100とは

ドライカラーTシャツ

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コーヒーショップ

僕は、週に二、三度、ユニオンスクエアパークの目の前にある「コーヒーショップ」というカフェに行き、本を読んだり、手紙を書いたり、ぼんやりしたりして過ごした。

僕は「コーヒーショップ」が大好きだった。このカフェにいると、ニューヨークでの寂しさや不安な気持ちが不思議と紛れたからだ。

この店には、世界中から夢を追ってニューヨークにやってきた人がたくさん集っていた。店で働くスタッフもそうだ。皆、モデル、俳優、アーティスト、デザイナーなど、何かを目指している人たちばかりだった。

とはいえ、サラリーマンや、近所に暮らすおばあちゃんも安心してくつろげる、庶民的な雰囲気もあった。

通っていてわかったことがある。それは毎週火曜と木曜が、この店の面接の日なのだ。気立て良く、真面目で、そしてスタッフの空きがあれば採用されるのだが、この二日間は、「コーヒーショップ」での仕事を求めてやってくる若者で店は賑わった。

僕はここで働くアシャという女性と仲良くなった。

僕がまだ「コーヒーショップ」に通い始めた頃、サンドイッチを選ぶのに迷っていると、たまたまテーブルの横を通った彼女が「そうね、ツナサンドがおいしいわよ」と声をかけてくれたのだ。

帰り際、「サンドイッチおいしかった。ありがとう」と、カウンターの中でコーヒーを淹れていた彼女にお礼を言うと、「また明日ね!」と笑顔を見せてくれたのが嬉しかった。

それからというもの、僕は「コーヒーショップ」に行くとアシャの姿を探すようになった。アシャは、週に三日、店がオープンする朝の六時半から深夜まで働いていた。いつしか僕はアシャに会うのが楽しみになっていた。

ある日、アシャは休憩時間に、僕のテーブルにやってきて隣に座り「で、あなたはニューヨークで何をしているの?」と聞いてきた。僕は日本からサンフランシスコを訪れ、古書の魅力に触れ、ここニューヨークに行き着き、ビンテージブックを扱う仕事を、自分なりにやっていることを話した。「すてきね。私も本が好きよ」とアシャは言った。

コーヒーショップ ストーリーイメージ

そして、アシャは自分のストーリーを僕に話してくれた。

彼女は十五歳の時に、カトリック学校の交換留学生として、アフリカからニューヨークに一人でやってきた。それは彼女の意志ではなく、両親が決めたことだった。なんと出発の二週間前まで、留学のことを両親から聞かされてなかったという。

ドライカラーTシャツ

スタンダードを貫く

ほどよいフィット感とすっきりとした着用感が自慢のタンクトップです。伸縮性のある着心地バツグンなリブ素材は、コットン100%のような風合いと「ドライ機能」がポイント。コットンにポリエステルを加えて型崩れしにくく、汗をかいたり洗濯してもすぐに乾くのが特徴です。

肌に直接触れるものだから、襟やアームホールは縫い目が目立たない特殊縫製で肌触りもなめらか。ネックラインはゆるめに、インナーでも一枚でも着られる汎用性の高いデザインです。

ドライカラーTシャツ
ドライカラーTシャツ

肌に直接触れるものだから、襟やアームホールは縫い目が目立たない特殊縫製で肌触りもなめらか。ネックラインはゆるめに、インナーでも一枚でも着られる汎用性の高いデザインです。

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ロウェナのユニフォーム

ニューヨークにやってきた時、アシャは英語が一言も話せなかった。だから、他の子が一時間で出来る宿題が五時間もかかり、泣きながら徹夜をした日もあったと言う。

「あの頃は、言葉の不自由と、何より家族や友だちと別れたのがつらかった。でも今はここニューヨークが大好き」と、アシャはにこやかに話してくれた。

僕は、「コーヒーショップ」で働くスタッフが皆、アシャを一目置いている理由がわかった。彼女くらい苦労している人はいないからだ。

「アシャは今、何をしているの?」と聞くと、「高校を卒業して、好きだったファッションの道を目指して勉強中なの。絶対に成功してやるわ」とアシャは言って微笑んだ。

「じゃ、また明日ね」と言ってアシャは仕事に戻った。二十二歳のアシャが淹れるコーヒーは実においしかった。

その次に「コーヒーショップ」で友だちになったのはロウェナという女性だった。

二十六歳のロウェナはしっかりもので、みんなのお姉さん的存在。ウエイトレスとして働いていた。

アシャとロウェナは仲良しだったので、僕がアシャとおしゃべりしていると、「私の妹と何を話しているの?」と必ずロウェナがやってきた。

ロウェナは「コーヒーショップ」内で、男性客から一番人気のある女性だった。いつも白いリブ編みのタンクトップに、白いシャツを着て、デニム姿で、テーブルの間をきびきびと働く、ショートカットのロウェナにたくさんの男性客が見とれていた。

ロウェナはブロンクス生まれの生粋のニューヨーカーだった。スペインとプエルトリコとイギリス、フランス、ドイツとウエールズの血が流れていて、「私自身がまさに移民が集まるニューヨークみたいね」と笑った。

ロウェナの夢は作家になることだった。大学でクリエーティブ・ライティングを学びながら、週に四日「コーヒーショップ」で昼間働き、あとは文章を書く時間に費やしていた。

ロウェナのユニフォーム ストーリーイメージ

一度だけロウェナと、21丁目の古書店で会ったことがあった。手に持っていた本を見ると、ミヒャエル・エンデの「モモ」だった。

「『モモ』は僕も好きな本です」というと、「本当を言うと、いつか子どものための物語を書きたいの」とロウェナは言った。

ある日、僕が白いタンクトップに、白いシャツを着て「コーヒーショップ」を訪れると、「あら、その私のユニフォームを返してくれない?」と、ロウェナはふざけて僕の着ているシャツを脱がそうとした。

「ごめんごめん、君のクローゼットから勝手に借りてきたんだ」と冗談を言うと、店にいたロウェナ目当ての男性客が一斉に僕をにらんだ。

「しょうがないわね。今日だけよ」と、ロウェナは言って、僕に投げキッスをする真似をした。

ドライカラーTシャツ

豊富なカラーパレット

今季は「色」にこだわりました。クルーネック、Vネック、タンクトップそれぞれに白や紺、杢調のベーシックカラーはもちろん、オレンジやピンクなどのトレンドカラーを色付け。そしてパッケージも小さめのサイズに変更。よりたくさんのカラーバリエーションを店頭に並べられるようにして、色選び自体を楽しんでいただけるように考えました。

ジャケットやシャツの下の挿し色肌着に、ご自宅でのリラックスやTシャツのインナーとして幅広くお使いいただけるはずです。

ドライカラーTシャツ

ジャケットやシャツの下の挿し色肌着に、ご自宅でのリラックスやTシャツのインナーとして幅広くお使いいただけるはずです。

告白しよう。
実は僕、かなりの、
タンクトップ好きです。
白が一番好き。

松浦弥太郎
ドライカラーTシャツ
037MENドライカラー
リブタンクトップ
MENドライカラー
クルーネックT(半袖)
MENドライカラー
VネックT(半袖)
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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