100とは

ウルトラライトダウンコンパクトジャケット

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優先順位をつける

何か自分が一歩踏み出そうとする時、僕はいつも、サンフランシスコからニューヨークへ向かう飛行機の機内で出会った、日本人の紳士との会話を思い出す。

「成功するにはどうしたらいいのでしょうか?」

とてもすてきな大人の男性として見えたその人に、その時、これからどうしたらよいかわからない気持ちでいっぱいだった僕は、失礼を承知で、思いつくままにあれこれと訊いたのだった。

「成功の定義は人それぞれでしょう。私が思うに、成功というよりも、何かをやり遂げるという言葉のほうがしっくりくるのではないかな。とはいえ、やり遂げるというのは容易ではなく、実際はやり遂げることはないんだ。やり遂げようという気持ちで、やり続けるというのが本当の価値ではないかな。やり続ける途中で、何かしらの成果が出るだろう。では、その成果が成功を意味するのかというと、そうではないと私は思う。まあ、終わらずに、やり続けていく、やり続けられる状態を保ちながら、スケールさせていくというのが成功に代わる言葉ではないかな」

僕はその人の話す言葉をひとつひとつメモをとって、できるだけ正確に理解しようと努めた。

「けれども、君の質問はとてもおもしろいね。その質問をいろいろな人にしてみるといいよ。そして、自分も仕事なり生活をしながら経験を積み、どの人の言葉が最も共感できるか。そうやって、自分もこのことについて考えてみて、君なりの答えを見つけるといい」

その人はこんなふうに僕にていねいに説明してくれた。

「これも何かの縁だろうから、僕が今、とても大切なことだと思って、自分自身が学ぶように考えていることがあるから、それを君に話そう」

その人はそう言って、自分のバッグからノートを取り出し、ノートの余白にペンで「優先順位」と書いた。

優先順位をつける ストーリーイメージ

「何をするにも、何か起きたときでも、どんな時でも、いつも考えるべきことは優先順位なんだ。いつも正しい優先順位をつけられるのかどうか。今、何をするべきなのか、もしくは、今、何を学ぶべきなのか、今、何を知るべきなのか、今、誰と会うべきなのか。今、どこにいくべきなのか、などなど。やりたいこと、やるべきことというのは、たくさんあるけれど、そのリストアップをして、正しい優先順位をつけられるのかどうか。これはすべての基本ではないかなと私は思う」

「リストアップと優先順位ですか……」

「ああ、そうだ。今、この瞬間も、君は何をするべきなのか。その優先順位は無意識にしているはずなんだ。機内で眠って、身体を休めるのか。本を読んで何かを学ぶのか。明日の予定を考えるのか、などね」

その人は、紙コップに入ったコーヒーを一口飲んで、「その優先順位によって、人の人生は左右するんじゃないかな……」と言った。

ウルトラライトダウンコンパクトジャケット

究極のインナーダウン

お客様から強いご支持をいただいて、2017年秋冬からユニクロ全店舗での展開が決まりました。腰回りのつくりを見直し細身でスッキリとしたシルエットに、かつ動きやすさを考慮しパターンを再設計。フロントやポケットは、ステッチが表からは見えない縫製仕様「裏コバ」を用いることでより洗練されたデザインへ。

左脇内側にはループを取り付け、収納袋を吊り下げられる仕様に。昼夜の寒暖差があるとき、アウトドアに、旅先に。いつでも着られて小さく収納。インナーダウンとしての性能を追求しました。

ウルトラライトダウンコンパクトジャケット
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左脇内側にはループを取り付け、収納袋を吊り下げられる仕様に。昼夜の寒暖差があるとき、アウトドアに、旅先に。いつでも着られて小さく収納。インナーダウンとしての性能を追求しました。

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軽快なダウン

「優先順位をつけるって簡単そうでむつかしいんだ。とにかくまずは、自分がするべきこと、大切にしたいこと、学びたいことなど、どんなことでも書き出すことだよね。そのリストアップをして、その順番をよく考える。しかしだ、大事なのは、その順番は常に変わるってことなんだ。いや、その順番を常に疑わなくてはいけないってこと。当然ながら、状況は変化するからね」

