Life and Crafts

Uniqlo U 2025 Fall & Winter Collection

古典的な技法を現代の感性で表現するふたりの作家。バルセロナとストックホルム、それぞれの創作風景を追いながら、美しい手仕事から生まれるクラフツマンシップに迫った。

掲載商品一覧を見る

1
David Schmitt

Painter, Printmaker

Photo of David Schmitt

Uniqlo Uのワークテイストな着こなし。ベージュや茶を基調としたアースカラーが、ダヴィットのアトリエによく馴染む。

オーバーサイズカラーデニムジャケット ¥5,990 (Uniqlo U)
ラムクルーネックセーター ¥4,990 (Uniqlo U)
ツイルワークオーバーサイズシャツ ¥3,990 (Uniqlo U)
コーデュロイユーティリティパンツ ¥3,990 (Uniqlo U)
Photo of David Schmitt

西陽が差し込むデスクがダヴィットの定位置。彫刻刀を手に、輪郭から細部へと、リノリウム版を彫り進める。

Photo of David Schmitt
Photo of David Schmitt

An imperfect beauty, somewhere between analog and digital

デジタルとアナログ、その間で描く不完全の美

クラシックな版画という手法を現代的に再解釈し、日常の小さな美しさを描き出す版画アーティストがダヴィット・シュミットだ。素朴でいてどこか温かみを感じる彼の作品は、自身のSNSを通して日々多くの人々の心を惹きつけている。スペイン・バルセロナにあるシェアスタジオを訪ねると、今回の表紙制作に励むダヴィットが「ようこそ」と笑顔で出迎えてくれた。彼が得意とするリノカット版画は、この街にゆかりのある偉大な芸術家、パブロ・ピカソが晩年取り組んでいた技法としても知られている。

Photo of David Schmitt

人や動物、花といった身近で普遍的なモチーフに、シンプルでいて深みのある英語のメッセージ、ミニマルなフォルムと色使い。ダヴィットが描く世界は、優しい眼差しと時代を超えた懐かしさが漂う。「これらのテーマは、人が生きていくために必要不可欠なもので、常に僕たちを取り囲んでいるもの。一見、シンプルで普遍的に見えるかもしれないけど、その中に深い神秘を感じると思う」。今回、彼が書き下ろしてくれた表紙は「今の自分のスタイルを集約した作品」と彼。音楽を楽しむ人々と鳥、植物をモチーフにした服など、人々の暮らしと結びつく創作物が生き生きと描かれている。普段は黒とベージュの配色が持ち味だが、ダークブルーと白を選び、現代的な感性を加えた。

Photo of David Schmitt
Photo of David Schmitt

アートワークごとに約10枚ずつ手刷りをする。一枚一枚に生まれる小さな違いが、作品独自の個性を放つ。

Photo of David Schmitt

グリーンでカラーをまとめたコーディネートを「色使いが新鮮」と話す。普段からキャップを被ることが多く、彼らしいカジュアルなスタイルに。

パフテックショートブルゾン ¥7,990 (Uniqlo U)
ダブルフェイスフルジップジャケット ¥6,990 (Uniqlo U)
ツイルワークシャツ ¥3,990 (Uniqlo U)
ワイドストレートパンツ ¥4,990 (Uniqlo U)
W’s ウールブレンドキャップ ¥1,990

バルセロナに移住したのは2年前。活気のあるコミュニティや多くの芸術家を魅了してきたボヘミアンな雰囲気に惹かれたという。天井が高く、一日中自然光が差し込むスタジオを拠点に、ダヴィットは創作活動に没頭する。
「子どものような好奇心と美的感覚を持って、制作に取り組んでいます。素材や技法にこだわって、作品にもっと多くの視点を加えていきたい。最近はセラミック作品にも夢中なんです」。

独学で絵画や版画を学んだ彼は、既存のルールにとらわれない。アナログとデジタルを融合した独自の制作プロセスもそのひとつだ。「デジタル上でデザインを描き、それを印刷してリノリウム版に転写し、丁寧に彫り込みます。手刷りした作品をスキャンし、色や質感をデジタル上で編集しているんです」とダヴィット。臨機応変にさまざまなツールを駆使することで、溢れ出るアイデアをスピーディーに、より多くカタチにすることを可能にした。

「デジタルで完璧を追うよりも、アナログでどこか未完成であるもののほうが人の心に響く。不完全さは美しさの条件です」。アートは身近で、日常に存在するもの。クラシックでありながら新しく、人間らしさが滲むダヴィットの作品は、忘れがちな暮らしの中の小さなきらめきや美しさに改めて気付かせてくれる。

Photo of art

壁には、3年前から取り組んでいる絵画作品が並ぶ。ジュート生地や砂など生の素材を使い、質感にこだわっている。

Photo of David Schmitt
David Schmittダヴィット・シュミット
Painter, Printmaker

1994年、ドイツ・バンベルク生まれ。アウクスブルク応用科学大学でグラフィックデザインを学んだ後、独学で絵画や版画の制作を始める。2023年、スペイン・バルセロナに移住。インスタグラム(Tuyo.Art)で作品を発信し、注目を集める。アーティスト名のTuyo(トゥーヨ)は、スペイン語で「あなたのもの」。

tuyo.art

2
Carina Seth Andersson

Glass Artist, Ceramist

Photo of Carina Seth Andersson

「普段は男性ものの洋服を着ることが多いんです」とカリーナ。オーバーサイズのUniqlo Uを黒でシックに統一。

W’s ステンカラーロングコート ¥12,900 (Uniqlo U)
W’s ダブルフェイスクルーネックセーター ¥3,990 (Uniqlo U)
W’s コットンシャツ ¥3,990 (Uniqlo U)
W’s コットンチノパンツ ¥4,990 (Uniqlo U)
Photo of Carina Seth Andersson

