100とは

ポケッタブルパーカ

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忘れてはいけないこと

ケンの元に渡ったアンディ・ウォーホルの希少本「A GOLD BOOK」は、その後の僕に、ブックハンターとしてのステップアップと、独立のチャンスをもたらしてくれた。

マンハッタンにおいて有名なアートブックコレクターであるケンが、沢山の顧客を紹介してくれたのだ。そしてまた、僕の師匠であるジャックの教えも相まって、今、どんな本に隠れた価値があり、その本をどんな人が求めていて、その本を探すにはどうしたらよいのか、しかも合理的に。そういう、これまでちんぷんかんぷんだったことが、知らず知らずの間に人一倍詳しく身についていた。

ここ数ヶ月の間にあった本にまつわるいろいろな出来事を、久しぶりに会ったセスに話した。

「とってもすてきな話なので、君のことをコラムに書いてもいいかい?」とセスは言った。もちろん僕は承諾した。

すると、それから数日後、「君のことを書いたコラムが、あるタウン誌に掲載されることになった」とセスから連絡があった。

そのコラムは、サンフランシスコからニューヨークにやってきた日本人の少年がブックハンターとして本探しをスタートさせ、ひょんなことから「A GOLD BOOK」に出会い、それがきっかけになってコレクターのコミュニティと親交を深め、さらにアレクセイ・ブロドヴィッチの「Ballet」にまでたどり着いたという、日々、マンハッタンを駆け巡りながら奮闘するショートストーリーだった。

僕は気恥ずかしさもあったけれど、このニューヨークというエネルギッシュな街で、本を通じて知り合った、人と人のつながりがもたらしてくれた奇跡のような出来事をたくさんの人に知ってもらうのがとても嬉しかった。

出来上がったコラムを見せてもらうと、そこには、僕らしき少年が、本探しをしている様子が描かれたイラストカットが散りばめられていて、そのコピーをもらった僕は、嬉しさと誇らしさで胸がいっぱいになった。

「これで君もいっぱしのブックハンターになったな。ニューヨークの有名ブックハンターだ。そう認められたってわけさ。これからも、君が変わらず一所懸命に仕事をし続けていけば、何も困ることはないだろう。よかったね」とジャックは僕に言った。

そして、「何かに一所懸命に頑張っている人をほっとかないのがニューヨークなんだ。この街は、そうやって人と人が助け合って、支え合って、認め合って生きていく街なんだ」と言った。

忘れてはいけないこと ストーリーイメージ

「でも、いいかい。ラッキーなことは、どこかからフワッとやってくるんじゃないし、どこかから落ちてくるものでもない。いつも人という誰かが持ってきてくれるものなんだ。そう、幸運は人が運んできてくれるものなんだ。だからこそ、何よりも、人との関係を大切にし、いつも感謝の気持ちを失ってはならないんだよ」

ジャックは僕の肩に手を置いてこう話してくれた。

確かにその通りだ。コラムだけを読めば、すてきでかっこいい自分がそこにいて活躍しているのだが、それは決して実力なんかではなく、いつもそこには僕を助けてくれた誰かがいた。得意気になって、それを忘れてはいけないと思った。

ポケッタブルパーカ

持ち歩ける高機能

付属の収納袋にくるりと丸めてコンパクトに持ち運べるポケッタブルパーカ。素材はポリエステル100パーセント。薄手で軽量ながらスポーツ色が強くなりすぎないように、カジュアルで丈夫なリップストップ生地の採用や、さらに合繊特有の光沢をおさえたマットな質感など、細かい工夫も行っています。

表面には撥水剤をしっかり固着させることで、より効果が長持ちする耐久撥水仕様に。突然の小雨にも安心な機能を備えています。

ポケッタブルパーカ
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表面には撥水剤をしっかり固着させることで、より効果が長持ちする耐久撥水仕様に。突然の小雨にも安心な機能を備えています。

ポケッタブルパーカ

プロフェッショナルとは

そして、ジャックはこうも言った。

「目立ってはいけないよ。有名になろうとしてもいけない。鼻を高くしてえばってもいけない。今回のコラムは、君がブックハンターとしてスタートするためのきっかけとして良しとするけれど、調子に乗って、さらに自分を、あたかもひとつの商品のように宣伝するようであってはならないよ。一時はそれで仕事が広がり、人脈も出来て、ビジネスも増えるだろうが、今回のように目立ってしまった時ほど、できるだけ控えめになって、ひたすら地味に、目立たぬように仕事をするのがいい」

「ここニューヨークは、人と人が支えあい、助け合い、認め合う街だけど、同時に競い合い、戦い合う街でもあるんだ。君の活躍を賞賛する人の何倍もの人が、君をよく思わないってことも知っておくべき。足を引っ張りたいと思う人がたくさんいるんだ。だからこそ、謙虚になって、控えめになって、至って静かに仕事をすることが賢い方法なんだよ」

僕はジャックの言うことがよくわかった。

「本当にそうだね。右も左もわからなかった僕を、君を含めてたくさんの人がサポートしてくれて、そのおかげで奇跡が起きて、たくさんのストーリーが生まれたことを忘れないよ。おっしゃる通り、僕は得たものが多かった。だからこそ、これからは、もっとさらに得ようと考えずに、得たもの以上の何かを、今度は、自分以外の別の誰かに与えることに一所懸命になろうと思う」と僕は答えた。

「そうだね。それが正しい。何事もバランスだしね。勝ち過ぎるといつか大負けする。大負けは再起不能になる可能性もある。勝ったら負ける。負けたら勝つ。いつもひとつくらい余分に勝つ感じ。これでいいんだ。そうしていれば、勝ちたい時に、必ず勝てる自分になれるよ。普段は地味で目立たず、おとなしくコツコツと仕事をする。けれども、勝ちたい時には必ず勝つ。こんなに強いことはないんだから。それがプロフェッショナルってもんさ」と言って僕の肩を抱いて笑った。

プロフェッショナルとは ストーリーイメージ

「ま、あとは、仕事においては何が起きるかわからない。だからこそ、何が起きても慌てないようにいろんな準備をしておくことだね。じゃあまたな」とジャックが言ったその時、急に小雨がパラパラと降り出した。

慌てて目の前のスーパーマーケットの軒先に雨宿りをすると、ジャックは、バッグからさっと丸めたパーカーを取り出し、ふわっと羽織って雨の中を颯爽と歩いていった。

その後ろ姿を見て、いつか自分はブックハンターではなく、ジャックのようになりたい。そう思ったのだった。

ポケッタブルパーカ

暮らしのあらゆるシーンに

スポーツだけでなくタウンウェアとしても着られるように、裾、袖口まわりのゆとりを少なくし、すっきりとしたシルエットに変更。フードもかぶった時にもたつかないフォルムに改良しています。フード口のアジャスト機能は、広げたり絞ったりすることで使い方や着こなしに幅が生まれます。

旅のお供に、仕事帰りのランニングウェアや山登りの便利アウターとして、オフィスでの冷房よけに。バッグやトランクに入れていつでも持ち歩きたいLifeWearの定番です。

ポケッタブルパーカ
ポケッタブルパーカ

旅のお供に、仕事帰りのランニングウェアや山登りの便利アウターとして、オフィスでの冷房よけに。バッグやトランクに入れていつでも持ち歩きたいLifeWearの定番です。

何が起きても大丈夫。
雨にも風にも負けない服が、
僕のバッグの中にある。

松浦弥太郎
ポケッタブルパーカ
032 MENポケッタブルパーカ
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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