Unique
Clothing

Episode:
05
Item:
HEATTECH

ユニークな服は常識を変える。常識が変わると生活が変わる。
ユニクロが作り続けてきた、マスターピースのストーリー。

HEATTECH Cotton Waffle Crew Neck T-Shirt

ワッフル生地でカジュアルな印象のクルーネックシャツ。ベースレイヤリングのアイテムとしてはもちろん、一枚でも成立。肌にあたる面は100%コットンを使い優しい肌触りに。

W’s HEATTECH Fleece Turtleneck T-Shirt

ヒートテックが持つ保温と吸湿発熱の機能、フリースの保温効果と肌触りの良さを追求した究極の一枚。リラックスして着こなせるショルダーカットで、多色展開も魅力的。

今やヒートテックは、世界の冬に欠かせないアイテムだ。服は着る楽しみ以上に、さまざまな機能で人を守ってきた歴史を持つ。なかでも大きな役割を果たしてきたのが防寒だ。人は古くから毛糸や毛皮で温度を保ち、時代とともにナイロンやポリエステルで風をしのぎ、ダウンで軽さを求めてきた。それでも冬の衣料は分厚くて重々しく、決して動きやすくはない。ヒートテックが目指したのは、冬の装いをもっと自由にすることだった。

これまでとはまったく違う発想で、寒さを解決したい。そして、世界中のあらゆる人が日常的に手にできる服でなくてはならない。そのためにユニクロがパートナーに選んだのが、世界最高水準の繊維技術を誇る東レだ。保温性の面から秋冬用インナーには向かないとされてきたポリエステルの常識を覆したヒートテックは、今年発売から20年目を迎える。その成り立ちとものづくりをあらためて追いかけていこう。

Photography by Yoshio Kato

HEATTECH: Twenty Years of Warmth

20年の歴史を持つヒートテック

  • 1.Rayon 2.Acrylic 3.Polyurethane 4.Polyester
  • Air Pocket

レーヨン、アクリル、ポリウレタン、ポリエステルという性能の異なる4種の異なる糸を組み合わせることで多機能な生地の編み上げが可能。肌触りと薄さを向上させながらエアーポケット構造を保つ。

  • 2003
  • 2023

デビュー当時の編み目と現在の編み目を拡大した画像から。毛羽が少なくなっていることがわかる。このなめらかさが肌触りの良さにも繋がっている。

ヒートテック誕生のきっかけは意外にも夏の衣料にあった。2003年夏に発売したドライ素材を使ったメンズインナーは、東レが開発した新しい合成繊維の吸汗速乾機能をメインとした男性向けインナーだ。それまで綿100%が主流だった男性向けインナーの市場で、合成繊維の製品が広く受け入れられるという画期的な製品となった。そこでこの機能を発展させ、保温効果の高さと汗をかいてもべとつかない肌触りを持つ冬用インナーを実現したいとの声が上がる。こうして東レとの共同開発が始まった。

肌の一部のようにフィットし、着用していることを感じないほどにソフトでしっとりとしたストレッチ素材。その目標に向かって、いくつもの試作が生まれるが、そのどれもが望む肌触りに至らなかった。難航するなかで担当者が最後に取り出したのは、技術者から難点があり提案を控えるように言われていた素材だった。ただし、その肌触りはみなが望むもの。それが、現在のヒートテックの原型となるマイクロアクリルとレーヨンを組み合わせた生地だ。

この生地が抱える問題は色表現にあった。4つの異なる繊維を組み合わせているため、それぞれに染料の浸透速度が異なり、結果として必ず色むらが出る。そこで東レの技術者とユニクロのデザイナーを含む現場担当者とともにさまざまな対応策を進めた。一般に、素材、紡績、染色といった工程はそれぞれに独立して作業が進められるが、問題解決のために現場で団結し、試行錯誤を続けることでヒートテック専用の染料や染色方法の開発を続けた。この努力が実を結び2006年の秋冬シーズンに向け、量産が軌道に乗り始める。色むらの問題を解消し、安定した量産体制に入るまで要した月日は1年半であった。

