細田守
2021.07.15

細田守監督が語る最新作とTシャツ

細田守

この夏、細田守監督が10年ぶりにインターネット世界を描いた。高知の平凡な女子高校生が、仮想世界で大人気の歌姫となる映画『竜とそばかすの姫』だ。SNSがリアルを侵食し、誹謗中傷が取り沙汰される今だからこそ、実在の自分も、ネットの自分も、どちらも本当の自分だよと、そっと背中を押してくれる物語。そんな細田監督の最新作から過去の名作までが、満を持してTシャツとなった。

商品一覧はこちら

ネットは仮想世界ではなく、現実になった。

“細田守作品”といえば、何といっても夏だ。湧き立つ入道雲に、青々と茂る緑、煌めく水面。まぶしく光る盛夏を、全力で駆け抜ける主人公。映画が始まった瞬間から、自然と胸が躍り出す。そんな瑞々しい世界を作り続ける細田守さんに、なぜ夏を舞台に?と聞いてみた。すると「よく聞かれるんですけど、それはやっぱり、夏に公開するから(笑)」と答えてくれた。

「夏の映画って好きなんです。暑いなか、涼しい映画館でスカッと爽快な映画を観るのが楽しいんですよね。あと昔、東映動画にいたときに、先輩に『季節によって作る映画が違う』って教えられたんですよ。春は出会いと別れ、秋は人生について考えるような哲学的な物語、冬はお正月だからめでたいもの。その理屈でいうと、夏は暑くて難しいことが考えられないから、夏休み気分を開放できる元気な作品がいい。僕はその教えを頑なに守っているんです(笑)」

最新作の『竜とそばかすの姫』も7月に公開される“夏映画”だ。スクリーンに映し出されるのは、鮮やかな高知の田舎。不思議なもので、アニメーションとして丹念に描き出された自然は、実在する雲よりも川よりも、ぐっと眼前に迫ってくるような生の気配がある。リアルとファンタジーが交錯する。

「アニメ映画って、風景美術への美意識が実写映画以上にあるんです。美しいものを見ると脳内の快楽中枢が刺激されるし、作る側も観る側も画への期待が高い。いつもアニメ表現が生きるような舞台を探しています」
高知を選んだのは長年の憧れから。司馬遼太郎の小説『竜馬がゆく』を読んで以来、細田さんにとっての高知は、山口や鹿児島と並ぶ歴史が動いた町になった。
「高知ってね、ものすごく川が綺麗なんですよ。特に仁淀川には、他にはない圧倒的な美しさがある。幕末には革命が生まれた場所なのに、訪れてみると平穏で慎ましくて、自然が豊かな田舎なんです。一方、全国的に見て過疎率や限界集落化率が高いエリアで、少子化問題に苦しむ側面もある。大いなる自然の魅力と、社会問題、そのふたつが同居しているという点も、現代の日本を象徴している場所のような気がしましたね」

細田守アニメーションワークス

建築家のエリック・ウォンさんが設計した超巨大な仮想世界<U>。「『サマーウォーズ』の<OZ>の世界観を受け継ぐ、フラットでグラフィカルなものに」という細田監督の思いを受け、ヨーロッパの民族楽器コードハープをイメージして構築した。空には下弦の月が浮かんでいる。

10年ごとにインターネットを描いている。

現代を描くという点でいえば、細田さんが長きにわたりモチーフにしているのが“インターネット”だ。2000年公開の劇場版『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』では、ISDNでネットワークに接続し、メールベースでモンスターと戦った。一歩も部屋から出ない主人公たちが、パソコンのモニタ越しに敵と戦う40分の物語は、劇場に訪れた子供たちに衝撃を与え、インターネット空間への憧れを植え付けた。そして2009年公開の『サマーウォーズ』では、仮想世界<OZ>内で暴走したハッキングAIを止めるべく、主人公たちがアバターとなって対峙。最終的には花札ゲームでバトルを繰り広げた。すでにこの時点で<OZ>はガスや水道、納税といったインフラ管理も担っており、現在のインターネットを予見していたといえる。

「およそ10年おきにインターネットを舞台にした作品を作ってきたんですが、その時々で意味合いが大きく変化してきたと思うんですよね。いちばん最初に『デジモンアドベンチャー』を作ったのは、なんたって2000年ですから。インターネットの歴史も始まったばかりで、当時は一部の若い人しか使っていない、とにかく革新的なツールだった。それが約10年後の『サマーウォーズ』の頃にはぐっと身近になり、さらに約10年を経た今では“誹謗中傷”が議論されている。誰かが放った一言が、まっすぐに誰かを傷つける。もはや仮想世界ではなく、もうひとつの現実になったんですよね。近年、あらためてそのダイナミックな変化を感じたんです」かつてユートピアだったインターネットも、リアリティのある並行世界になった。プロフィール画像も、年齢も、性別も、簡単に理想の自分になれる。それはやがて、現実とのギャップを生んでいく。

