100とは

スーパーノンアイロンシャツ

スーパーノンアイロンシャツ

いいシャツを着て

ニューヨークで暮らす人々を見ていて、すてきだなと感じるファッションのひとつに、シャツの着こなしがある。

カリフォルニアでは、洗いざらしの少し大きめのシャツを、ジャケットのようにはおって、裾はパンツの外に出し、靴はスニーカーというスタイルの人が多かった。

ニューヨークでは、きれいにアイロンをかけた、自分の身体に合ったサイズのシャツを、パンツにタックインしている人が多い。上半身はきちんとしながらも、下半身はデニムといったカジュアルで、しかも、靴はスニーカーではなく革靴というのが、いかにもニューヨーカーらしく洗練されていた。

全身をあえて上品ずくめにしないセンスとでも言おうか、パンツだけをカジュアルに着崩すことで、都会的な豊かさを醸し出している。さらに言うならば、小物使いとして、バックルが小ぶりで上質なベルトをしているのもすてきだった。

それまでは、カリフォルニア的な着こなしと、ニューヨーク的な着こなしが、ちぐはぐだった僕であったが、ニューヨークで過ごすことで、少しずつだが、そんなニューヨークスタイルがわかって身についてきた。

7000ドルの希少本をリクエストしてくれた、アートブックコレクターのケンから、ランチを一緒にどうかと誘われた時のことだ。僕はいかにもニューヨーカーらしくあるように、アイロンをかけたワイドスプレッドカラーの白いシャツを着て、色の落ちたデニムにUチップの革靴を履いて出かけた。もちろん、ベルトと靴の色を揃えることも忘れなかった。(時計のベルトまで色を揃えられたら完璧だったが、今回は叶わず)

僕らは、グリニッジビレッジの「CORNER BISTORO」という老舗のバーで待ち合わせをした。ここはバーでありながら、昔ながらのおいしいハンバーガーが有名で、ケンの馴染みの店だという。

店に着くと、すでにケンは席に着いて僕を待っていた。(せっかちなのもニューヨーカーなのかもしれない)

この日のケンは、全身、真っ白な服を着て、黄色いカーディガンを肩からかけていた。昔ながらのアメリカの食堂的な店内に、窓からきれいな陽射しが差し込み、そこに佇むケンとその風景は、画家エドワード・ホッパーの絵のようだった。

いいシャツを着て ストーリーイメージ

「とってもエドワード・ホッパーの絵のようですね」と、挨拶代わりに言うと、ケンは肩を浮かせて、「やあ、調子はどうだい?」と言った。

僕らは揃ってハンバーガーを注文し、お互いの近況を話し合った。ファッションの仕事をしているケンは仕事が忙しくて、最近は、古書店巡りができていないと愚痴をこぼした。

「そういえば、ブロドヴィッチの『Ballet』は見つかりそうかい?」とケンは言った。

「なかなか、むつかしいですね……。来月ある人に会いに行きますが、そこに良いニュースがあればと願ってます」

「そうか…なるほど……。最近、他に何かいい本を見つけたかい?」

僕は言うか言わぬか迷ったが、「少し前に、ウォーホルの『A GOLD BOOK』を見つけましたよ」と話した。

ケンはハンバーガーを持った手を止めて、「なんだって?『A GOLD BOOK』持っているのかい?」と聞いた。

「はい。持ってます。コンディションはとてもいいです」と僕は答えた。

スーパーノンアイロンシャツ

「ノンアイロン」の追求

洗濯してもシワになりにくい、極限まで手入れの手間をなくした最高のビジネスシャツが完成しました。最大のテーマは、綿100%の自然な風合いをそこなわずに形態安定効果をシャツに与えること。

素材は高級シャツに採用される「80番双糸」を、より細やかに織り上げたピンオックス生地。その生地に対して「ディッピング加工」という特殊なコーティング技術を施し、さらに、襟や袖など各パーツごとにアイロン加工を。更に、洗い、ベイキング、低温処理という度重なる工程を重ね、通常のシャツよりも厳密な管理と膨大な時間と手間がかかっています。この工程に「ノンアイロン」の秘密があります。

スーパーノンアイロンシャツ
スーパーノンアイロンシャツ

素材は高級シャツに採用される「80番双糸」を、より細やかに織り上げたピンオックス生地。その生地に対して「ディッピング加工」という特殊なコーティング技術を施し、さらに、襟や袖など各パーツごとにアイロン加工を。更に、洗い、ベイキング、低温処理という度重なる工程を重ね、通常のシャツよりも厳密な管理と膨大な時間と手間がかかっています。この工程に「ノンアイロン」の秘密があります。