ヒートテックは、異なる特性を持つ4つの繊維を複雑な構造で編み込むことでいくつもの快適な機能を実現する。4つの繊維とは、吸湿によって発熱するレーヨン、優れたストレッチ性で高い伸縮性を持つポリウレタン、空気を多く含むことで高い保温性を持つアクリル、水分を素早く拡散して乾燥させるポリエステル。ポリウレタンとポリエステルはそのまま糸としているが、アクリルとレーヨンは紡ぎ合わせることでヒートテック最大の特徴である発熱と保温機能を備えた糸になる。これら3つの糸を編むことで保温性と着心地が生まれる。

では、ヒートテックはどのように暖かくなるのだろう。そこで必要となるのが、私たちの身体が常時発する水蒸気だ。生地の一部を構成するレーヨンは水蒸気を吸着し、その運動エネルギーを熱に変える機能を持つ。こうして生まれた温かい空気を肌の近くから逃さないのがアクリルだ。ヒートテックでは毛髪のわずか1/10という太さのマイクロアクリルを使い、繊維間に断熱性の高い層をたくさん作らせる。これが、インナーの内部に温かい空気をとどめ、保温性を持たせるエアーポケット構造である。ダウンジャケットが羽毛の間に空気層を作って温かさを保つのと同じ原理だが、ヒートテックはそれを1本の糸というミクロのスケールで実現する。だからこそ、ヒートテックは薄いのに温かい。

人々にとって欠かせない存在になるほどに製品へ望む声も多種多様になる。だからこそヒートテックは常に進化を続ける。20年をかけて繊維はより細くなり、より緻密になった。アクリルのマイクロ化などにより、肌触りの良さと薄さを向上しながらもエアーポケット構造を保つ工夫をしている。より薄く、温かく、なめらかな肌触りはもちろん、多様なシーンや環境で使い分けられる「極暖」「超極暖」も加わったことで3種類のヒートテックが世界を温めている。

History of HEATTECH

2003
メンズ販売開始。ドライ素材をベースにした「吸湿発熱・保温」機能の冬用メンズインナーは画期的ではあったが、肌触りや⾵合いなどまだまだ改良すべきポイントがあった。
2004
ウィメンズ販売開始。メンズ、ウィメンズともに抗菌防臭・ドライ機能を加え、「ヒートテックプラス」として発売。
2006
薄くて軽くしなやかさにこだわったウィメンズ。素材を中空綿からマイクロアクリルに変更し、柔らかな風合いに。技術者のこだわりがマイクロアクリル、レーヨンを含む4種類の繊維を組み合わせたヒートテックを生んだ。
2008
海外での販売開始。ウィメンズ同様メンズも素材を中空綿からマイクロアクリルに変更。
2013
「エクストラウォーム(極暖)」が販売開始。
2016
極暖よりも1.5 倍暖かい「ヒートテックウルトラウォーム(超極暖)」が販売開始。保湿成分がアルガンオイルへ変わりなめらかさが向上。
2017
累計販売枚数が10億枚突破。
2021
肌面100%コットン使用の「ヒートテックコットン(極暖)」が販売。
2022
デザイン性に長けた「HTシームレスリブ」と「ワッフル」が登場。
2023
ヒートテック発売から20周年を迎える。

HEATTECH Crew Neck T-Shirt 2003

HEATTECH Plus Crew Neck T-Shirt 2006

HEATTECH Extra Warm Crew Neck T-Shirt 2013

HEATTECH Ultra Warm Crew Neck T-Shirt 2016

Photography by Yoshio Kato

A unique process, from fiber to stitching

生地から縫製まで、唯一無二の製造拠点

ヒートテックは、中国、インド、インドネシア、ベトナム、そしてバングラデシュの5拠点で生産される。なかでも唯一、生地から縫製まで一貫して製造するのがバングラデシュの工場だ。糸を編むことに始まり、世界各地への配送に至るまで、幾度にもわたり確認作業しながら徹底した品質管理を行う。その生地の特性から縫製はすべて手作業となり、必要に応じて機械を用いることで品質を高めている。

こうしてヒートテックは最新の技術と手仕事の巧みな揺らぎのなかで唯一無二の「LifeWear」として、世界に届けられる。近頃はインナーの枠を超え、日常的なファッションを楽しむアイテムとしても成長を始めた。どんなときも自分らしくいられる服は、ヒートテックに新たな魅力を加える。この冬も、その温もりを手放すことはできない。

