100とは

チノハーフパンツ

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ありがとうを

僕らはセントラルパークのベルヴェデーレ・キャッスルの展望台に上がった。

「私、ここから眺めるセントラルパークの景色が好き。いつも一人で来ていたけど、今日は二人で来ることができてうれしい」

アシャは、僕の腕を組み直して言った。

「この景色を誰かと一緒に眺めるなんて、ニューヨークに来たばかりの頃は想像もできなかったわ」

「うん、僕もそうだ。ニューヨークでデートなんて、夢というか、信じられないよ。誰に感謝すればいいのだろう」

長年付き合っているかのように触れ合ってくるアシャに僕はどきどきしていた。

「自分自身に感謝するべき。自分をもっとほめてあげて。父がよく言ったの、人生とはすべて自分の心のあらわれ。誰のせいでもなく、すべて自分のせいであり、自分のちから。うれしいこと、悲しいこと、すべてそう」

「うん、僕もそう思う。すてきなお父さんだね」

「だけど聞いて、父は私が中学を卒業したらニューヨークに留学させることをずっと前から決めていて、それを私に寸前まで何一つ話さなかったのよ。ひどいと思わない? 私は急に家族と友だちと故郷と離れることになって、一人でニューヨークにやってきたの。英語も話せなかったのよ。だから、父をどれだけ恨んだかわからない」

「今でも恨んでる?」

「ううん、今は感謝してる。さみしいけれど、ニューヨークでたくさんの友だちもできたし、故郷では知ることができない素晴らしい世界に触れることもできたし、あなたとこうしておしゃべりができるのも父のおかげ」

「お父さんはきっとアシャ以上にさみしかったと思うよ。大切な娘を、こんな大都会に行かせるんだから。それだけアシャを愛しているんだね。君の未来を想って」

「うん、わかる。家族も故郷も大事だけど、父は私の未来を広げようとしてくれたんだと思う。だって学費だって大変だったはず。私の家はそんなに裕福ではなかったから」

ありがとうを ストーリーイメージ

「お父さんに会いたい?」

「お父さんにもお母さんにもすごく会いたいわ。会って子供の頃のように、くっついて甘えたいわ。ぎゅって抱きしめてもらいたい、それだけでいい」

「僕も同じ気持ちなんだ。大人になっても、両親に抱きしめてもらいたい。寂しいとき、ベッドの中で丸くなってそればかりを考えてる自分がいる」

アシャは僕の手を自分の腰に回して、両手で僕を抱きしめた。

「最初はお父さんのハグ。次にお母さんのハグね」

アシャはぎゅーっと僕を二回抱きしめた。

「はい、今度はあなたの番。私を抱きしめて」

アシャはくすくすと笑いながら、目をつむって僕の腕の中に立った。

チノハーフパンツ

オーセンティックな本格派

短すぎず長すぎない絶妙な丈感が自慢のハーフパンツです。高密度ツイルを微起毛させ、製品を縫い上げてから染める製品染めと洗い加工によって独特の風合いを表現。ステッチ近くに現れるパッカリングやコインポケット、腰裏のシャンブレーパイピングなど、本格的なヴィンテージのディテールにもこだわりました。

今季はお客様の声をもとにパターンを見直し。リラックス感あるはき心地はそのままに、ウエストはフィットするようにサイズ調整。はいたときに裾幅とのバランスがよくなり、きれいなシルエットが実現しました。

チノハーフパンツ
チノハーフパンツ

今季はお客様の声をもとにパターンを見直し。リラックス感あるはき心地はそのままに、ウエストはフィットするようにサイズ調整。はいたときに裾幅とのバランスがよくなり、きれいなシルエットが実現しました。