「幼少期、親友の父が日本人で東洋の文化に触れる機会があった」と彼女。日本の陶器から影響を受けたと話す。民芸の思想も、彼女の制作を支える大きな柱だ。

Photo of Carina Seth Andersson

It’s the imbalanced parts that have the most vitality

不均衡な部分にこそ、生命力が宿るんです

ガラス作家とデザイナーの境界を軽やかに行き来しながら、スウェーデンのデザイン界で確かな存在感を放つカリーナ・セス=アンデション。そんな彼女の制作の拠点は、200年の歴史を持つ陶磁器メーカー「グスタフスベリ」の工場跡にあるアトリエだ。朝は陶芸に取り組み、午後は紙を切って立体のスケッチを行うカリーナ。常に同時進行で制作されるアートピースは、アトリエ階下のガラス工房で、職人たちとともに伝統的な手吹きで行う。「フォルムやスケール、比率で物事を捉えているから、頭の中ではっきりとカタチのイメージができていることが多い」と彼女。描くよりも切り出してカタチを探るアナログな手法で、直感を現実に引き寄せ、より確かなものへと導く。

カリーナの機能美を追求した日常使いのガラスや食器は、フォルムも色使いもクリーンでタイムレス。削ぎ落とされた表現と凛とした美しさの中に、手仕事のぬくもりが息づく。「厳格で抑制されたデザインでも、どこかに引っかかりや、少しの不均衡な部分が必要なんです。そういった緊張感をなくしてしまってはいけない。そこにこそ生命力が宿るから」。

Photo of Carina Seth Andersson

完璧さよりもあえて残す「わずかな揺らぎ」を大切にする彼女の哲学は、その人柄にも滲む。無駄のないミニマルな佇まいの中に、愛犬ルーとじゃれ合う無邪気な姿や、こぼしたお茶をジャケットの裾で拭うような飾らなさ。作品同様に彼女の人柄は有機的な温かみを感じさせる。

Photo of Carina Seth Andersson

凛としていながらも安らぎを感じる洋服が好きというカリーナ。「シンプルなUniqlo Uは作業着にも取り入れやすい」と納得。

W’s ダブルフェイスハーフジップセーター ¥4,990 (Uniqlo U)
W’s コットンシャツ ¥3,990 (Uniqlo U)
W’s カーブパンツ ¥4,990 (Uniqlo U)
Photo of Carina Seth Andersson

アトリエで紙にスケッチを描いたり、粘土に線を引いたり。プロダクトデザインとアートピースの制作は常に同時並行で進む。

Photo of Carina Seth Andersson
Photo of Carina Seth Andersson

カリーナはこれまでに北欧を代表するブランドとのコラボレーションも多く手がけてきた。特に「マリメッコ」と「スヴェンスク・テン」とは長年にわたり協働し、彼女のデザインした花器やテキスタイルは、各ブランドの定番アイテムとなっている。ガラス制作においてもっとも大切な存在なのがスウェーデン南部のスモーランド地方に工房を構える「スクルーフ」だ。「スヴェンスク・テン」の花器もここで生み出されている。1897年創業の歴史あるこのガラス工房は、現在も手吹きの伝統的な技法を守り続けている。彼女が専属デザイナーを務めるのも、日常使いのガラス作りや、熟練の職人たちの知見と技術に対する深い敬意があるからだという。

Photo of Carina Seth Andersson

「時代を超えてクラシックであり続けるには、時間をかけた熟考が欠かせません。素材の持続可能性だけでなく、デザイン自体も持続可能であるべき。丁寧につくられたものは長く愛され、急いで生まれたものは短命で、やがて忘れ去られてしまうから」。

だからこそ、制作にはいつも惜しまず時間を注ぎ、手仕事にこだわる。そうやって生まれた彼女のガラス作品や食器は、使う人の暮らしにそっと寄り添いながら、時間とともに美しさを育んでいく。

Photo of Carina Seth Andersson
Carina Seth Andersson カリーナ・セス=アンデション
Glass Artist, Ceramist

スウェーデン・ストックホルム生まれ。オレフォス国立ガラス学校を卒業後、コンストファック芸術工科大学で美術学修士号を取得。その後、ガラス作家として独立。一点もののハンドクラフトから、マリメッコなど企業コラボによるプロダクトデザインも手掛ける。作品の大半はモノクロームであり、派手な色彩よりもプロポーションやフォルムの美しさにこだわる。

  • Photography by Masahiro Sambe
  • Styling by UNIQLO
  • Hair & Makeup by Tony Lundström (David), Kristina Kullenberg (Carina)
  • Film by Alessia Sorina
  • Coordination & Text by Yukiko Yamane (David), Miki Osako (Carina)
このページをシェアする
Scroll to top button