「そして、肝に命じるべきことは、優先順位とは、何かを捨てるということでもある。それができるかどうか。なかなかむつかしいよね」とも言った。

「何をやって、何をやらないのか。それをしっかり考えることですね」と僕は言った。

「そうだ。だから、優先順位は、いつも変化するべきものなんだ。固定するべきじゃないってことさ。常に疑い、常に更新するべきこと。すなわち、今、その瞬間に、何を最優先にするべきなのかを、リストの順位の中から、瞬時に選び取って的確に判断するということだね」

「そう、やるべきことは、瞬間瞬間で変わるんだ……」その人はそう言いながら、自分で納得するように、うんうんと頷いて目をつむった。

「君と話ができてよかったよ。私もいろいろと考えの整理ができて、それこそ優先順位の手入れが出来たよ」とその人は言って、話しながらメモをとっていたノートを閉じた。

そんな出来事を思い出しながら、これから自分がブックハンターとして、学ぶべきこと、するべきこと、知るべきことなどを思いつくままに、白い紙を埋めるように書き綴った。

「一日に一人、一年で365人。希少本コレクターと知り合うこと」

僕は優先順位のトップにこう書いた。希少本コレクターが365人もいるかどうかわからないが、とにかく一日に一人と出会うことを自分の課題にした。

ブックハンターとして必要な学びは「コレクターがすべてを教えてくれるよ。とにかく、客を知れ」と、あの老紳士が教えてくれたからだ。

僕は老紳士が教えてくれたアップタウンイーストにある古書店に電話をしてアポイントをとった。そこは店を持たずにビルの一室にあった。

書いてくれた住所を頼りにその古書店に行き、入り口の呼び鈴を押すと僕を待っていたかのようにドアが開いた。二十畳ほどの部屋には、本がいくつもの山になって積み上げられていて、その隙間に置かれた椅子には、客らしき人たちが座って本を広げたり、談話をしていた。

軽快なダウン ストーリーイメージ

「いらっしゃいませ」という声がした。声の主を探すと、目の前に子どものように背の低い女性が立っていて、僕はぎょっとした。

「この部屋は本のために暖房をつけていないので寒いですよ。よかったらこれを着てください」そう言って女性は、僕にふわっとしたダウンの羽織ものを手渡した。

「探しているものがあれば声をかけてください。どうぞごゆっくり」女性はそう言って、本の山に消えていった。

たしかに店の中は妙に冷えていて寒かった。とはいえ、息が白くなるほどでもなく、女性が貸してくれた薄いダウンがちょうど良かった。あとから知ったのだが、それはジャケットの下に着るインナーダウンというものだった。試しに袖を通すと、見た目のわりに暖かくて、動きやすくて、「これいいな」と僕を驚かせた。

ウルトラライトダウンコンパクトジャケット

もっと軽く、もっとあたたかく

極細のナイロン糸で生地を編み、独自の技術でダウンを包む構造を開発。さらに薄くて軽いプレミアムダウンを使用することで驚異的な軽さと暖かさと薄さを実現しました。重さに関してはオレンジ1個分を下回るほど。

水に濡れることで保温力の低下や乾きづらさが弱点だったダウンの特性も、表地に耐久撥水加工を施すことで解消。多少の雨風も平気です。厳冬期はジャケットやコートの下に、春や秋の立ち上がりはカーディガンのように。目指したのは心強い相棒のような存在。

ウルトラライトダウンコンパクトジャケット
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水に濡れることで保温力の低下や乾きづらさが弱点だったダウンの特性も、表地に耐久撥水加工を施すことで解消。多少の雨風も平気です。厳冬期はジャケットやコートの下に、春や秋の立ち上がりはカーディガンのように。目指したのは心強い相棒のような存在。

あの日あの時から、
ずっと欲しいと思っていた、
軽快で薄くて
あったかいダウン。

松浦弥太郎
ウルトラライトダウンコンパクトジャケット
024 MENウルトラライトダウン
コンパクトジャケット
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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