100とは

ラムVネックカーディガン

ラムVネックカーディガン

こだわりのワードローブ

「今、ニューヨークの西74丁目の小さなアパートを、一カ月間だけ借りて、一人暮らしをしています。ワンルームの真ん中に、大きなピアノがあり、その下に布団を敷いて寝ています。寝転がって上を見ると、ピアノの内側がよく見える、面白い体験をしています。おかあさん、心配しないでください。ごはんはしっかり食べてます。ニューヨークは、秋が深まり寒くなってきました。また手紙を書きます」

母から届いた葉書に、電話をするように、と書いてあった。声を聴いたら、きっと帰りたくなってしまう。だから、電話はせず、母に手紙を書いた。

さて。部屋の持ち主のケイトは、なぜ、同居人だったボーイフレンドの服を、置いたままなのだろう。ボーイフレンドも、なぜ自分の服を引き取らないのだろう。

ある日、僕はそんなことをぼんやり考えながら、クローゼットの中にある、きれいに畳まれた服をひとつひとつ取り出してみた。

質実剛健。生地や縫製がいいものばかり。外国の洗剤の匂い。それが服の印象だった。ゴワッとしたオックスフォードのシャツ。肉厚のスエットとパーカー。フランネルのパンツ。色落ちしたデニム。仕立ての良いジャケットと、ダッフルコート。そして、他のアイテムに比べて数が多いニット類。ふっくらしてやわらかいウールのカーディガンは色違いで三枚もあった。

服の下に頑丈そうな木箱が二つあった。なんだろうと思って開けてみると、中には古雑誌や本がぎっしり詰まっていた。僕は何冊か取り出してみた。

雑誌は見るからに古いもので、そのほとんどが1930年代から1950年代にかけてのメンズファッション雑誌だった。雑誌のタイトルは「APPAREL ARTS」とあった。

ページを開くと、そこにはイラストによるメンズファッションのコーディネートやアイテムの紹介がされていた。非常に上品で、スタイリッシュで優雅な、メンズファッションを紹介した雑誌だ。

持ち主は、相当なファッションマニアか、メンズファッションの研究者か、ファッションデザイナーかと思った。けれども、こんなに貴重なものを、なぜここに置いたままなのか。謎は深まるばかりだった。

こだわりのワードローブ ストーリーイメージ

クローゼットから取り出した服を見ると、そのほとんどが、この雑誌から飛び出してきたようなスタンダードなアイテムばかりで、しかも、タグなどをよく見ると、現代のものではなく、何十年も大切に着続けてきた服ばかりだった。

僕はジャックという人物にますます興味が湧いた。カメラ、服、雑誌、すべて価値のある、こだわり抜いたコレクションばかり。

明日はレッスンのためにケイトが部屋にやって来る。そうしたら、ジャックのことを詳しく聞こう。僕は取り出した服を、クローゼットに戻した。

一着だけ、キャメル色のカーディガンを借りることにした。それはいつも母が着ていたカーディガンにとても似ているカーディガンだった。

ラムVネックカーディガン

ラムウールは冬の味方

ラムウールは、ウールのよさを凝縮した天然素材です。軽量で柔らかくふんわりとした肌触り、吸湿性と放湿性、弾力性があるのでシワになりにくく、繊維の縮れ部分に空気を含みあたたかいのが特徴。

肌寒い朝晩にサラリと羽織る、カットソーやシャツの上に重ねる、ジャケットやブルゾンの中に着る。日常のいろんなシーンで“ちょうどいい温もり”を得ることができるワードローブの心強い味方です。

ラムVネックカーディガン
ラムVネックカーディガン

肌寒い朝晩にサラリと羽織る、カットソーやシャツの上に重ねる、ジャケットやブルゾンの中に着る。日常のいろんなシーンで“ちょうどいい温もり”を得ることができるワードローブの心強い味方です。

ラムVネックカーディガン

袖口の匂い

母は一着のカーディガンをとても大切にしていた。

昔、家族が写った古い写真を見ていた時、赤ん坊の僕を抱きかかえている母が、いつも見慣れているカーディガンを着ていたのでびっくりした。こんなに昔から着ているんだと。

もしかしたら、僕が生まれる前から着ているのかもしれない。

母のカーディガンの袖口には、小さな毛玉ができていて、幼い頃の僕は、丁度それが目の高さにあったので、指でつまんだり、いじくって遊んだりしていた。

一度、匂いをかいだことがある。「コロッケの匂いがする」と母に言うと、母は笑い転げて、「そう? おもしろいわね」と言った。

母のキャメル色のカーディガンは、いつも台所の椅子にかけられていた。

借りたカーディガンを羽織った時、僕はおもむろに袖口を見た。このカーディガンの袖口にも小さな毛玉がいくつもできていた。サイズが大きいせいか、手首が少し隠れて、もったりした感じも、母が着るカーディガンと似ていた。

やっぱりカーディガンは少し大きめがいい。心の中でそんなふうに思った。ボタンははめるのか、外しておくのか。母はいつも外していた。授業参観に来てくれた時、母はボタンをはめていて、見た目が違って、はっとしたことを覚えている。

僕は部屋の窓辺に立って、外の景色を見ながら、そんなふうに、母とカーディガンの記憶をいくつも思い出した。

ケイトが部屋にやってきた。

「あら、なんでいるの? これからレッスンだから早く出ていって」とケイトは僕に言った。けれども、出かける支度を済ませてある僕を見て、「うん、まあ、でも、ゆっくりでもいいわよ」と、気遣ってくれた。

「ケイト、このカーディガン借りるよ。あと、ジャックってどんな人? なぜこんなに服を置いたままなの?」と聞くと、ケイトは聞こえない振りをして返事をしなかった。

袖口の匂い ストーリーイメージ

「ジャックに会ってみたいな」と僕が言うと、「ストランドに行けばいるわよ、たぶん」とケイトは呟くように言った。

「ストランドって?」と聞くと、「12丁目の大きな古本屋よ……」とケイトは答えた。

12丁目のストランドという古本屋は、セスから、好きな本屋だと聞いたことがあった。

僕はカーディガンを羽織って部屋を出た。信号待ちしている時、袖口の匂いをかいでいる自分がいた。

ラムVネックカーディガン

定番をあたらしく

Vネックの角度、深さ、開きはミリ単位で調整し、襟、袖、裾のリブは編みのテンションを変えてもたつきを解消。肩周りの動きやすさを意識した袖付けと、すっきりとしたアームホールを設計、ボタンホール裏にはナイロンテープで強度を高め、着丈とフロントポケットのベストなバランスを探しました。

ベーシックカラーに杢調のミックスニットを追加することで、定番色が新鮮に映ります。ジャストでもオーバーサイズでも。年齢性別を超えて着こなしの幅を広げてくれるあたらしい定番です。

ラムVネックカーディガン
ラムVネックカーディガン

ベーシックカラーに杢調のミックスニットを追加することで、定番色が新鮮に映ります。ジャストでもオーバーサイズでも。年齢性別を超えて着こなしの幅を広げてくれるあたらしい定番です。

カーディガンは、
ふわっと羽織るのが好き。
ボタンは外しておく。
後ろ姿がすてきなんだ。

松浦弥太郎
013MENラムVネックカーディガン(長袖)¥2,990 +消費税
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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