100とは

デニムシャツ(長袖)

デニムシャツ(長袖)

おいしいポトフとか

僕とアシャはコーヒースタンドのカウンターに並んで座り、この五年間、互いにどんなふうに日々を過ごしてきたかを、とつとつと語り合った。

「一番大変だったのは……」とアシャが語ったのは、五年間、ずっと一緒に暮らした二人のルームメイトとの食にまつわるトラブルだった。

「一人はインド人の22歳の女性で、もう一人は中国人の21歳の女性だったのよ。それぞれの国の価値観が違うから、もうほんとに日常の些細なことで衝突してばかり。私たちは交代で夕食の自炊をしていたんだけど、インドの子はカレーばかり作りたがる。中国の子は味の濃い料理ばかり。私はスープを作ることが多いんだけど、みんなが食べられるものを作ろうよ、と決めていても、結局、自分が食べたいものばかりを作るから、それぞれが文句を言っては険悪になるのよね。もうずっとそんな状態が続いて、夕食の時間が憂鬱で仕方なかったのよ」

「それでどうやって、その険悪な関係を解決していったの?」

「途中からは、もう、みんなまいってしまって。だって本来、食事はおいしく味わうものでしょ。それが損なわれるのはほんときついの。毎日だから。で、三人で話し合ったの、どうしたら一番よいかと」

「うん、それで?」

「せっかくパリにいるんだから、自分の国の料理ではなくて、フランス料理を作るようにしようと決めたの。そうすれば、誰かが良くて誰かが我慢するとかとなくて平等でしょ。どうしても自分の国の料理が食べたい時は、外食するか、同じ国の友だちの家で食べるようにしようとね」

「わあ、それはいいアイデアだね。フランス料理の勉強にもなるし、毎日の夕飯が楽しみになるね」

「うん、そう。でね、中国の子が作るポトフ。ポトフってわかる。大きく切った野菜を茹でて作るシンプルな煮物なんだけど、それがめちゃくちゃおいしいの! 私とインドの子が食べた途端に『おいしい!』と褒めたもんだから、中国の子は喜んじゃって、それから彼女の作るポトフは進化して、どんどんおいしくなったのよ」

おいしいポトフとか ストーリーイメージ

「へー。それはすごいことだね。アシャはどんなフランス料理を作ったの?」

「私もみんなに『おいしい!』って言われたくて、牛肉の赤ワイン煮をがんばって作ったわ。アパートの近所にあるレストランのシェフに教わった料理よ。牛すじ肉をコトコト一時間かけて下茹でして、マッシュポテトと合わせてグラタンみたいにオーブンで仕上げるんだけど、ほんとにおいしいの!」

「みんなの感想は?」

「大絶賛してくれたわ。それまで誰も『おいしい!』なんて言ってくれなかったのに、喜ばれるともっとおいしく作ろうという気持ちになるのよ」

アシャは、パリで覚えたフランス料理の名を次々と挙げて、その料理のひとつひとつが、いかにみんなに喜ばれて、それまで険悪だった三人の関係がいかに良くなったかを夢中になって僕に話した。

「料理のちからってほんとにすごいわ」

アシャはチョコレートドーナツをぽんと口に放り込んで言った。

デニムシャツ(長袖)

生まれ変わったシャツ

今シーズンから素材とデザインを一新したデニムシャツです。100パーセントコットンのデニム生地は、従来の5.5オンスから6.5オンスの厚手素材に見直し。1年を通して着用できるデニムシャツを目指して、0.5オンスずつサンプルを制作し検証した自慢の生地です。糸の奥まで浸透して奥行きある色味を生み出すロープ染色でデニムらしさをしっかりと表現しました。

色落ちのバランスは、ユニクロが誇るロサンゼルスのジーンズ研究開発施設「ジーンズイノベーションセンター」で開発した加工感を忠実に再現。本物の風格漂うアイテムに仕上げました。

デニムシャツ(長袖)
デニムシャツ(長袖)

