ニューヨーク近代美術館
2020.07.09

新生MoMAで体感!アートが語るストーリー。

ニューヨーク近代美術館

コンテンポラリー/ モダンアート界で最も影響力を持つ美術館のひとつである The Museum of Modern Art(MoMA)がリニューアルし、ますます注目を集めている。 増設だけでなく、近・現代美術を新しい視点で紹介するキュレーションも話題だが、 MoMAは一体どんな進化を遂げたのだろうか?

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新生MoMAがオープン。

ニューヨークのThe Museum of Modern Art(MoMA)が昨年10月にリニューアルオープンした。4000㎡ほどの新しいギャラリースペースが西側に追加され、その広さが30%も拡張した。それにより、MoMAが所蔵する全20万作品のうち今まで一度に平均1500作品しか見せられなかったものが約2500作品まで見せられるように。また半年に一度のペースで全展示室の30%が再インストールされていくというから、今までなかなか公に出る機会がなかった歴史的価値のあるMoMA所蔵作品をより多く観ることもできるようになった。しかし、変わったのはその施設の広さや展示規模だけではないと新生MoMAのオープニングを指揮したキュレーターのサラ・スズキさんは言う。

「今までは写真が見たければ3階へ、絵画は2階へといったように、ジャンルによって区切った見せ方をしていましたが、リニューアルに伴い、写真、絵画、彫刻、建築、デザインといったすべてのジャンルのアートを総括的に見られるようにし、そのすべてが集まったときに語られるストーリーを重視する見せ方に変わりました。年代順にはなっているものの、今まで語られてきた既成の“イズム”による構成ではなく、歴史の中で起こった様々な出来事を新たに切り取り直しています。例えば、特定の年代や場所が影響したアートを取り上げたり、ある時期に生まれた特定のアーティストたちの繋がりに焦点を当ててみたり。膨大なコレクションがあるので、ジャンルを超えた広い視点を実現することができるのです」

例えば、5階の「1920年代のパリ」をテーマにしたスペースでは、同時期に制作されたコンスタンティン・ブランクーシの彫刻の横にピカソの絵画が並び、ジャンルにとらわれない新鮮な視点でストーリーが語られている。

「アートの世界で起こっていることについての考え方はいくつもあり、ここにあるのも、その表現のひとつでしかありません。そして半年ごとに展示を入れ替え続けることで、継続して違った視点を持ち続けることもできるのです。コンテンポラリー/モダンアートがどのように発展してきたかということに対する考え方がひとつではないということを示すことで、世界中で同時多発的にいろいろなことが起こり、様々なストーリーがそこに存在するということを皆さんに理解してもらうことができると思います」

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インタビューに応えてくれたMoMAスタッフたち。左からロブ・ベーカーさん、ミッシェル・チャンさん、サラ・スズキさん、アンドリュー・ガードナーさん。全フロアにまたぐガラス張りで53丁目からの光が全面的に入ってくる階段も新しく増設された“新生MoMA”の建築の見どころのひとつ。ミニマルな美しさを放つ。

このMoMAの新たなキュレーションは、何をもってアートとするか、というアートそのものの概念をも揺さぶる。デザインともアートともカテゴライズしがたい作品に興味があるというキュレトリアルアシスタントのアンドリュー・ガードナーさんは、民芸へ興味を示しつつ、欧米と日本との芸術に対する概念の違いから受けた影響を語る。

「アメリカやヨーロッパとは違い、日本では器のような日用品の工芸をかねてから芸術の一部として捉えてきました。今、僕たちもそれを再考するようになり、5階では今まであまり光があたってこなかった1900年頃のジョージ・オーのセラミック作品がゴッホの『星月夜』と同じスペースに展示されています。この2つの作品は、ほぼ同じ頃に制作されていて、同時期に世界の異なる場所で二人のアーティストがそれぞれに新しい表現方法を試していたということを知ることができる面白い展示になっていると思います」

この他にも、女性アーティストやアフリカン・アメリカンのアーティスト、また日本やインドのアーティストなどを積極的に加えることにより、NYとパリを中心に語られ続けていたコンテンポラリー/モダンアートの文脈がよりオープンになっている点も見どころだ。1929年の設立当初から、当時は美術館に飾られることがなかった映像や建築をアートとみなし、絵画や彫刻とともに展示してきたMoMA。そのパイオニアの精神は今も脈々と受け継がれている。
新型コロナウィルスの影響でMoMAは現在閉館中だが、88,000点以上の作品をオンラインで楽しむことができる。再び開館される日を楽しみに待ちたい。

MoMA所蔵コレクションがTシャツに!

そんなMoMAとは、2013年より「Art for All」(みんなのためのアート)をスローガンにしたパートナーシップを結んでいる。誰もが広くアートと触れ合えることを目的に据え、金曜日の17時半~ 21時までの入館料が無料になる「UNIQLO Free Friday Nights」を毎週開催するとともに、MoMAの所蔵コレクション作品をUTのデザインに落とし込み、アートを日常で身につけることができるコラボTシャツも手掛けている。

そのMoMA×UTの今回のテーマは“Text Messages”。ジェニー・ホルツァー、リクリット・ティーラワニット、ロバート・インディアナという言語を使った作品が特徴的なアーティスト3人を迎え、その作品をユニクロデザインチームが解釈しデザインしたコラボTシャツが新たに誕生した。MoMAのリテールマネージャーを務めるミッシェル・チャンさんは、5年前であれば実現しなかったであろうこの“文字”というテーマが今こうやって取り上げられていることに、時代の反映を感じるという。旬のテーマを身に纏い、いざ街に繰り出そう。

テキスト メッセージ

“Text Messages”をテーマに、アーティストのロバート・インディアナたちの言語を使った作品がTシャツに。

© 2020 Morgan Art Foundation Ltd / Artists Rights Society (ARS), NY Project: 2020 by The Museum of Modern Art