Devon Turnbull
2020.05.28

みんなUTを着て自由に生きている Vol.3

Devon Turnbull

デボン・ターンブルさんは、カスタムオーディオメーカーであり、グラフィックや洋服のデザイン、DJなど、マルチな活動を行うクリエーターだ。NYを拠点とする彼が選んだのはアンディ・ウォーホルのUTだ。

活動も拠点も自由自在。

彼の職業を簡単に説明するのは難しい。カスタムオーディオメーカー、デボン・オジャス(Devon Ojas)としても知られ、エースホテルやシュプリームの店舗をはじめ、カフェやレストランなどの世界中の音響システムを手掛けており、前述の活動も精力的に行っている。活動の拠点も縦横無尽だ。NYで生まれた後、中西部やシアトルへ移住し、1999年に拠点をNYに戻した後もフランスやモロッコ、ドイツなどへ太陽電力や温水加熱システムと自家製音響付きのキャンピングカーで世界中を旅している(彼の冒険記は@ontheroadhomeで見ることができる)。

そんな彼の活動の原点は、NYでオーディオエンジニアリングを学ぶ学生で、アヴァンギャルドヒップホップのヒップホップユニット「アンチポップ・コンソーティウム」に憧れていた頃に遡る。「当時、彼らは僕のヒーローで、いつか一緒に音楽的な仕事ができればと夢見ていたんだ。その一方で、手縫いの刺繍がついたTシャツも自作していて、ストリートブランドのAlifeでそれを取り扱い始めてくれてもいた。そんなある日、“『アンチポップ・コンソーティウム』のビーンズが君の作ったものを気に入っていて、今晩のライブのためにいくつか君のアイテムを貸してほしいと言ってるよ”とショップのスタッフから連絡があったんだ。とても驚いたし、こういう繋がり方もできるのかって気づいた瞬間でもあったね」

Devon Turnbull

ブルックリンのクリントンヒルにある自宅。地下は作業場になっている。
リビングに置かれた2A3チューブアンプ。

オーディオメーカーへと導いたものとは。

以来、ノムデゲールというブランド/ショップのファウンダーのひとりにもなるなど、ファッション業界での活躍が目立っていたデボンさんだが、その間もオーディオ、特にHi-Fi機器への興味は薄れることなく、ステレオシステムをすべて一から自分で作り上げることに情熱を燃やしていたという。

「それを最初に伝えたのが、シアトル時代からの知り合いで、ずっと僕のよき理解者だったエースホテル創始者のアレックス・カルダーウッドだった。そして最初の音響製作の仕事をくれたのも彼だったんだ。ちなみにそもそもシアトルへ行くことになったのは高校時代に真剣に取り組んでいたスノーボードがきっかけだったんだけど、当時のスノーボード仲間のひとりが後にサタデーズ ニューヨークシティを作ることとなったジョッシュ・ローゼンで、彼らの店のスピーカーも後に作るようにもなった。こんな風に色々と異業種なことをしていたことが、すべて繋がっていく。宇宙の働きってのは不思議なものだよね!僕の職業を一言で説明するのは難しいけれど、デザインとともにこの音響製作も僕の仕事の主軸のひとつだよ」。

そんな彼が影響を受けたカルチャーのひとつは、日本の音響文化。「日本にはメンターと呼べる技術者がいて、福島県の磐梯山の麓まで行って学んだこともあるよ。今製作中のチューブアンプも彼との共同製作で、一部日本製だよ。あと、もちろんNYという街そのものも僕に強く影響している。特にダウンタウンのクリエイティブなシーンからは影響を強く受けているし、多様性に満ちたこの街は僕を確実に形作った場所だ。世界には様々なカルチャーがあるけれど、自分とはまったく違う文化の人々と交流することがとても大事だと思う。僕が続けているキャンプや旅の醍醐味はまさにそれ。例えばモロッコのサハラ砂漠で出会った人たちは僕の暮らしとは全く違った。そういった違うライフスタイルや異文化と触れ合うとき、自分のコンフォートゾーンから離れて、とても人間的レベルで人と交流することになる。特にSNSの影響で趣味嗜好が似通った人と集いがちな今の時代にとても大事なことだと思うね」

Devon Turnbull

ブルックリンに去年オープンしたばかりのカフェ・バー兼音楽施設の『Public Record』にはデボンさんが手掛けたHi-Fiシステムが全面的に設置されている。「自分で作った音響を通して好きな音楽を聴くときが一番楽しいね。自分の手仕事が音の聴こえ方に影響するから、音響づくりは僕が音楽的ヒーローたちと一番密接に共演できる夢のような機会なんだ」

©/®/™ The Andy Warhol Foundation for the Visual Arts, Inc.

PROFILE

デボン・ターンブル|NY生まれ。ブルックリンの自宅地下とネイビーヤードのスタジオを拠点に音響システムの製作を手掛け、世界中にクライアントを持つカスタムオーディオメーカー。アパレルブランド/ストアを持っていたこともあり、ユニクロがまだアメリカに進出する前には日本でユニクロを買い付けていたことも。Instagram@devonojas