100とは

ファーリーフリースフルジップジャケット(長袖)

ファーリーフリースフルジップジャケット(長袖)

魔法のようなあたたかさ

パリ行きの決意をレネーさんに伝えたアシャに、もう迷いはなかった。

「よかったわ。ほんとうにうれしい。パリはあなたを大歓迎よ。あなたとパリで一緒に暮らせるなんて夢のようだわ」

「レネーさん、ありがとうございます。パリでしっかりと服作りを学んで、恩返しします」

パリでの暮らしを誘ってくれたレネーさんに、アシャは心から感謝をした。

「お願いだから恩返しなんて考えないで。私はあなたを家族だと思っているの。だから。あなたがのびのびと楽しくパリで過ごしてくれるのがいちばんのしあわせなのよ。それだけでいいの」

レネーさんはこういって、アシャの肩に手を置いた。パリ行きは一週間後に迫っていた。

自分のアパートに戻ったアシャは、パリに引っ越すための荷造りをはじめていた。

「このフリースなつかしい……」

アシャはクローゼットの奥に畳まれて置かれていたクリーム色のフリースジャケットを両手で広げた。ニューヨークに来て、はじめての冬を迎えた、ずっと昔のことを思い出した。

  

エチオピア育ちのアシャは、ニューヨークに来るまで、冬の寒さを一度も経験したことがなかった。当然ながら冬に着るあったかい服を持っていなかった。

「ニューヨークの冬がこんなに寒いとは思わなかった。ほんとうにびっくりしたの……。雪を見たのもはじめてだったのよ」とアシャは僕にいった。

「だから友だちと一緒に、あったかい服をソーホーに買いにいったの。そのとき、はじめてフリースという生地に出会って、なんてあったかくて気持ちのいい生地なの!と驚いたわ。だって、毛布よりもふわふわで、毛布よりも軽くて、顔をずっとつけていたくなるようなやわらかさがあって、そのフリースのジャケットを着ると、あったかいベッドの中にいるような気分っていうのかな、とにかく、その軽さとあったかさに、これは魔法の服!って感動したの。その時買ったフリースのジャケットがこれよ」

アシャはフリースジャケットに袖を通し、ジッパーを顎まで引き上げて、ポケットに手を入れて、「ああ、やっぱりこのあたたかさは魔法のよう。最初に住んだアパートはヒーターの効きが弱くて、よくこのフリースを着たままベッドで寝た思い出があるの。フリースを着て眠るなんて、それこそ夢のような心地よさなのよ……」としみじみといった。

魔法のようなあたたかさ ストーリーイメージ

そして、「このフリースは忘れないようにパリに持っていかなきゃ!」といって、着ていたフリースジャケットを脱いで、ていねいに畳んでパリ行きの荷物の箱に詰めた。

ファーリーフリースフルジップジャケット(長袖)

極上のふわふわ

「最高の肌ざわり」を目指して実現したファーリーフリースジャケットです。誕生のきっかけはかつてのユニクロフリースブーム。スポンジ状のフリース生地の質感、色味などどうしてもメンズライクだったデザインを、「女性のためのフリース」というテーマを掲げ、毛足の長いフリースを新たに開発しました。

発売当初は現在よりも短かった毛足も、今ではより長く、柔らかに進化しています。素肌の上から羽織っても、ニットのようにチクチクしない極上の肌ざわり。自慢のフリースです。

ファーリーフリースフルジップジャケット(長袖)

発売当初は現在よりも短かった毛足も、今ではより長く、柔らかに進化しています。素肌の上から羽織っても、ニットのようにチクチクしない極上の肌ざわり。自慢のフリースです。

ファーリーフリースフルジップジャケット(長袖)

