上出惠悟
2021.02.18

里山と人との暮らしを考える。Vol.1 − 九谷焼窯元六代目上出惠悟さんが描く、人と自然のつながり

上出惠悟

海外からも注目される、日本ならではの美しい里山にフォーカスした「里山 日本の原風景」コレクションが発売になる。デザインを手掛けたのは伝統ある九谷焼の窯元の六代目で、アーティストとしても活躍する上出惠悟さん。里山、そしてそこに住む動物たちへの思いについて聞いた。

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内なるものづくりに対する目覚め

石川県能美市を拠点とする、九谷焼窯元上出長右衛門窯の六代目として、またご自身も作家としてご活躍されている上出さんの主な活動内容を教えてください。

家業の経営が一番主だった仕事です。例えば、商品の企画、デザイン、職人との連携、そして出来上がった商品をどのように販売するか、プロモーションの企画をしたり、SNSでのライブ配信には自ら出演する、といったことも含めて様々な活動をしています。また上出瓷藝という会社を設立以降は、前述した内容も含め今はチームで行うことができています。上出瓷藝では長右衛門窯とは別に、九谷焼をベースに、器だけではない新しい視点の商品企画やデザイン制作、それから様々なブランドや企業とのコラボレーションなどを手掛けています。さらに個人としても作品を発表していて、定期的に個展を開催させてもらっています。

明治12年創業という非常に歴史のある窯元ですが、六代目としてどういった視点でクリエイティブディレクションをされているのでしょうか。

伝統工芸って古いものって思われがちですが、今を生きているものとしてありたいと思っています。伝統に固執するのではなく、かといって伝統から離れすぎないように心掛けています。磁器は中国から始まって日本に伝わりました。そういった歴史的な流れの上に僕たちの仕事があります。ただ、こだわりも大事ですが、なるべくしなやかに時代を受け入れていきたいと思っています。

上出惠悟

幼い頃からものづくりの現場を間近に見てこられた上出さんですが、ものづくりへの興味をご自覚されたのはいつごろですか?

もちろん幼い頃から家族や職人たちの仕事をすぐそばで見てきたことが大きいとは思いますが、振り返ってみると絵を描くことはずっと好きでしたね。記憶は曖昧ですが、小学校で初めて九谷焼で動物か恐竜のようなものを作った作品が県で表彰されて嬉しかったことは印象に残っています。

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上出長右衛門窯 湯呑 笛吹

上出惠悟

バナナをモチーフにした作品『甘蕉 房 色絵蜃気楼梅文』
Photo:Kenichi Yamaguchi

また幼少期には彫刻も学ばれていたそうですね。きっかけは何だったのでしょうか。

近くに仏師が住んでいて、子供好きだったその方が近所の子に彫刻を教えてくれていたんです。仏様や先生と向き合う姿勢、礼儀作法なども教わりながら、下手すると大怪我するような緊張感があるなかで、週に1度1〜2時間くらい仏像を彫るんです。彫刻を習い始めて最初に作った観音様を持って、当時入院していた曽祖母のお見舞いへ行ったのですが、随分感激して観音様を拝んでいた曽祖母の姿を思い出します。曽祖母が亡くなるまで病院の部屋に置かれていたその観音様を、僕は今でも大事にしています。思い起こせば、この経験や記憶は、ものを作るということの、ものを作るだけではない、それ以上の思いみたいなものを知るきっかけになったと今は考えています。

里山が教えてくれること

本コレクションのテーマに「里山」を選んだ経緯は?

僕の住んでいる場所には身近に里山があります。幼い頃は母がよく里山に山菜採りに連れて行ってくれました。先程言ったように絵を描いたりして過ごすのが好きで、すごく活発なわけではなかったのですが、山に行くとなぜか元気が出て夢中になって遊んでいましたね。今でも折にふれて行きたくなるし、そこで過ごす時間は自分にとってとても大切です。

それぞれの絵柄にストーリー性を感じます。特に熊は上出さんにとって大切な存在と聞きました。絵柄に込めた思いや、コレクションを通して伝えたいメッセージとは?

僕は熊がすきで、特別思い入れが強いですが、人間と自然の関係を表す象徴だと思っています。特に昨今は熊が人里に出没し、人と出会ってしまうことが増えています。こういった問題を考えていくときに、人と動物との大切な境界線でもある里山の在り方は重要な課題です。でもこのTシャツを手に取ってくださる方たちには重く受け取ってほしいわけではないんです。大きな問題はあるけれど、僕たちが生活している今も、山ではいろんな動物が暮らしていて、兄弟とじゃれあったり、母に甘えたりとか、植物が根を張ったり、花を咲かせたりしている。そして山と向き合う人の営みがある。そんなことに思いを馳せるきっかけになればと思うんです。たとえ里山から離れた都会で生活している人たちも、部屋の窓の外のずっと先につながっている自然をふと感じられる時間があればいいなと。

上出惠悟
上出惠悟
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上出さん撮影による里山の風景。

今回、プロモーション動画の制作でもその才能を発揮していただいていますが、構成や音楽などを含め、どんなこだわりが込められていますか?

熊のアニメーション動画に関しては、近頃は熊への風当たりが強いと感じていたので、優しい風を吹かせてあげたいという思いがありました。ただ、葉が揺れて風が吹いている情景を表現するのは想像以上に難しかったですね。今回1秒につき11枚くらい描きましたが、かなり時間がかかりました(笑)。音楽に関しては親交のある(サカナクションの山口一郎さん率いる、クリエイティブ企画・制作を行う)NFの青山(翔太郎)さんにお願いしました。僕の思いを細かく伝えたわけではないのですが、映像に合わせてイメージを膨らませる作業が楽しいコラボレーションだったと言ってくれました。熊にも優しい音楽をつけてくれたり、一つ一つの動画に合わせた音楽を作ってもらえて感激しましたね。きつねは数年前に山で出会ったことがあって、「あの子どうしているかな?」ってふと思うことがあるし、きじはすごく近所にいて、里とともに暮らしている動物なので、特に思い入れのあるこの3匹を動画で描きました。

九谷焼を通して、どんなことを伝え、表現していきたいですか?

自分自身にも見てくれている人にも、新鮮に感じてもらいたい。それがなくなっちゃうと伝統工芸って、ただの古いものになっちゃうと思うんです。残すことにも意義があるけれど、自分も周りの人も今を生きているのだから、保存していくというよりも、古いものからインスピレーションを得ながら、古びないよう常に鮮度を保っていきたいです。本コレクションでも同じように、昔話ではなく現在の風景と思ってもらえると嬉しいですね。古いものでも遠くにあるものでも、思いを馳せたり、想像したりすることで、自分たちを生かしていけたらと思います。

上出惠悟

PROFILE

上出惠悟|合同会社上出瓷藝(かみでしげい)、アーティスト。1981年石川県生まれ。2006年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。1879年(明治12)年創業の九谷焼窯元である上出長右衛門窯の後継者で、上出瓷藝代表。伝統や枠にとらわれない柔軟な発想で、伝統工芸である九谷焼を現代に伝える。

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