原点は何かということに、とても興味があるんです。美しいものには、必ずその美しさの出発点があるはずで、僕はその出発点を、自分なりの視点で見つけて、学びたいといつも思っているんです」

「その考え方はすばらしいな。日本人は、そういう考え方をみんな持っているのかい?」とジャックは聞いた。

「この考え方が日本人的なのかどうかは、わからないけれど、日本人の美意識は、目に見えるもの以上に、目には見えない、そのものの本質と奥行きを重要としているのかもしれません。たとえば、その目に見えない本質と奥行きを、心の働きである、おもてなしという概念で、目に見えるように試みる行為のひとつに、日本の茶の湯がありますね」と僕は話した。

美の出発点 ストーリーイメージ

「おもてなし……。アメリカ人の僕には難しい概念だけど、君が言おうとしていることは、よくわかる。美に対する探究心が強いということだね。心の目で見る、という意識は、鈴木大拙という仏教哲学者の本で読んだことがあるよ。僕らが話しているのは非常にZEN的だね」とジャックは言った。

「むつかしい話をしてしまって、すみません。とにかく、僕はあなたのワードローブや、本や雑誌が、自分の琴線に触れたんです」

「いやいや、僕こそ興味深い話ができて、嬉しいよ。よかったら、どこかにコーヒーでも飲みに行かないかい」

僕とジャックは、一緒に店を出た。

「今日は一段と寒いな」とジャックは言って、あったかそうなパンツのポケットに手を入れた。

ブロックテックウォームイージーパンツ

あたたかさの追求

足を通した瞬間からあたたかさを実感できる通称“暖パン”。裏地にはやわらかなフリースを、表地には軽量で高強度なリップストップ生地、さらに表地と裏地の間には冷たい風を防ぐフィルムを挟んだ3層構造。

フロントポケットの中にもフリースを使用し、モバイルを入れられるようにポケットインポケットを搭載。ジッパー開閉式で中のモノが落ちない工夫をした太もものサイドポケット、バックポケットは1つから2つに変更。収納力も自慢です。

ブロックテックウォームイージーパンツ
ブロックテックウォームイージーパンツ

フロントポケットの中にもフリースを使用し、モバイルを入れられるようにポケットインポケットを搭載。ジッパー開閉式で中のモノが落ちない工夫をした太もものサイドポケット、バックポケットは1つから2つに変更。収納力も自慢です。

ブロックテックウォームイージーパンツ

ドーナツ屋で

僕らは「ストランド書店」のすぐ近くにあったドーナツ屋に入った。

「僕はドーナツが好きです。だから、ドーナツ屋のカウンターで、ドーナツとコーヒーを味わうのは至福なんです」と言うと、「僕もそうだよ。ニューヨークにおいてドーナツ屋はなくてはならない存在なんだ。僕らは気が合うな」とジャックは笑った。

「僕は雑誌が好きなんだ……」と、大きなマグカップに注がれたコーヒーを飲みながら、ジャックは独り言のように言った。

「アメリカにおいて雑誌が生まれたのは、1741年。その名も『アメリカン・マガジン』。退屈な新聞の社説のようなものだったから、読者がつかず、たった3号で廃刊になった。その後、1913年に社交と流行をテーマにした『バニティ・フェア』が創刊されて、本当の意味での、アメリカの雑誌文化が始まったんだ…。まさに君の言う出発点だね。その『バニティ・フェア』は、今のものとは別格に違っていて、まさに当時のアメリカの美のクオリティが『バニティ・フェア』には集結していたんだ」

ジャックは自分の好きな雑誌のことを、ドーナツをかじり、コーヒーを飲みながら、淡々と僕に語ってくれた。

「とにかく、雑誌の醍醐味は、見て楽しむ、ことなんだ。そのために、絵やイラストレーション、写真、そして、タイポグラフィやレイアウトデザインが、読者の目をひきつけるために、競い合うように美を追求していった。そしてまた、それを生み出す世界中の才能が集まったのも、雑誌というメディアなんだ」とジャックは言った。

ドーナツ屋で ストーリーイメージ

この日、ジャックは、ブルーストライプのシャツの上に、ネイビーのクルーネックのニットを着て、グレイのウールパンツに、黒のウイングチップシューズを履いていた。

「部屋に残されたワードローブだけど、どれもすてきですね。うまく言えないけれど、ああいったトラッドなアイテムが僕も好きです。今日着ているニットも長く着ているんですか?」と僕は聞いた。

「これはもう10年以上着ているよ。オーセンティックだから飽きることはないんだ。今日着ている中では、パンツが一番古いかな。これは大学の時に買ったから15年以上。ニューヨークの冬は寒い。だから、あったかいウールのパンツは必需品なんだ。父によく言われたのが、冬の寒い日に出かけるときは、とにかく下半身を冷やさないように、あったかいパンツを履くということ」と、ジャックは言った。

「ところで、毎日『ストランド書店』にいるって、ケイトから聞いたけれど…それは本当?」と言うと、「ああ、毎日『ストランド書店』にいるよ。仕事だからね」とジャックは答えた。

「仕事って?」と聞くと、「どんな仕事か知りたいかい?」とジャックは、ドーナツをかじりながら言った。

ブロックテックウォームイージーパンツ

高いファッション性

ヒザ下から裾にかけてテーパードしていくスリムフィットのフォルム。着用時の窮屈さや、裏地付きによる厚みを感じさせないデザインを追求しました。フィッティングを何度も繰り返して完成した自慢のシルエットです。手袋をしたままでも着脱が容易なウエストバックルはイージーベルトの仕様に、裾のドローコードを絞ればブーツインもできます。

アウトドアに映えるアースカラーからウールのようにタウンユースに最適なものまで幅広い色展開。いつものパンツを暖パンに換えても違和感なくコーディネートに溶け込むスタイリッシュさ。冬の即戦力です。

ブロックテックウォームイージーパンツ
ブロックテックウォームイージーパンツ

アウトドアに映えるアースカラーからウールのようにタウンユースに最適なものまで幅広い色展開。いつものパンツを暖パンに換えても違和感なくコーディネートに溶け込むスタイリッシュさ。冬の即戦力です。

寒くなると、
暖パンとの付き合いがはじまる。
何があろうと守ってくれる、
冬のたのもしい用心棒だ。

松浦弥太郎
ブロックテックウォームイージーパンツ
015MENブロックテックウォームイージー
パンツ(リップストップ・
丈標準79~82cm)
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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