スーパーノンアイロンシャツ

本の査定を

「それは売り物かい?それとも君のコレクションかい?」

ケンはハンバーガーを皿に置き、コカコーラを一口飲んで、紙ナプキンで口を拭いてからこう言った。

「はい。売り物です」

「コンディションを見てみたいな」

「いつでもお見せしますよ。よかったら今日にでも」と僕は答えた。

「オーケー。その『A GOLD BOOK』がコンディションの良いものであるとしよう。君はいくらで売ろうと考えているんだい?」

「あ、ひとつ言い忘れてました。僕の『A GOLD BOOK』には、ある人の献呈署名が入っているんです」

「まさか、ウォーホル本人ではないだろうな。それだったら大変なことだ」とケンは言った。

「違います。実はブロドヴィッチが、当時付き合っていた女性に向けた献呈署名なんです」

「『A GOLD BOOK』は、ウォーホルによる手製本だ。それを若かりし頃のウォーホル本人が、ブロドヴィッチに手渡し、それをブロドヴィッチが当時付き合っていた女性にプレゼントしたってことかい? その本を君が持っているってことか……。ブロドヴィッチの家は、火事に何度も見舞われて、所蔵していた希少な本のほとんどが焼けて残っていないんだ。なんてこった…」

本の査定を ストーリーイメージ

ケンは、両手で髪の毛をかきむしって、何度もためいきをついた。そして、冷静さを取り戻しながら、こう言った。

「その本のことを、誰か他の人に話したかい?」

「ジャックは知ってますよ。見つけた時に一緒にいましたから。他は誰も知らないはずです」と僕は答えた。

「オーケー。オーケー。で、それを君は幾らで売ろうとしているんだい」とケンは小さな声で言った。

ケンが、取引交渉に入ってきたのがわかったので、「適正に評価された金額で売ろうと思っています」と答えた。

ケンはしばらく黙って、うなずきながら考えに耽ってからこう言った。

「それなら、まずは信用のおけるオークション会社に査定をしてもらうのがいいだろう。私が懇意にしている人物がいるから、彼にお願いしよう。通常なら、査定にお金がかかるけれど、私が頼めば、証明書は発行されないが、無料で行ってくれる。そうしよう。それが一番いい」

僕は、自分の「A GOLD BOOK」が果たしてどんな評価額になるのか知りたかったし、本の査定という経験も勉強になると思ったので、ケンの提案を受け入れた。

ケンは、午後の仕事をすべてキャンセルして、僕のアパートまで行き、そこで本を受け取り、そのまま査定に出したいと言った。

僕らはグリニッジビレッジからアップタウンウエストのアパートまでタクシーで移動した。ケンにはアパートのロビーで待ってもらった。

ウォーホルの「A GOLD BOOK」を手渡すと、ケンは「なんてきれいなんだ…こんな状態のものは見たことがない…」と声を詰まらせ、献呈署名のページを見て「ブロドヴィッチのサインに違いない…」と言った。

「夜には査定が終わるだろうから、わかったらすぐに電話する」と言い、ケンは「A GOLD BOOK」を大事そうにバッグに入れて、タクシーに乗って去っていった。

スーパーノンアイロンシャツ

究極のビジネスシャツ

ネクタイに一番合うデザインを追求し、台襟の高さと襟先の形を、よりよく整えました。襟はボタンダウンとセミワイドの二種類。腕の動きやすさを考慮し、カーブの角度を計算したアームホールと、シワになりやすい脇部分をテープで補強。着用時のバランスと実用性を兼ねたポケットは、IDカードやパスポートが入る大きさに。

身頃をすっきりさせ、ピンオックス生地が持つ光沢としなやかなドレープが現れるシルエットに設計しました。日々のビジネスシーンはもちろん、きちんとしたシャツを着用するシーンにも活躍することを約束します。

スーパーノンアイロンシャツ
スーパーノンアイロンシャツ

身頃をすっきりさせ、ピンオックス生地が持つ光沢としなやかなドレープが現れるシルエットに設計しました。日々のビジネスシーンはもちろん、きちんとしたシャツを着用するシーンにも活躍することを約束します。

このシャツを着ると、
人に会いに行きたくなる。
自信が湧いて、
自分を見てもらいたくなる。

松浦弥太郎
スーパーノンアイロンシャツ
028 MENファインクロススーパーノンアイロン
シャツ(長袖)
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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