100とは

ウルトラライトダウンコンパクトベスト

ウルトラライトダウンコンパクトベスト

「好き」を大切に

昔、ある人がこう言った。「誰かを好きになることはあるけれど、誰かを嫌いになることはない」と。

その人はどんな人であっても嫌いにならないと言う。しかもだ。嫌いにならないように意識をしているわけでもなく、頑張っているわけでもない。なぜなら、ある時から、それまであった心の中の「嫌う」という概念が消えていった、と。

僕はこう聞いた。「『嫌う』が消えた、そのある時とはどういう時だったのですか?」

「どんなことでも、そのすべてを自分が理解できることはないからさ。たとえば、君がある出来事で誰かを嫌いになったとしよう。君にとっては嫌いになる理由があるだろうが、その多くはその人のほんのわずかな表面的なことであって、もしくは、とても人間的な弱さから生じたことかもしれず、その出来事だけを考えれば、嫌いになって当然かもしれないけれど、たったそれだけのことで誰かを嫌いになるくらい、もったいないことはないと思うからさ。だいいち、何かを嫌いになって、良いことはひとつもないと僕は思うんだ」

なるほど。僕ははっとした。

確かに、何かを嫌いになって、うれしかったり、しあわせを感じたり、得をすることってひとつもないのはわかる。「これは嫌い」と意思表示することの意味も、あるようで無いのもわかる。

「要するに、『嫌い』というのは、他人に対して自分を知ってもらいたいという自己顕示欲でしかなく、そう思うと、『嫌い』という意識を持つくらいばかばかしいことはないと思うんだ。だったら、その分、『好き』を見つけて、『好き』を意思表示したほうがいい。『好き』はあらゆることの起点になるからね」

その人はにこにこしながらこう言った。

もっと「好き」を大切にしたらいい。「好き」を増やせば、「嫌う」は自然と消えていく。「好き」と「嫌う」は並べて考えられがちだけど、本質的な価値は大きく違うんだ、とも言った。

「では、どうしても『好き』ではないことについては、どう考えたらいいのでしょう?」

「『好き』ではないことは、『苦手』ということくらいにとどめておくといい。誰にとっても『苦手』はある。まあ、言葉遊びのようだけど、『嫌う』という言葉には希望がないと思うんだ。自分の意識や使う言葉で、希望が無いと感じるものは、できるだけ取り外すように僕はしているんだ」

「好き」を大切に ストーリーイメージ

人生における先輩であるその人の考え方に出会った僕は、心だけでなく身体もすっと軽くなったような気がしてならなかった。

「希望を感じない言葉や考え方は、必ず誰かを悲しませてしまうよ」

その人はそう言って、僕の肩に手を置いた。

ウルトラライトダウンコンパクトベスト

2WAYの楽しみ

今季のウルトラライトダウンコンパクトベストは、クルーネックと内側のボタンを留めてVネックにアレンジできる2WAY仕様。お客様からの声を反映し開発した自慢のデザインです。

襟ぐりから前立てにかけての縁取りは、すっきり見えるパイピングテープに。アクセントとしてだけでなく、襟を折り返したときにもきれいに収まる工夫です。ジャケットやチェスターコートなどのVゾーンから見えないVネック。コーディネートの幅がグンと広がりました。

ウルトラライトダウンコンパクトベスト
ウルトラライトダウンコンパクトベスト

襟ぐりから前立てにかけての縁取りは、すっきり見えるパイピングテープに。アクセントとしてだけでなく、襟を折り返したときにもきれいに収まる工夫です。ジャケットやチェスターコートなどのVゾーンから見えないVネック。コーディネートの幅がグンと広がりました。

ウルトラライトダウンコンパクトベスト

今日の私の「好き」

僕はいつかのこんな出来事を思い出していた。自分の何かが大きく変わった、あの日のことを。

なぜなら今日、アシャにこう言われたからだ。

「私が思う、あなたの好きなところのひとつに、何に対しても『嫌い』と言わないところ。ニューヨークでは誰もが、自分はこれが『嫌い』あれが『嫌い』と言ってばかりよ。すべてがイエスかノーなの。ある日、私が『あなたの嫌いなことって何?』と聞いたことを覚えてる? その時あなたは『嫌いなことは無い』って答えたから私はびっくりしたの」

「僕にとってのノーは、『違う』という意味で『嫌う』という意味ではないよ」

なぜ僕が「嫌う」と言わないのか。僕はアシャに、ある人との出会いとその話を聞かせた。アシャは興味深く聞いて、何度も深くうなずいていた。

「『好き』を増やして、『好き』を大切にすれば『嫌う』が消えていくってすてきな考え方ね。みんながそう気づけばいいのに。特に人に対してはそうありたいわ。あなたが言うように『嫌う』よりも『苦手』のほうが希望がある。そう思うと楽だわ」

「私ね、『冬って嫌い』って思っていた時があるの。ニューヨークの冬って本当に寒いから。でも『冬って嫌い』って思っていたら、冬中、自分がつらいとわかったの。だから、服の着こなしを工夫して、なんとか寒くないように考えてみた。どうしたら冬が好きになるのかなって。そうしたら、冬のおしゃれがめちゃ楽しくなって、いつの間にか『冬が好き』になったの。今では冬が早く来ないかなって。こんなふうに嫌いが好きになることってあるのよ」

アシャは笑って話してくれた。

「じゃあ、聞くけど、あなたが『苦手』なことって何? ぜひ聞かせて」

アシャは僕に聞いた。

「苦手はいっぱいありすぎるよ。例えば、ガラスを爪で引っ掻いた音とか、割れそうで割れない風船とか、狭いテーブルで大きな声で話す人とか、えばりんぼうな人とか、夜の足音とか、固く閉まった瓶の蓋とか、あと、小さい虫とか、水圧の弱いシャワーとか……」

アシャは口をおさえて楽しそうに笑った。

今日の私の「好き」 ストーリーイメージ

「言っておくけど、『苦手』の何百倍も『好き』はあるんだ」と僕は言った。

「うん、知ってる。いつかあなたの『好き』をたくさん聞かせてね。今日の私の『好き』を聞いて! こんなふうに寒い日は、彼氏にもらったダウンベストを着て、一日中ベッドに寝転んで本を読むこと。どう?」

そう言ったアシャは、僕がプレゼントしたダウンベストを着てベッドに飛び込んだ。

ウルトラライトダウンコンパクトベスト

着やすく、使いやすく

インナーでもアウターでも着られるようにサイズを見直し。さらに後ろウエスト部分のステッチに合わせて切り替えを入れることで、膨らみが抑えられ、背中のラインに沿った自然なシルエットが生まれました。

左脇の内側のループには収納袋が取り付け可能。袋の紛失を防いでいつでもコンパクトに折りたたんでいただけます。旅行や出張はもちろん、ルームウエアとしてもおすすめしたい冬のLifeWearです。

ウルトラライトダウンコンパクトベスト
ウルトラライトダウンコンパクトベスト

左脇の内側のループには収納袋が取り付け可能。袋の紛失を防いでいつでもコンパクトに折りたたんでいただけます。旅行や出張はもちろん、ルームウエアとしてもおすすめしたい冬のLifeWearです。

軽くてやわらかで、
とっても動きやすい、
冬が大好きになる服。

松浦弥太郎
ウルトラライトダウンコンパクトベスト
062 WOMENウルトラ
ライトダウン
コンパクトベスト
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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