色落ちのバランスは、ユニクロが誇るロサンゼルスのジーンズ研究開発施設「ジーンズイノベーションセンター」で開発した加工感を忠実に再現。本物の風格漂うアイテムに仕上げました。

デニムシャツ(長袖)

ほんとうのおしゃれ

パリを離れる頃、そんなルームメイトの二人は、アシャにとって親友のような存在になっていた。

「インドの子はね。キッシュの名人よ。少しだけカレーを入れるんだけど、それがまたほんとにおいしいの!いろいろと具材を変えて焼いてくれるんだけど、あまりにおいしいから食通のフランス人の友だちに食べさせたら、こんなにおいしいキッシュを食べたことない!って驚いて、そのおいしさはすぐに友だち関係に広まったの。で、あるカフェから注文を取るようになって、私がパリを離れる頃には、彼女の焼くキッシュはパリ中で有名になって、今やキッシュ専門店をオープンさせて大成功してるのよ。ね、すごくない?」

「すごいね。だって、彼女はキッシュをパリではじめて作ったんでしょ」

「うん、そう。私たちとのトラブルがなければ彼女の成功はなかったのよ!」

「やっぱり、トラブルとか問題というのは、あきらめてそのままにしないで、前向きにとらえて解決することで、新しい発見というか、彼女の場合は、予期せぬ大成功を招いたんだね。それすごいなー」

「ほんとそうね」

「アシャの牛すじ肉の赤ワイン煮も、ポトフも、キッシュも、全部食べたいな。ほんとにおいしんだろうなー」

僕がそう言うと、アシャは顔をくしゃくしゃにして喜んだ。

「話し変わるけど、今日あなたが着ているシャツ。とても似合っているわ。すてきよ」

アシャは突然、僕のシャツの襟を指で触れながら言った。

僕が着ていたのは、気に入って長年着込んだデニムシャツだった。

「このシャツは、アシャがパリに行く前に、一緒に買った服だよ。覚えてない?いつしかこんなふうに色落ちして、クタクタだけど、着るほどに着心地がよくなって、もはや手離せない服のひとつ」

「思い出したわ!イーストヴィレッジの店で買ったシャツね。あのシャツがこんなにいい感じになったのね。やっぱり服って、着続けてこそ、その人の身体の一部になっていくのよね」

ほんとうのおしゃれ ストーリーイメージ

パリのほんとうのおしゃれな人とは、そうやって自分の好きな服を着続けることで、誰とも重ならない自分らしい着こなしを身に着け、人生をとびきり楽しんでいる人だと言った。

「おしゃれとは、人生を楽しむこと……」と僕がつぶやくと、「うん、そう。着飾ることだけではないのよ」とアシャは言った。

デニムシャツ(長袖)

こだわりを凝縮

クリーンですっきりしたスリムシルエットは、昨今のトレンドを踏襲してゆったりとした着こなしに対応できるフィットに変更。肩、胸周りにゆとりあるほどよいリラックスシルエットが特徴です。

襟裏には赤ミミと言われるテープ使い、裾をガゼット仕様にするなどヴィンテージに見られるディテールを搭載。カジュアルな中にも上質さやモード感ある少し小ぶりの襟はボタンダウンのありそうでなかったデザイン。ゆったりシルエットのボトムスやスラックスできれい目に、ワントーンコーデで遊び心を。幅広い着こなしに対応する新しい定番です。

デニムシャツ(長袖)
デニムシャツ(長袖)

襟裏には赤ミミと言われるテープ使い、裾をガゼット仕様にするなどヴィンテージに見られるディテールを搭載。カジュアルな中にも上質さやモード感ある少し小ぶりの襟はボタンダウンのありそうでなかったデザイン。ゆったりシルエットのボトムスやスラックスできれい目に、ワントーンコーデで遊び心を。幅広い着こなしに対応する新しい定番です。

人生を楽しむ。
そのためのシャツって、
こんなシャツかも。

松浦弥太郎
デニムシャツ(長袖)
081 MENデニムシャツ
(長袖・
2019年春夏モデル)
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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