「インターネットの世界でみんなが最も恐れているのは、『このアカウントの正体は誰?』ということじゃないかと思うんです。別の自分として振る舞っているからこそ、本当の自分を知られるのが怖い。本来、コミュニケーションは相手の中身を知ることから始まるはずなのに、その前提が変わってきたように感じて」
主人公であるすずも、インターネットでは別の顔を持っている。普段は高知で暮らす17歳の女子高校生。しかし仮想世界<U>では、数億のフォロワーを抱える歌姫ベルとして世界中から脚光を浴びる存在だ。
「インターネットの中心にいるスターが、クラスの片隅のうつむいている子だったら……と考えると、なんだかワクワクしませんか?そういう美を描き出してこそ、作り手として面白みがある。それに、僕はうつむいている子に肩入れしたくなるほうだし、ネットのあなたも現実のあなたも、どっちも本当なんじゃない?って思うんですよ。仮想の自分から勇気をもらって、現実の自分が強くなるなら、それでいいじゃないかって」

細田守アニメーションワークス

『アナと雪の女王』のキャラクターデザイナーが手がけた、歌姫ベル。

華やかなベルのキャラクターデザインを担当したのは、アニメーターのジン・キムさん。『塔の上のラプンツェル』『ベイマックス』『ズートピア』、そして『アナと雪の女王』など、誰もが知るキャラクターを手がけてきたレジェンドだ。
「『未来のミライ』がゴールデン・グローブ賞にノミネートされた当時、頻繁にロサンゼルスに行っていたんですね。そのとき、僕が“30年来のファン”と焦がれるトップアニメーター、グレン・キーンさん(『美女と野獣』の野獣のデザインを担当)にお会いできる機会があって。それだけでも感動なのに、彼の監督作品に参加していたジン・キムさんにも会うことができたんです。彼は近年のディズニーアニメのモダンなキャラクターを作り上げてきた人。ものすごく嬉しかったのを覚えています。それがご縁でベルのデザインをお願いしたら、引き受けてくださったんです」

こうして、模様のようなそばかすを付けた歌姫が誕生した。これまでディズニーの世界で様々なプリンセスを生み出してきたレジェンドとの仕事は、はたしてどんなものだったのか。

「とにかく、表現力に圧倒されました。シナリオを英訳して、ディスカッションをするところから始まったんですが、『アメリカ人としてはこう思う』『自分はこういう風に解釈しているんだけど間違ってないか?』と、すごく誠実に応えてくださって。インターネットの中心にいる存在ってどういう人だろうと一緒に考えながら、ベルという人物像が形作られていったんです。ベルの顔にそばかすをつけたのもジンさんなんですよ」

多くのクリエイターとの繋がりが映画を生む。

本作は、ジン・キムさん以外にも、国内外のクリエイターが多く参加している。衣装を担当したスタイリストの伊賀大介さんのアイデアで、ベルのドレスはパリコレにも参加するファッションブランド〈アンリアレイジ〉のデザイナー、森永邦彦さんと東京・代々木上原の「edenworks」を主宰するフラワーアーティストの篠崎恵美さんが手がけている。また、竜の城にベルが導かれていくファンタジックなシーンは、コンセプトアートをアイルランドの「カートゥーン・サルーン」が担当。アカデミー賞に5回もノミネートされた世界的なアニメーションスタジオだ。<U>のプロダクションデザインを担当したのは、ロンドン在住のイギリス人建築家・デザイナー、エリック・ウォンさん。その出会いは、なんとインターネットだったという。

「エリックさんがネットに上げていたグラフィックが素敵で、この人なら面白い<U>を設計してくれるんじゃないかと思って声をかけたんです。何者かわからなくても、ネットを通じて優れた才能に出会えたという点は、映画の内容ともリンクしますよね。誹謗中傷のような問題もありますけど、有名も無名もなく面白い人が発見できる場所として、インターネットの力は健在なんだなと実感しました」

すずを演じた中村佳穂さんや、すずの親友ヒロちゃんを演じた幾田りらさんとはオーディションで出会った。それもひとつの発見だったと細田さんは話す。

「演技経験がゼロだというのが信じられないくらい、二人とも素晴らしくて。声優はオーディションで決めるので、役にぴったりな声と出会うと『発見した!』という喜びがありますね。僕、引きが強くて、作品ごとに素晴らしい役者さんと巡り合っているんですよ」