五年後の待ち合わせ

「うん。これで持っていく服の忘れ物はないわ」とアシャは言って、床に座っていた僕の腕の中に猫のように潜り込んできた。

「ここもあったかくてわたしは大好き」とアシャはいった。

一週間後、しばらく会えなくなるなんて、ずっとニューヨークで一緒に過ごしてきた僕らにとっては、そんな日々は想像すらできなかった。

アシャは目をつむって、しばらくうとうとしていたと思っていたら小さな声でこうつぶやいた。

「私、あなたと約束したいことがあるの……」

「なんだい? どんな約束をするの?」

「一週間後、私はパリに行く。それからずっと私たちは会えなくなるよね。いつまで会えないのか、どんなふうに付き合っていくのか、私、考えていたの。あなたはどう考えている?」

「なんだか、もう会えないのかと思うと、寂しいし悲しい気持ちになるから、実をいうとあまり考えないようにしていたんだ」

「でも、もう会えないんだよ。それでいいの?」

「よくはないけど、どうしたらいいかわからないよ。アシャはもうパリに行くんだから」

「いつ帰ってくるの?って聞かないの?」

「聞きたいけど、そうやって聞くことでアシャを困らせるかと思って聞けないんだ」

「私、せっかくパリで服作りを学べるんだから、このチャンスを活かしたいの。でも、私はニューヨークが好き。必ずここに帰ってくるつもり。五年……くらい。私、五年、パリで勉強する。だから、五年後、私たちが最初にデートをしたあの日に、私たちが出会った「コーヒーショップ」の前で、待ち合わせをするってどうかしら? 五年後まだお互いを愛していたら、待ち合わせに来ればいい。もしかして、愛する気持ちがなくなっていたら来なくてもいい。別れなくても、会えなくなるのは事実。五年後に待ち合わせしましょう。そうしないと、やっぱり気持ちの整理がつかないし、だらだらと気持ちを引きずるようでつらいわ」

五年後の待ち合わせ ストーリーイメージ

アシャは、自分が話すそのアイデアがよいのかわるいのかわからないけれど、もう会えなくなる寂しさを、なんとかして乗り越えようとするには、そのくらいのけじめというか、未来の約束のようなものを決めておきたいと僕に話した。

五年間会わずに、もしそれでも相手を必要であれば、待ち合わせの場所を訪れる。

それならいっそのこと、別れたほうがいいのではないかと僕は思った。けれども、アシャは、五年後という希望のためにパリでがんばりたいといった。よく考えると、それは僕にとっても、五年後の希望になりうると思った。五年間、お互い新しい自分になって再会する。そのために学び、努力し、成長する。

「わかった。そうしよう。五年後の待ち合わせってロマンチックですてきだね」

そういった途端、寂しい気持ちが溢れ出て、目から涙がこぼれそうになった。

「ごめんね。変な約束だと思う。だけど、とにかく五年間、私はパリで精一杯勝負したいの……」

ファーリーフリースフルジップジャケット(長袖)

満載のこだわり

肩や胸回りにはゆとりを、脇下から裾にかけてはすっきりとしたシルエット。アームホールは前振りに調整することで可動域をアップ。色設計に関しても、これまではアウトドアルーツの強めなカラーが主流でしたが、トレンドのベージュ系カラーやピンク、ブルーなどのニュアンスカラー、表面感が新鮮な杢カラーをご用意。

冬はミドルレイヤーとして、毛足の質感と色味をアウターからのぞかせてスタイリングを楽しんだり、くるりと丸めてカバンに入れておけば防寒対策も万全です。

ファーリーフリースフルジップジャケット(長袖)
ファーリーフリースフルジップジャケット(長袖)

冬はミドルレイヤーとして、毛足の質感と色味をアウターからのぞかせてスタイリングを楽しんだり、くるりと丸めてカバンに入れておけば防寒対策も万全です。

寒さだけでなく、
さみしさも忘れる、
魔法のようにあったかい、
私のフリース。

松浦弥太郎
ファーリーフリースフルジップジャケット(長袖)
068 WOMENファーリーフリース
フルジップジャケット
(長袖)
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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