SILK QUALITY

高品質・低価格の秘密

希少価値の高い天然素材を使用しながら、低価格を実現させたユニクロのシルク。
「高品質で低価格」を可能にした服作りの現場を紹介します。

シルクの大量生産という、かつてない挑戦。

ユニクロのシルクを生産する工場があるのは、シルク発祥の地であり、世界のシルク生産量の80~90%のシェアを誇る中国。シルクでは世界一の生産量を誇る染色工場をはじめ、創業時からシルク製品を手がけていた縫製工場など、伝統ある工場ばかりです。

「高品質・低価格」の鍵を握るのは、グループ全体で8000人の従業員が働く縫製工場。1967年の創業時からシルク製品を取り扱い、1993年に初めてユニクロと開発したアイテムもメンズのシルクシャツという、シルクにゆかりのある工場です。

シルクプロジェクトが始動するにあたり、今までにない大量生産はチャレンジだったと同社のCEOは語ります。

「天然素材であるシルクが製品になるまでには、様々な人の手を経ています。養蚕家がいて、糸を作る工場があり、織機で糸を織る工場がある。ここで織られたものを生機(キバタ)と言います。生機は染色工場で染めて加工し、生地になる。この生地が縫製工場で裁断され、縫製され、製品になります。通常は染色工場で加工された生地を購入するのですが、品質を守るために、糸の段階から選び抜いた上質な素材を購入しました

大量生産が決定してからは、糸から品質を管理することを含め、製品の安定供給のために準備を工夫したのだそうです。

「生産効率を上げるために、ユニクロの匠チームに技術指導をしていただいたのもそのひとつ。ユニクロは品質・品位・品格を大切にしていて、一緒に物づくりをしていて共感する部分が多いです。我々の工場も、生産効率の高いオペレーションで良い商品を作ることを目標にしています」

ユニクロでは生産現場での技術向上や工程管理、人材育成の要として2000年から「匠制度」を導入。日本の繊維業界で長年の経験を持つ技術者を「匠」として工場に派遣しています。

シルクプロジェクトでも、2人の匠が活躍。生機を染色・加工して生地を出荷するところまでを生地の匠、縫製工場での生産に関しては縫製の匠が技術指導をしています。

貴重な素材に、いのちを吹き込む2人の匠。

「シルク生糸は、中国の国家機関である商検局が、糸の均一性や強さ、伸張度などの基準にそって、最高ランクの6Aから5A、4A、3Aまでランク付けしています。6Aにランク付けされるシルク生糸はとても少量で、6Aと5Aを合わせても、中国のシルク生糸全体の10%未満しかありません。高級ブランドも使用する、その貴重な素材を使っているのが、ユニクロのシルクブラウスの大きな強みだと思いますね」

そう語るのは生地の匠。

「また、シルクは収縮率の高い素材で、生機だけで通常は15%くらい縮んでしまうのですが、今回は手洗いを可能にするために丁寧に防縮加工を施して、生地の寸法変化率を3%程度に抑えたのも強みです。天然素材のシルクは、蚕の生育状況によって染色性が異なるので、色合いを管理するのも難しかった点ですね。シルクでは世界一の生産量を誇る染色工場と意見交換をしながら、様々な技術的なやりとりができたのは私としては非常に貴重な経験となりました」

こうして作られた生地が縫製工場に運ばれ、シルク製品に仕上げられます。そしてここからは縫製の匠の出番。

「シルクは他と比べてデリケートな素材なので、縫製工場の従業員の方も神経を使います。やわらかな素材なので、縫製の際、生地が動きやすい。襟などは、縫いしろの幅を正確に縫うのが難しい。設備面から改善できる部分も考え、縫製工場へ依頼してシルクを縫うのに適したアタッチメントに変更してもらいました。また、優しく手洗いができるアイテムにするために、縫い目の強度など、見えないところも工夫して作っているところも、ユニクロのシルクの魅力になっています」

技術面の細かな指導はもちろん、設備面でも工場と連携を取りながら、より適したものを選択することも匠の仕事。ユニクロのシルクの品質を守るために、2人の匠の技が光ります。

高品質・低価格を実現した秘密とは。

伝統と実績のある工場と、確かな経験を持つ匠の協力によって進められてきたシルクプロジェクト。「高品質・低価格」で提供できたことに関して、生産担当者はその理由をこう分析します。

「縫製工場さんの協力によって、実現できたことだと思います。これだけ大規模にシルクを生産するのは初めてでしたが、一緒にアイデアを出し合って、ユニクロの品質を守ることのできる素材規格と素材工場を特定した上で、企画をスタートさせました。蚕を育ててシルク製品を作るところまで、一連の流れを熟知している工場だからこそ、糸の段階から事前に原料を調達していただいたり、予測される問題点にあらかじめ対策を立てていただけたのは大きかったです」

しかし、天然素材のシルクをお客様が安心して着ることができる製品にする上では、多くの苦労がありました。

「天然素材であるが故に、蚕の育成状況によって糸の強度や染まり方も違います。しかし、商品としてお客様にお届けする上で、1枚でも不良品は出せない。そのため、生産の工程の中で製品にしなかった素材も多くありました。今回これだけの量を生産して問題点が把握できたと思うので、今後の製品作りに生かしていきたいです」

高品質のシルクアイテムが誰でも手に取りやすい価格で形になった背景には、ユニクロ生産部と匠、そして強力なパートナーである現地工場との確かな協力関係がありました。

すべての女性が着られるデザインを。

高品質・低価格に加えて、もうひとつの魅力がデザイン。幅広い年代の女性が着こなしやすい“エイジレスでカジュアルなシルク”に仕上がっています。

「シルクプロジェクトは、お客様にシルク素材をもっと身近に感じてもらいたいという想いでスタートしました。この点において、低価格の実現という事が私たちの商品では大切になります。シルクは生地の価格が高い分、コストの面での折り合いが大変でしたが、カジュアルに落としすぎず上品に見せるための仕様も加えています。シルクならではのドレープ感を表現しつつ、モダンでクリーンなデザインになるように工夫しました」

デザイン上の工夫や苦労を語るのは、今回のシルクアイテムのデザインをしたR&Dチームの担当者。豊富なアイテムバリエーションについても説明を加えました。

「カシュクールでも着用できる2way機能が付いたベーシックなシャツカラーのブラウスをはじめ、スタンドカラーブラウス、ノースリーブブラウス、Tブラウスの4つのスタイルで展開。ワンピースはどのような場面でも着用いただける定番のシャツワンピースと、シルクという高品質な素材を生かした、シンプルなノースリーブワンピースの2つのスタイルを提案しています」

さらに今回からの新たな試みとして、素材にサンドウォッシュ加工を施しています。

「サンドウォッシュ加工によって少しマットな表面感になり、暖かみを感じさせる“秋冬のシルク”を表現しています。また、シルク素材に適したフェミニンでラグジュアリー感のある色柄を幅広く展開しており、カジュアルなジーンズから綺麗目なパンツ、スカートまで様々なコーディネートが楽しめるようになりました。シルクは上質で着ごこちの良い素材なので、ぜひ実際に袖を通していただきたいです」

高品質・低価格、そして幅広い年代が着られるデザインに仕上がったユニクロのシルク製品。その裏には、取引先工場とのパートナーシップや、高度な技術と設備の連動がありました。