様々な刺激を受け、映画は完成へ。何より奮闘してくれたのは、スタジオ地図のスタッフたちだ。今年で創設10周年。細田さんは足跡をこう振り返る。

細田守アニメーションワークス

スタジオが10年続く。それってすごく幸運なこと。

「映画というのは1本1本が別もので、そのすべてがヒットするわけではありません。いつも『この作品で会社が潰れても悔いはない!』と歯を食いしばり、生きるか死ぬかという思いで作ってきました。でも、こうして10年続くということは、僕たちの作品を形として残せるようになってきたのかなと。それってすごく幸運なことだなと思うんですよね。その幸せを噛み締めて、より面白い作品を作っていきたいですね」

インタビューも終盤に近づいた頃、監督という職業にはどんな能力が不可欠なのかと尋ねてみた。

「やっぱり、みんなで一緒に作品を作っていく能力ですね。映画はひとりでは作れませんから」

身近なスタッフとも、海外に住むレジェンド級のクリエイターとも、垣根なく繋がり、物語を編んでいく。インターネットが変容し広がり続けるように、細田さんの映画人生も拡張を続けている。

1.竜とそばかすの姫

細田守アニメーションワークス

エリック・ウォンさんが作り上げた仮想世界<U>の世界をプリント。巨大な<U>の内部にはレゴを組み合わせたような街が広がり、全世界50億人が生体情報をスキャンした分身<Az>(アズ)となって日常をおくっている。

細田守アニメーションワークス

竜の原型となったビジュアルをあしらったTシャツ。デザイナーへのお題は竜ではなく、あえて“野獣”としたところ、この魅力的なフォルムが出来上がった。体内に描かれたグラフィックが、竜の内面を現しているかのよう。

細田守アニメーションワークス

2.サマーウォーズ

細田守アニメーションワークス

劇中に登場する仮想世界<OZ>の格闘技チャンピオン、キング・カズマのイラストシャツ。「Challenger Wins!!」の文字入り。AIのラブマシーンと再戦した際の金髪姿で、髪型はプレイヤーである池沢佳主馬と酷似している。

細田守アニメーションワークス

「仮ケンジ」アバターを胸元に刺繍したポケットTシャツ。主人公・小磯健二が当初使っていた丸耳を付けた青年のアバターをラブマシーンに乗っ取られたため、友人が仮登録してくれたリスのアバターを使用。背中には健二が解く暗号が入る。

細田守アニメーションワークス

3.バケモノの子

細田守アニメーションワークス

舞台は渋谷とバケモノ界・渋天街。フロントには英題「The Boy and The Beast」をプリントし、背面には九太と熊徹の武術の稽古風景を、モノクロで時系列順に並べた。徐々に九太の身長が伸び、構えがどっしりと据わっていく様がわかる。

細田守アニメーションワークス

4.時をかける少女

細田守アニメーションワークス

2006年公開の、まさに少女が時をかけようとする本作を象徴するキービジュアルをプリント。タイムリープ能力を身に付けた主人公・紺野真琴が、階段を駆け上がってジャンプした瞬間。背後には細田作品に欠かせない入道雲が描かれている。

細田守アニメーションワークス

UTコレクションのバーチャルTシャツを無料配布

『竜とそばかすの姫』はインターネット上の仮想世界<U>を舞台に、誰でもアバターとして参加できます。ピクシブ株式会社が手掛ける、自身の3Dアバターをつくれるアプリ『VRoid Mobile』内で楽しめる、UTコレクションのバーチャルTシャツ(全6柄)を無料配布します。『VRoid Mobile』については公式サイトをご確認ください。
※本キャンペーンの詳細は後日『VRoid Mobile』の公式サイトにてお知らせします。

細田守アニメーションワークス

PROFILE

ほそだ・まもる|1967年、富山県生まれ。アニメーション映画監督。2011年にスタジオ地図を設立。5作品全作で日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受賞。『未来のミライ』(‘18年)では、米国アカデミー賞やゴールデングローブ賞にノミネート。

©2021 スタジオ地図 ©STUDIO CHIZU

※店舗ごとに在庫状況が異なりますので、予めご了承ください。
※UTの全ての商品ラインナップが揃う店舗は、「オンラインストア」と下記の「UTフルラインナップ店舗」です。
原宿店、ユニクロ TOKYO、ユニクロ PARK 横浜ベイサイド店、銀座店、ビックロ ユニクロ 新宿東口店、渋谷道玄坂店、御徒町店、池袋サンシャイン60通り店、世田谷千歳台店、吉祥寺店、札幌エスタ店、名古屋店、京都河原町店、心斎橋店、OSAKA店、あべのキューズモール店、イオンモール沖縄ライカム店