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1. ヒートテックの生地づくり、縫製、出荷までを行うバングラデシュ工場。左は4種の繊維を混紡した糸を使い、丸編み機で生地を生産する工程。機械のメンテナンスも頻繁に行われる。

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2. 繊細な糸を編むため、編むまでカバーをかけるなど、管理も気を抜けない。

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3. 生地から縫製までを一貫し、濾過装置などの設備を備えるため工場の規模も大きい。常に清潔な環境を保つ努力を惜しまない。

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  1. 1. ヒートテックの生地づくり、縫製、出荷までを行うバングラデシュ工場。左は4種の繊維を混紡した糸を使い、丸編み機で生地を生産する工程。機械のメンテナンスも頻繁に行われる。
  2. 2. 繊細な糸を編むため、編むまでカバーをかけるなど、管理も気を抜けない。
  3. 3. 生地から縫製までを一貫し、濾過装置などの設備を備えるため工場の規模も大きい。常に清潔な環境を保つ努力を惜しまない。

Photography by Jingu OokI

Photography by Jingu OokI

Manufacturing warmth by hand

多くに手仕事を要する生産背景

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1. 丸編み機で編まれた生成り生地は、染色、乾燥を経て、仕上げ加工が行われる。編み上げ後は生地に折り目が入らないように巻き取られ、皺にならないように独特の方法で保管される。

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2. 染色は4種の繊維を均一に染めるための染料、染色条件のもとで行われる。

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3.染色後は脱水を経て、生地の表情を整える仕上げ加工を行い、生地が自然な状態に戻る放反作業に移る。

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4. 生地の編み上げから随時検品作業を行うことで、品質管理を徹底する。写真は放反後の検品作業で、一点一点ほつれや傷がないかを確認。

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5. 縫製工場では生地を手作業で重ね、CAMと呼ばれる自動裁断機でパーツごとの裁断を行う。

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6. 小ロットの製品などは手作業での裁断も。裁断後のパーツも丁寧に検品を行うことで、製品不良を防いでいる。

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7. ヒートテックの生地は薄くしなやかで、ストレッチ性が高い。そのため縫製はすべて人の手で行う必要がある。ミシンの調整を厳密に行いながら、多種多様なアイテム、地域別にディテールの異なる製品などが縫製される。

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8. 同じく生地特性から畳みも人の手で。

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9. 美しくパッケージに収められた後に、最終検品を経て、発送個数をタグデータで管理したうえで各国に送られる。

Photography by Jingu OokI

HEATTECH is embodying new possibilities from innerwear to outerwear and beyond

さらなる可能性を得たヒートテックは、インナーウエアからアウターウエアへ

肌面にコットンを100%使用した優しい肌触りが特徴。インナーとして着ても袖口から目立たない9分袖設計のため、一枚着だけでなく重ね着にも重宝する。

サイドに縫い目のないシームレスで、ボディに優しくフィットする極暖リブ素材。ウルトラストレッチで柔らかく、首に沿うタートルネックT。

  • W’s HEATTECH Seamless Ribbed Turtleneck T-Shirt ¥1,990 (UNIQLO & PRINCESSE tam・tam, 11月上旬発売予定)
  • W’s Curved Jeans ¥4,990 (Uniqlo U)
  • W’s Studded Belt ¥2,990 (UNIQLO / INES DE LA FRESSANGE)

インナーウエアのみならずアウターウエアに。ヒートテックは今、素材表現の幅を広げることで一枚でも着こなしを楽しめるアイテムのラインアップに力を入れる。さらに、ニット帽、マフラー、手袋、そして靴下まで、多様なアイテムで身体をより温かく、より軽やかに、そしてより快適に包みこむ。時代の空気を取り込みながら、いつも着ていたくなる快適な服へと、ヒートテックは進化を続ける。

  • Photography by Yuki Kumagai
  • Styling by Toshihiro Oku
  • Hair by Kazuhiro Naka
  • Makeup by Asami Taguchi
  • Text by Yoshinao Yamada
  • Editing by UNIQLO
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本ページに記載の価格は、8月24日時点での消費税込みの価格です。価格は変更になる可能性がございます。