映画、難民に出会う。
~ 服のチカラ 28号 ~
第12回難民映画祭(2017年)で上映された『希望のかなた』と同じく、シリア紛争以降に公開され、おおきな反響のあった難民映画を4作品、選んでみました。
『アレッポ 最後の男たち』は、昼夜問わず爆撃を受けるアレッポの街で、瓦礫の下に生き埋めになった人々を救い出す救助隊「ホワイト・ヘルメット」の活動を追ったドキュメンタリー。彼らにも家族はあるのです。緊迫の判断と命懸けの行動の連続に、ただただ息を呑むほかありません。
『アレッポ 最後の男たち 2017』 監督:フェラス・ファヤード 共同監督:スティン・ヨハネセン 第90回アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門ノミネート作品。2017年サンダンス映画祭ワールド・シネマ ドキュメンタリー・コンペティション部門グランプリ。ほか、世界中で23の映画賞を受賞した。配給:ユナイテッドピープル/©Larm Film
シリアやアフガニスタン、アフリカ諸国などからヨーロッパに安住の地を求めて、陸路や海路で避難する人たちが急増するなか、難民自らが、アフガニスタンからヨーロッパまでの5600kmの旅路をスマホで記録した『ミッドナイト・トラベラー』は、報道からは知り得ない難民の息づかいや旅のリアリティーを肌で感じる貴重なドキュメンタリーです。
『ミッドナイト・トラベラー 2019』 監督:ハッサン・ファジリ 2019年・ベルリン国際映画祭 パノラマ部門エキュメニカル審査員賞、シェフィールド国際ドキュメンタリー映画祭 審査員特別賞(スペシャル・メンション)、サンダンス映画祭 ワールドシネマドキュメンタリー審査員特別賞。ほか、23の映画賞を受賞。配給:ユナイテッドピープル/©2019 OLD CHILLY PICTURES LLC.
多くの難民を受け入れてきたドイツで制作された映画『はじめてのおもてなし』は、難民を受け入れることになった裕福な家族が、ナイジェリアの青年との新しい暮らしのなかで、家庭崩壊寸前の危機に陥りそうになり──難民受け入れの現実をコミカルに、感動的に描いて、ドイツ国内で大ヒットを記録したドラマです。
『はじめてのおもてなし 2016』監督:サイモン・バーホーベン 2016年度ドイツ映画興行収入No.1、観客動員数400万人を記録。2017年・ドイツ・アカデミー賞観客賞、バイエルン映画賞作品賞・プロデューサー賞受賞。DVD発売のほか、Prime Videoなどで配信中。配給:セテラ・インターナショナル/©2016 WIEDEMANN & BERG FILM GMBH & CO. KG / SENTANA FILMPRODUKTION GMBH / SEVENPICTURES FILM GMBH
日本社会を舞台にした映画もあります。幼い頃から日本で暮らすようになったクルド人の女子高校生を主人公とした『マイスモールランド』は、難民申請の厳しさにも触れながら、私たちのすぐ隣にある現実を、静かに伝えてくれる作品です。
『マイスモールランド 2022』 監督:川和田恵真 2022年新藤兼人賞銀賞(監督)、第45回山路ふみ子賞新人女優賞および第47回報知映画賞新人賞(主演女優)、第72回ベルリン国際映画祭のアムネスティ国際映画賞・スペシャルメンション(特別表彰)。DVD発売のほか、Prime Videoなどで配信中。©2022「マイスモールランド」製作委員会
難民映画祭について 国連UNHCR協会
紛争や迫害で家を追われた人の数は、1億2000万人以上――
日本に暮らす私たちがほぼ一人残らず家を追われてしまう、
それほどの規模で、今この瞬間も増え続けています。
あまりにも大きな数字のなかにいるのは、家族を大切に思い、
ささやかな幸せを願う、私たちと何ら変わらない一人ひとりです。
ある日突然「難民」と呼ばれるようになった人たちにも、
かけがえのない人生があることを知ってほしい。
映画を通じて、日本各地に支援の輪を広げたい。
そんな思いから、2006年に「難民映画祭」は始まりました。
困難を生き抜く人間の力強さ、そして希望を伝える珠玉の作品を、
オンライン配信と劇場上映のハイブリッドでお届けいたします。
一人でも多くの難民が、難民でなくなる日を願って。
2025年11月、「難民映画祭」は20周年を迎えます。
詳細は今秋、ウェブサイトでご確認ください。
www.japanforunhcr.org/how-to-help/rff