100とは

エクストラファインコットンシャツ

エクストラファインコットンシャツ

ペギーとの出会い

高額で取引される希少本「Ballet」は、卓越したレイアウトデザインで、黄金期と呼ばれた50年代の「ハーパースバザー」を率いたアートディレクター、アレクセイ・ブロドヴィッチの写真集だが、実は共著者がいることはあまり知られていない。演劇評論家のエドウィン・デンビーである。

その当時、「Ballet」という写真集がどんなふうに作られたのか。そこにはどんなエピソードがあるのか。それを知りたいがために、僕はエドウィン・デンビーの消息を調べた。すると、メイン州のシアーズモントという田舎に暮らしていることがわかった。

そしてまた、僕とジャックがよく行く18丁目の古書店の店主が言うには、エドウィン・デンビーの元アシスタントの女性が店によく来ると言う。シアーズモントを訪ねる準備をしつつ、僕らはその女性に会うチャンスも待っていた。

すると、ある日、件の古書店の店主から、その女性を紹介してくれると連絡があった。

「ここニューヨークでは、古書店同士、またはブックハンター同士というのは、こんなふうに常に助け合いで生きている。口約束でも結構頼りになるんだ」とジャックは言った。

店主がお膳立てしてくれた日、僕とジャックは古書店へと向かった。その前に、ジャックは花屋で小さな花束を買った。

「はじめて会う人には、上等なシャツを着て、花を持っていく。そうすると、たいていのことはうまくいく。きちんとしたシャツを着た人から花をもらったら誰だって嬉しいからね。ま、ジンクスみたいなもんだ」とジャックは言った。

「きれいなシャツと花束」僕もこのすてきなジンクスをそれからずっと守るようになった。

ペギーとの出会い ストーリーイメージ

約束の時間ぴったりに古書店に着くと、女性はすでに到着していて僕らを待っていた。ジャックが自己紹介しながら、「僕ら二人からです。今日は時間を作ってくれてありがとう」と言いながら、花束を渡すと、彼女は頬に手を当てて、満面の笑顔で喜んだ。

彼女は、自分の名前をマーガレットと言い、ペギーと呼んでと言った。年齢は六十代後半。そばかすがキュートな気さくな女性だった。

僕らは「Ballet」という古い写真集について調べていて、エドウィン・デンビー氏の存在を知り、当時の話を聞くために、ぜひシアーズモントを訪ねたいと思っていると彼女に話した。

「事情はわかったわ。できるだけ協力したいけれど、彼は今、体調を崩していると聞いたから、人と会うのはむつかしいようね……」

そして、「その『Ballet』って小さくて正方形に近いかたちの薄い本? もしかしたら、私の家にあるかも……」とペギーは言った。

どうやら以前、ニューヨークに仕事場を持っていた本人から預かっている荷物の中に、「Ballet」が何冊かあったようだと言うのだ。

ジャックは僕のお尻を何度も手で叩き、隠しきれない喜びを表した。

「もしよかったら、私の家に来て、その荷物を開けてみない? そんな写真集なら私も見てみたい」とペギーは言った。

エクストラファインコットンシャツ

進化する定番

着まわしやすいシンプルなデザインを最高な素材で。ユニクロが考える究極のベーシックシャツです。エクストラファインコットンは、しなやかなハリと柔らかな風合いをあわせ持つオリジナル生地。繊維が長く、上質素材として知られる超長綿を高密度に織り上げ、さらに微起毛加工することで完成しました。

アームホールは腕の動かしやすさを考慮した立体的なつくりに変更、生地のドレープや体のラインがスマートに見えるように身頃をすっきりとデザインしました。

エクストラファインコットンシャツ
エクストラファインコットンシャツ

アームホールは腕の動かしやすさを考慮した立体的なつくりに変更、生地のドレープや体のラインがスマートに見えるように身頃をすっきりとデザインしました。

エクストラファインコットンシャツ

きれいなシャツと花束

ペギーの家は、イーストヴィレッジの格式高いアパートの三階だった。築年数を聞くと100年だと言う。ペギーの仕事は、インテリアデザイナーで、主にニューヨークのレストランやカフェの内装を手がけているらしい。

