100とは

フリースフルジップジャケット

フリースフルジップジャケット

街の物語

カ月の約束で借りた西74丁目の部屋に住んで、一週間が過ぎた。

老舗のスーパーマーケット、24時間営業のベーグル屋、おしゃれで広い本屋など、近所にお気に入りの場所がたくさん見つかった。僕はこのエリアが大好きになった。

ニューヨークでの日々は、本を読むこと。街を歩くこと。このふたつに僕は熱中をした。

本を読んで出会った、はっとしたフレーズ、もっと知りたいと思うこと、深く感動した文章は、できるかぎりノートに書き留めた。

街を歩いて、目にとまったもの、いつかの記憶とつながったもの、忘れたくない光景、いつまでも見ていたいものなども、克明にノートに書き留めた。

そんな読書ノートと街歩きノートの2冊を、僕はいつも持ち歩き、いつでもそこに自分の今という時間を、言葉や文章として記録をした。

街の物語 ストーリーイメージ

ニューヨーク滞在中、僕はマンハッタンの道という道を、すべて歩くことを小さな目標にしていた。

街歩きノートに、マンハッタンの地図を描き、歩いた道は、今日はここからここまでというようにペンで塗りつぶし、そこで出会った光景や物事を書き記した。

ある日、そんな自分が書き綴った街歩きノートを、トーコさんに見せた。

トーコさんは、ストロベリーフィールドのベンチに座って、そのノートを1ページ1ページゆっくりと丹念に、うなずいたり、笑ったり、時には目をつむったりしながら、最後のページまで見つくして、静かにノートを閉じた。

「ここには、私の知らないニューヨークがたくさんあったわ。ありがとう。ノートを見ていたら、なんだか、写真集を見ているような気持ちになったの。もちろん、言葉や文章もすばらしいけれど、あなたよかったら写真を撮ってみたらどう? あなたが感じているものは写真という表現と相性がよいと思うの」とトーコさんは言った。

「写真ですか……。あまり撮ったことがないから、よくわかりませんが興味はあります。写真って何でしょうね……」と、僕はトーコさんに聞いた。

「写真は……。そうね、たとえば、あなたがノートに書いた文章という表現を、写真という表現に変えてみればいいのよ。たとえば、コロンバスサークルで出会った、馬の悲しい目が、詩的な言葉と文章で書かれているけれど、これを一枚の写真で表すなら、あなたは何を写真に撮るのか。そうそう、あなたは街を歩きながら、きっとあなたしか見えない物語を探しているのよ。その物語を写真に撮ればいいのよ」とトーコさんは言った。

フリースフルジップジャケット

アップデートしたフリース

体温を蓄えて暖かく、外気は遮断。高い通気性と速乾性をあわせもち、かつ軽量な機能素材。ユニクロのフリースはきめ細やかでしっとりした表情の生地を開発し、さらなる極上の着心地を目指しアップデートしました。肌に直接触れる首裏には柔らかなハイピングを走らせ、摩擦によるストレスを軽減。

サイドポケットに手を入れると、フリースと通気性の高いメッシュが包んでくれます。ジップには引き手を追加し、手袋のままでも開閉できる仕様に。

フリースフルジップジャケット
フリースフルジップジャケット

サイドポケットに手を入れると、フリースと通気性の高いメッシュが包んでくれます。ジップには引き手を追加し、手袋のままでも開閉できる仕様に。

フリースフルジップジャケット

最初の被写体

物語を写真に撮る……。確かに僕は街を歩きながら、それはなんてことのない光景だけれど、見ていると、あたかも本一冊分くらいの物語が想像できるような、“ある状況”に足を止め、それを自分なりの言葉や文章で書き留めていた。

「写真か……」トーコさんと別れたあと、僕は道を歩きながら、もしカメラを持っていたら、僕は何を撮るのだろうと考えてみた。

その時、借りている部屋のクローゼットにカメラがあったことを思い出した。

部屋の持ち主のケイトは、ここにあるものはすべて自由に使っていいと言っていた。僕は急いで部屋に戻り、クローゼットを開けて、カメラを取り出した。

カメラはフリースのジャケットに包まれて置かれていた。おそらくフリースのジャケットをクッション代わりにしたのだろう。包みを広げると、ドイツ製の古いマニュアル式の小さなカメラだった。

しかも、カメラを包んでいたフリースのジャケットのポケットには、フィルムが2本入っていた。「このカメラ、使ってもいいのだろうか……」

これからケイトはピアノ教室のために、この部屋にやってくる。僕はその時にカメラを使ってもいいかと聞いてみようと思った。

その日の夕方、部屋にやってきたケイトに「カメラを見つけたけど、使ってもいいかな……」と聞くと、「あ、それは父のお下がりのカメラよ。ジャックに貸したけれど、結局使ってなかったみたい。だから、いいわよ使っても。そのフリースはジャックのものだけど、もちろんそれも着てもいいわよ」と、ケイトは、カメラなんか興味ないわ、と言うように答えた。ジャックとは、ケイトのボーイフレンドだ。

正直に言うと、僕にとっては、フリースのほうが嬉しかった。ニューヨークの秋がこんなに寒いとは思わなかったのだ。しかも、それまで僕は、フリースという素材の服を着たことがなかった。

フリースに袖を通し、ジッパーで前をしめると、軽くてあたたかくて、肌ざわりが良くて、そのまま横になって眠りたくなるような気分になった。

僕はフリースのジャケットを着て、肩からカメラを下げて街に出た。不思議なことに、フリースを着ていると、部屋から外に出た時のほうがあったかく感じた。

最初の被写体 ストーリーイメージ

最初の一枚は何を撮ろうかと考えた。いや、何を撮らないといけないのか、撮るべきなのかと考えた。

僕は直感的に、今ニューヨークにいる自分を撮ってみようと思った。

僕は、道に面した家具屋の、ショーウインドウに置かれた鏡に映った自分に、カメラを向けた。

フリースを着て、カメラを構えた自分の姿がそこにはあった。僕はハッとした。その姿は痩せてみすぼらしかった。けれども、よく見ると、何かの物語の主人公のようにも思えた。

「旅とはいつも自分が主人公である……」いつかノートに僕はこんな言葉を書いていた。そうだ、主人公は自分なんだ。

僕は、フィルムをゆっくりと巻き上げ、絞りとシャッター速度を決めて、ピントを合わせ、シャッターを切った。

フリースフルジップジャケット

オールマイティウェアとして

細すぎない適度なボリュームのアーム、腕周りの可動域を広く、身頃はすっきりと。「オールマイティウェア」を掲げ考え抜いたフォルムは、アウターとしての存在感とインナーとしても収まりのよい絶妙なパターン設計。

シャツやニットを中に着て、ダウンベストとのレイヤードで街へ、ランニングなどのスポーツウェアに、ダウンやブルゾンのインナー使いでアウトドアへ、リラックスして過ごす暖房いらずのホームウェアとして。LifeWearの本領発揮です。

フリースフルジップジャケット
フリースフルジップジャケット

シャツやニットを中に着て、ダウンベストとのレイヤードで街へ、ランニングなどのスポーツウェアに、ダウンやブルゾンのインナー使いでアウトドアへ、リラックスして過ごす暖房いらずのホームウェアとして。LifeWearの本領発揮です。

フリースを着ると、
街に出て、自由気ままに、
どこまでも歩きたくなる。
旅がしたくなる。

松浦弥太郎
フリースフルジップジャケット
012 MENフリースフルジップ
ジャケット(長袖)
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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