100とは

ボアスウェットフルジップパーカ(長袖)

ボアスウェットフルジップパーカ(長袖)

やせがまんの半ズボン

子どもの頃、どんな服を着ていたのか。そして、どんな服が好きだったのか。僕とアシャはよくそんな話をした。

小学校に入学した日から四年間、僕は春夏秋冬、その日がどんなに寒かろうと、雨が降ろうとも半ズボンをはいて過ごした。一日たりとも長ズボンをはかなかった。

僕がはいていた半ズボンは、コットン製のもので、足のすべてが見えているくらいに丈はぎりぎりまで短いものだ。

なぜ半ズボンを毎日はくことにこだわっていたかというと、学校という集団の中で、少しでも目立ちたかったのと、同級生に対して、自分はとても元気で、とても強いということを、そうしたファッションで表現したかったのだ。

「寒くないの?」と聞かれれば、「ひとつも寒くない」と言い返した。けれども、太ももや膝を見れば、冬には、しもやけのようなものができていて、その言葉はやせがまんでしかなかった。

そんな、やせがまんな半ズボン派はクラスに三人くらいいて、冬になると誰が脱落するのかクラスメイトにとっては興味津々だった。

ある冬の寒い日のスタイルを思い出してみると、短めのソックスに半ズボン。上はタートルニットを着て、内側にモコモコした毛がついたフードのついたジャンパーをはおり、毛糸の帽子を被った。下半身が寒い分、上半身はしっかりと暖かい服を着ているというアンバランスで、ゆで卵に爪楊枝を二本刺したような感じだと、母親によく笑われた。

「何をきっかけに長ズボンをはくようになったの?」

幼い頃の話に笑い転げたアシャはそう聞いた。

「ある日、近所の商店街にジーンズ屋がオープンしたんだ。僕はその時初めてジーンズという長ズボンを知ったんだけど、それがかっこよくて憧れた。半ズボンをはいていた理由は、クラスの中で目立ちたい、かっこよく思われたいという気持ちだから、半ズボンよりかっこいいジーンズという長ズボンを見つけたから、半ズボンなんて、もうどうでもよくなったんだ」

「でも、負けず嫌いだから、他の半ズボン派に負けたくはない。だから、日にちを決めて、みんなで一斉に半ズボンをやめて、ジーンズをはくという協定を結んだんだ」

「ばかみたい。でもかわいいね」とアシャは笑った。

やせがまんの半ズボン ストーリーイメージ

「今でも思い出すよ。たしか2月1日かな。それまで半ズボンをはき通してきた3人がジーンズをはいて学校に行った日のことを。先生も含めてみんなびっくりしてたけど、僕らは誇らしげだった」

ジーンズをはいたら、なんてあったかいんだろうと思ったのと、いつも着ていた内側がモコモコのフードのついたジャンパーとのバランスがよくて、鏡に映した自分を見た時、思わず「かっこいいじゃん」と我ながら惚れ惚れした。

「ゆで卵に爪楊枝スタイルから、おしゃれ少年になったということさ」

アシャは「私にも似たようなことがあるわ」といった。

ボアスウェットフルジップパーカ(長袖)

冬のスウェット

表地はスウェット、裏地にボアフリースを縫い合わせたボアスウェットフルジップパーカ。あたたかさはもちろん、よりスタイリッシュに魅せる工夫が満載です。脇の縫い目を利用したスラッシュポケット仕様ですっきりとしたシルエットを演出。肩まわりのバランスを見直し、よりナチュラルに体に馴染む形状に変更してフィット感をアップさせています。

また、フード周辺と身頃のみに毛足の長いボアフリースを使用した構造にすることで腕周りは動きやすく、重ね着しても窮屈にならない構造にしています。

ボアスウェットフルジップパーカ(長袖)
ボアスウェットフルジップパーカ(長袖)

また、フード周辺と身頃のみに毛足の長いボアフリースを使用した構造にすることで腕周りは動きやすく、重ね着しても窮屈にならない構造にしています。

ボアスウェットフルジップパーカ(長袖)