窓が大きく、天井が高く、広々とした部屋には、古い北欧デザインの椅子やソファ、家具で統一されていて、とても洗練されていた。

「彼の荷物はここにあるの。ちょっと手伝ってもらっていいかしら」と言って、ペギーは納戸のような小さな部屋の扉を開けた。

そこにはダンボールに入った荷物が整然と積み重なって置かれていた。「『BOOKS』とペンで書かれた箱をここから出してみましょう」とペギーは言った。

「BOOKS」と書かれた箱は、十数個あった。僕らはそのひとつひとつをていねいにリビングに運び出し、「Ballet」を手分けして探す作業に入った。

箱を開けると、その中は、ほとんどがバレエやダンス、演劇のパンフレットばかりだった。

「これらすべて、彼が観てきた舞台芸術の軌跡なのね……」とペギーは言った。

「ここにあるのは四十年代から六十年代の様々な舞台芸術のパンフレットだけど、この時代のパンフレットは、ただのパンフレットではなく、当時のアーティストの手による、アートブックの域に達するものばかりなんだ。見てごらん、これはコクトーのイラストがリトグラフで刷られている。これはファッションイラストの巨匠クリスチャン・ベラールだし、これも画家のヴェルテスだし、これはマチスの絵だ。もしこれらを売ったら、大変な額になりそうだ……」ジャックは興奮しながら僕らに話した。

確かに、これらはパンフレットとは言え、紙質から印刷、デザインまでが、単なる印刷物ではなく、アーティストによる作品ポートフォリオのようだった。

ジャックいわく、コレクターが見たら、引っくり返って驚くお宝ばかりらしい。

「ねえ、これじゃないかしら……」とペギーは、ある箱を開けて言った。

僕とジャックは手を止めて、ペギーが手にした箱のところに転がるようにして移った。

箱の中を見ると、固い紙のブックケースに収まった、小さくて薄い写真集が、びっしりと詰まっていた。その冊数は、おそらく三十冊くらいだろう。

きれいなシャツと花束 ストーリーイメージ

ジャックが、中からそっと一冊を取り出すと、ブックケースには大きく「Ballet」とタイトルが印刷されていた。

「すごい……。これ全部『Ballet』だ。しかも新刊の状態のまま保管されている…」呆然としたジャックは、声にならないような声で言った。

ペギーがその箱の中にあった一通の封筒から便箋を出して開いた。

「これ、そのブロドヴィッチという人から彼にあてた手紙だわ。この写真集の刊行に協力してくれてありがとう、という内容ね…。あ、白黒のピンぼけ写真が何枚か入ってるわ」とペギーは言った。その写真は、写真集の原稿になったブロドヴィッチによるオリジナルプリントであることに違いなかった。

「シャツと花束」のジンクスは確かだった。

「だめだ……。こんなことってあるのか。見なかったことにしたい……」と、ジャックは言って立ち上がり、その場を離れ、窓辺へと歩いた。

エクストラファインコットンシャツ

オン・オフを支える

シャツの顔である襟は、ビジネスにもカジュアルにも対応できるボタンダウン仕様。襟を少し小さめにすることで、ネクタイなしでもきれいな首元の表情を演出します。さらに壊れにくい本貝調のプラスティック素材のボタンや、パスポートやIDも入る大きさのポケットなど実用性と機能性も兼備。

今季もストライプやチェック、無地の定番を豊富に揃え、またパターンをトレンドの小柄にするなどアップデートを加えました。さまざまな装いやシーンに合わせて選べるワードローブの強い味方です。

エクストラファインコットンシャツ

今季もストライプやチェック、無地の定番を豊富に揃え、またパターンをトレンドの小柄にするなどアップデートを加えました。さまざまな装いやシーンに合わせて選べるワードローブの強い味方です。

シャツに鼻を近づけて、
朝のいい香りがする、と言って、
彼女は微笑んだ。

松浦弥太郎
エクストラファインコットンシャツ
030 MENエクストラファインコットンブロード
チェックシャツ(長袖)
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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