100とは

プレミアムラムVネックセーター(長袖)

プレミアムラムVネックセーター(長袖)

母の教え

アシャと一緒にいると、心が休まり、何があっても気持ちがポジティブになることを、僕は感じていた。

ある日、アルバイト先の「コーヒーショップ」においても、客だけでなく、スタッフからも愛されるアシャに、常連の老婦人がこういった。

「みんなあなたの笑顔に救われているのよ。なぜなら、あなたはいつも笑っている。いつも楽しそうなの。それはとってもすてきなメッセージになっているのよ」

そう言われたアシャは、両手の平を頬に当てて恥ずかしそうに微笑んだ。

「あなたの笑顔を見ていて、ときおりこう思うの。この子はこれまでどんなにつらいことがあったのだろう。これまでどんなに苦しいことがあったのだろうと。そういうたくさんの困難を乗り越えてきたからこそ、そんなにすてきな笑顔が自然と現れるのでしょうね。あなたは自分の中に目に見えないしあわせをたくさん持っている人ね」

老婦人はそう言ってアシャの手を握った。

「ありがとうございます。自分で自分のことはあまりわからないけれど、ほんの少しのうれしいことをたっぷりと喜びたい。私の母がそういう人だったので、私もそうありたいといつも思っているんです」

「そのとおりよ。多くの人がしあわせになりたい、もっとしあわせになることを求めるけれど、それよりもっと大切なことがあるわ。それは喜ぶこと。私はね、心からの喜びって、しあわせよりもはるかに大きいと思っているの」

アシャは老婦人の横に座って語り始めた。

「つらいことがあったら母のことを思い出すのです。つらいことを避けることができないなら、悩んでも仕方がない、悲しんでも仕方がない、というのが母の教えでした。だから、つらい時ほど、母は笑顔を絶やさない人でした。そう、あなたがおっしゃるように、母にとっての笑顔は、私たち子どもに向けたメッセージでした」

母の教え ストーリーイメージ

「すてきなお母様ね。大切にしてあげてください。あなたのような娘がいてうらやましいわ。私にも昔、娘が一人いたのよ……」

老婦人はそういって目を閉じた。

「よかったら私を娘と思ってください。私もあなたのことを自分の母だと思いますから。いつでもここに来て、私に会いにきてください……」

老婦人の両手を持ってアシャはいった。

「私、今日のアルバイトはもう終わりなんです。よかったら少し一緒に歩きませんか。おうちまで送っていきます」

「あらまあ、ほんとうにいいの? 嬉しいわ。気持ちだけでも、あなたが私の娘になってくれるなんて夢のよう」

エプロンを脱いだアシャは、老婦人の腰にやさしく手をあてた。

プレミアムラムVネックセーター(長袖)

進化したラムウール

より柔らかく、より上質に進化した100パーセント天然ラムウールのプレミアムラムセーターです。プレミアムな理由は平均22マイクロンから19.5マイクロンに変更した繊維の太さ。より細くした原毛の風合いを最大に発揮できるように、糸の紡績方法や製品の仕上げなど、繰り返し検証、調整を行いました。

袖を通せばわかる極上の肌ざわりは、特別な時はもちろん、デイリーに活用していただきたい自慢のセーターです。

プレミアムラムVネックセーター(長袖)
プレミアムラムVネックセーター(長袖)

袖を通せばわかる極上の肌ざわりは、特別な時はもちろん、デイリーに活用していただきたい自慢のセーターです。

プレミアムラムVネックセーター(長袖)

私のお母さん

老婦人は最後のひとくちのコーヒーを飲み干していった。

「あなたのお母様の話を聞いて思い出したことがあるわ。人生にはいろいろとたくさんの事が起きる。大変なこと、つらいことも、苦しいことなどいろいろとね。でも、そうやって起きるいろいろなたくさんのことから、逃げようとか、避けようとか、忘れようとするのではなく、そういうすべてのことを、いかに喜びとして受け入れるかが大事だと。そんなことを言っていた方がいたわ」

「わあ、そんなふうに考えられるってすてきですね、ほんとうに……。どなたがおっしゃっていたのですか?」

「それはね、もう二十年以上前に、私が着ているこのラムウールのセーターをプレゼントしてくれた女性がそう言ってくれたの。実をいうと、私は自分の娘を病気で失ったのです。毎日泣いて暮らしていました。外に出かける気持ちも失い、毎日家の中で泣いてばかりの日々だったの。そんなときに、それほど親しい知人ではなかったんだけど、そんな私のことをどこかで聞きつけて、その人は私の家にやってきたのよ」

「『さあ、あったかいセーターを着て、冬のニューヨークを楽しみましょう』。なんていって、このセーターをプレゼントしてくれたのよ」

老婦人はセーターを着た自分をアシャに見せて、「ほら、すてきなセーターでしょ。軽くて、あったかくて、触り心地もいいの。私はこのセーターとその人に助けられたの。その人は、私にこういったのよ。『どんなことでも喜びとして受け止めること。つらくても、悲しくても、苦しくても受け止めましょう』と。最初、私はそんなこと無理よ、と思ったけれど、このセーターを着て外を歩くたびに、そう思えるようになれたの。笑顔を取り戻せたのよ」

老婦人の言葉を静かに聞いていたアシャは、自分の手を彼女の背中にあてたまま、ゆっくりと歩き目に涙を浮かべた。

「だから、このセーターはわたしの宝物。この冬も一緒。毎年冬が来るたびにそう思って、着続けているの」。老婦人はそういって、アシャの腕に自分の腕をからませた。

私のお母さん ストーリーイメージ

老婦人の着ているピンク色のセーターは、上質なラムウールで仕上げられ、長く着続けたことが嘘のようにきれいだった。きっと手入れを怠らずに大切にしてきたのだろう、とアシャは思った。

自分の家の前に着いたとき、老婦人はアシャにこういった。

「今日の出来事だけで、私はこの冬がどんな寒くなっても大丈夫。心がぽかぽか。また今度、会いましょうね」

アシャは家の中に入っていく老婦人の背中を見つめた。

「またね、お母さん……」

老婦人は後ろを振り返って笑顔を浮かべた。アシャもにっこりと笑って、小さく手を振った。

プレミアムラムVネックセーター(長袖)

ベーシックにこだわる

ベーシックだからこそ各要素のバランスが重要だとユニクロは考えます。編み地は7ゲージ。ラムウールの柔らかさを最大限に引き出す工夫です。

シルエットは裾にかけてストレートに。上質な素材感をたっぷり味わっていただけるリラックスフィットです。襟、裾、袖口には立体感あるリブ編みを採用。締め付けのないほどよいフィットにすることで、よりすっきりと仕上げました。肩の付け根は編み目数を増やし、肩のラインに合った立体的なカッティングを実現。時代に合わせた最適を探して進化し続けるLifeWearです。

プレミアムラムVネックセーター(長袖)
プレミアムラムVネックセーター(長袖)

シルエットは裾にかけてストレートに。上質な素材感をたっぷり味わっていただけるリラックスフィットです。襟、裾、袖口には立体感あるリブ編みを採用。締め付けのないほどよいフィットにすることで、よりすっきりと仕上げました。肩の付け根は編み目数を増やし、肩のラインに合った立体的なカッティングを実現。時代に合わせた最適を探して進化し続けるLifeWearです。

この冬、
一緒に過ごしたい、
そんなパートナー。

松浦弥太郎
プレミアムラムVネックセーター(長袖)
065 MENプレミアムラム
Vネックセーター
(長袖)
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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