服が知っているわたしのこと

アシャは、パリ行きのために荷造りしたスーツケースから、一着のパーカーを取り出した。

「これ見て、わたしが十五歳の時に買ってもらったパーカーよ。こんなによれよれだけど宝物なの。もう十年以上着てるのよ。エチオピアは暑いから、パーカーなんて着ないし見たこともなかった。でも、ある日、ふとファッション雑誌を見たら、パーカーという服のかっこよさに魅了されて、欲しくて欲しくてたまらなかった。まさに憧れの服だったの。このパーカーは、ニューヨークに出張に行った父に『パーカー買ってきて。お願い!』と頼んで、やっと手にいれたの。はじめてパーカーを着たとき嬉しかったわ。だから、あなたがジーンズをはじめてはいたときの誇らしげな気持ちってよくわかる」

アシャのパーカーは、袖がすれて穴があき、胸のあたりもいくつか引っ掛けたような傷があって、けれども、服が身体の一部のようになっているような愛らしさがあり、アシャが宝物にして着ているのがよくわかった。

「もう、今やこのパーカーは、ライナスの毛布のような存在よ。これまでのわたしのニューヨーク生活をすべて知ってくれているのはこのパーカーだけ。そう思うと面白いわね。服はあくまでも服だけど、自分のあれもこれも知っているという不思議な存在という……」

アシャはパーカーの穴や傷、小さな汚れなどを見ては、「これはあの時、これはあの時」とつぶやいて、いろいろな出来事を思い出しては微笑んでいた。

「ねえ、『服が知っているわたしのこと』というタイトルの小説って良くない? いろいろな人にインタビューするの。大切にしている服を見せてもらって、その服が知っているその人の何か特別な記憶を語ってもらって、それを物語として書き留めてまとめるのよ。ね、きっと面白そう!」

アシャはパーカーを手に持って、「このパーカーが知っている、わたしのことってなんだろう。あなたにはちょっと言えないけれど……、たしかにすごい物語があるわ、きっと」

「アシャ、そのパーカー、僕にくれないかな? いや、預けてくれないかな? アシャがパリに行っている間、そばに置いておきたいんだ。やっぱり僕はアシャがいないとさみしいんだ。耐えられないかもしれない。だから、アシャの何かを手元に置いておきたいんだ……」

アシャが二日後に目の前からいなくなるということが、急に現実味をおびて感じた僕は、思わずこんなお願いをアシャにしてしまった。

服が知っているわたしのこと ストーリーイメージ

「これはわたしの宝物。これがないと生きていけないかもしれない。でも……」

アシャはこういって、パーカーを胸の中で抱きしめた。

「うん、大丈夫だよ。無理いってごめん。そのパーカーはパリに持っていくべきだ」

僕がそういうと、アシャはじっとパーカーを見つめた。

「このパーカーはわたしのすべてを知っているの……」

ボアスウェットフルジップパーカ(長袖)

広がる冬の着こなし

ブラック、ネイビーなどのスタンダードからブラウンやグリーンなどシックでアウトドアテイストな色展開が自慢です。今季から新しく杢グレーも仲間入り。

フードのあご部分に高さを持たせることで首元があたたかく、アウターとしてもお使いいただけるデザインが特徴。インナーにシャツや薄手ニットを合わせてさらりと羽織ったり、本格的な冬にはミドルレイヤーとして、ダウンやコートの首元からフードをのぞかせて色味で遊んだり。冬の着こなしをアップデートしてくれるLifeWearです。

ボアスウェットフルジップパーカ(長袖)
ボアスウェットフルジップパーカ(長袖)

フードのあご部分に高さを持たせることで首元があたたかく、アウターとしてもお使いいただけるデザインが特徴。インナーにシャツや薄手ニットを合わせてさらりと羽織ったり、本格的な冬にはミドルレイヤーとして、ダウンやコートの首元からフードをのぞかせて色味で遊んだり。冬の着こなしをアップデートしてくれるLifeWearです。

何があろうと、
あったかく見守ってくれる、
わたしの服。

松浦弥太郎
ボアスウェットフルジップパーカ(長袖)
070 MENボアスウェット
フルジップパーカ
(長袖)
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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