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ふたりのお弁当

「ねえ、今日はどんなランチを作ってきてくれたの?」

僕は持ってきたトートバッグから、ラップで包んだおにぎりを出し、おかずの鳥からあげと卵焼き、ウインナー炒めを詰めた容器のふたを開けた。

「これは我が家の味というのかな。休日になると、今日みたいに家族全員で公園に出かけて、このお弁当を広げてピクニックをするのが僕は大好きだったんだ」

「わー。おいしそう。このご飯を丸めたものを食べるのはじめてだわ。黒いのは何?」

「黒いのは海苔。海藻を紙のように平らにしたもので、日本料理を代表する食べ物。丸めたご飯は手で食べるんだけど、そのままでは指にご飯粒がくっつくから、海苔で包んで食べるんだ」

アシャは早速おにぎりを頬張った。

「おいしい! 中に何か入ってる!」

「そう。中に好みの具を入れるのがおにぎり。今日は梅干しを入れてきた」

「梅干し知ってる! 前に日本人の友だちから教えてもらったわ。すっぱいけど大好きよ」

アシャはおにぎりを子供のようにむしゃむしゃと食べた。

「おかずも母の味だよ。どうかな?」

「うん、鳥のフライは最高。卵焼きも甘くておいしい。ウインナーはトマトケチャップで炒めるのね。どれもおいしいし楽しい!」

アシャは足を伸ばしてくつろぎながら、何度も「楽しい!」「しあわせ!」と言葉にした。

「私のお弁当も食べてみて」

アシャは茶色い紙袋から、いくつもの容器を出して僕に言った。

「これはインジェラという薄いパン。ワットというカレーみたいな具を、このインジェラに載せて食べるの。これもおにぎりと同じように手で食べるのよ」

僕はインジェラを食べやすい大きさにちぎって、その上に野菜と肉を煮込んだワットをのせて食べた。

「おいしいね! これカレーみたい。インジェラは酸っぱいパンなんだ。この味も好き。アシャが焼いたの?」

「そうよ。インジェラはかんたんに焼ける。いろんな種類のワットを作ってきたからもっと食べて」

アシャは僕のためのインジェラをちぎって、その上にワットをのせて、「次はこれ」というように目の前に置いていった。豆や肉を煮たのや、野菜サラダがあったりと、多彩なワットが楽しかった。

「エチオピアでもこんなお弁当をピクニックに持っていくの?」

「うんそうね。考えてみたら、ワットはおにぎりの具と同じね。あと、食後にコーヒーを飲むの。一杯目はそのままで、二杯目に砂糖を入れて、三杯目はバターとスパイスを入れて楽しむの。今度あなたのためにコーヒーを淹れてあげる。父が淹れるコーヒーはほんとにおいしいの。我が家の秘伝なのよ」

ふたりのお弁当 ストーリーイメージ

アシャは隣に座って、僕のひざの上に手を置いて話し続けた。

「あなたってショートパンツ似合うわね。私の父もショートパンツを一年中はいていたわ」

突然アシャは僕の膝を枕にして寝転んだ。

「これもエチオピア流。夫婦やカップルはこうするの」

彼女のカールしたやわらかい髪を指で触ると、アシャは目をつむってくつろいだ。

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夏本番の主役として

定番のカラーに加えて、スモーキーなパステルトーンのカラーやタイダイ染めなど柄物もご用意。色の濃淡にこだわったタイダイ染めは1点1点ていねいに染めることで表情豊かに仕上がりました。

繰り返し洗濯しても変わらない耐久性、サラサラして心地よい肌ざわりは、夏本番の強い味方。シャツやポロと合わせてクリーンに、裾をロールアップさせて少し大きめのTシャツでアクティブに、シーンに合わせて着こなしの変化が楽しめるLifeWearです。

チノハーフパンツ
チノハーフパンツ

繰り返し洗濯しても変わらない耐久性、サラサラして心地よい肌ざわりは、夏本番の強い味方。シャツやポロと合わせてクリーンに、裾をロールアップさせて少し大きめのTシャツでアクティブに、シーンに合わせて着こなしの変化が楽しめるLifeWearです。

シンプルで味ふかく、
心地よいはき心地。
進化し続ける短パン。

松浦弥太郎
チノハーフパンツ
047 MENチノハーフ
パンツ
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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