Coziness and
Comfort
in Stockholm
機能的で美しいデザインが暮らしに根づく北欧の都市、ストックホルム。
今季のコレクションの着想元になったこの街では、
人と自然が結びつき、心地よく穏やかな時間が流れている。
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The Alexander Havelda & Magda Marnell Familyアレクサンデル・ハーヴェルダ & マグダ・マルネル
Scriptwriter, Designer and Co-Founder of Studio Matsson Marnell
夫のアレクサンデルは映画やドラマシリーズを手掛ける脚本家、妻のマグダは家具を中心としたデザインスタジオ『MATSSON MARNELL』の創業者のひとり。「ストックホルムで暮らすとつい自然が恋しくなる」と、2週間に一度の週末は、スウェーデンのウップランド東部の森の真ん中にある別荘で家族と過ごす。今回はストックホルムから車で3時間の距離にある、大自然に囲まれたスモールロッジ「ウールナトゥール」を訪問。アースカラーを基調にしたファミリーの肖像が、自然風景に溶け込んだ。
Levi Di Marco & Indra Herö Wide Familyレヴィ・ディ・マルコ & インドラ・ヒーロー・ワイド
Brand Director of Hem, Film Director
今、スウェーデンで最も勢いのあるインテリアブランド〈Hem〉。若くしてブランドディレクターを務めるレヴィは、週末になると近所の公園へ家族と散歩するのが定番コース。「この辺りでは最もお気に入りで素晴らしい風景が広がるんだ」と紹介してくれた。映像ディレクターで妻のインドラは「2018年にストックホルムに初めてユニクロ店がオープンした際、ローンチ映像を担当したのが私です」と、撮影前に自己紹介。高性能な中綿を詰め込んだ暖かくて軽いパフテックをアウターに、ワイドなパンツを合わせて軽快に。
トップスは天然素材であるダウンを一切使用せず、暖かさと軽さを実現した軽量アウター。ソフトな肌ざわりの生地で収納袋付き。朝晩と日中など寒暖差のある時期に持ち歩くのに重宝。役立つ一着として手にしたい。
1歳半になる愛息のブルーノと、オフホワイトをベースにしたコーディネートでストックホルムの旧市街へ。カシミヤ素材のタートルネックのニットは、今季ユニクロのシーズンカラーのひとつでもあるアイスブルーを採用した一枚。
トップスはほどよい張り感があり、型崩れしにくく上品に羽織れるミラノリブ地のニットカーディガン。インナーは手洗い可能なカシミヤセーターに、タック入りワイドシルエットのパンツをトーナルカラーで統一。
Hornsgatan 33, 118 49 Stockholm, Sweden
- Café
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撮影スポットとしてレヴィが紹介してくれた「Café」は、ストックホルムのクリエイターたちが今最も注目するセーデルマルムに構えるお店。美味しいコーヒーとクロワッサン、クッキーが特に人気。友達や家族と会話を楽しむフィーカタイムにもうってつけ。
Hornsgatan 33, 118 49 Stockholm, Sweden
Axel Wahl & Julia Malmquistアクセル・ヴァール & ユリア・マルムクヴィスト
Graphic Designer, Photographer
グラフィックデザインの仕事に加え、カラフルなプリントをあしらったアパレルを展開するショップ「Wawa Print Shop」を運営するアクセル。ユリアは以前高校のクラスメートで、現在はフォトグラファーとして活動する。ふたりは、週末にストックホルムから船で30分のフィヤーデルホルマナ島へ。島々へのアクセスがスムーズなこの街では、週末に渡島するのはごく日常の風景。小さな島を散策しながら、防水、防風に優れたコートを着こなすユリア。脇と裾が繋がっているため、「腕の可動はスムーズで動かしやすい」と彼女。
バイカラーを効かせたフリースは、軽量ながら生地の密度が高く、暖かい着心地が特徴。ストレッチ性に優れ、深みのあるブルー色のシャツに、真っ白なワイドストレートのデニムパンツを合わせて、北欧らしい着こなしを。
Leading the Good Life,
Together with Nature
自然とともにある、暮らしの中の豊かさとは
Text by Yoshinao Yamada
先日、スウェーデンから日本にやってきたイケアのディレクターを訪ねる機会があった。北海道札幌市郊外の白樺に囲まれた取材先で、彼女は休憩を兼ねて林を散歩してもいいかと言う。彼女を送り出しながら、スウェーデンでの取材はいつもそうだったと思い出す。
同国を代表するデザイナーのインゲヤード・ローマンもアトリエの対岸にある緑豊かな公園で歩きながら話すことになったし、ガラス作家の山野アンダーソン陽子とも自宅近くの森から湖に向かって散策しながら取材を続けた。スウェーデンでは、誰もが自然を楽しむことのできる自然享受権が人々に与えられている。首都であるストックホルムも森と湖に囲まれ、土地の所有者やそこに息づく動植物に敬意を払えば他人の土地であろうと自由に散策することができる。森できのこやベリーを摘むことが許されるが、枝を折ったり土を掘り起こすことは許されない。彼らの心は森とともにある。
北欧は一括りにされがちだが、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドでもちろん国民性は違い、家具やデザインへの考えも異なる。フィンランドは建築家のエリエル・サーリネンをモダニズムの原点とし、彼はのちにアメリカでチャールズ&レイ・イームズを育てた。アルヴァ&アイノ・アアルトの作品を見てわかるように合理的だ。デンマーク家具の父、コーア・クリントは歴史に学ぶことを尊んだ。ハンス J. ウェグナー、ボーエ・モーエンセンらの家具には範とする存在がある。ではスウェーデンはどうか。スウェーデン家具の父であるカール・マルムステンも自国に根付く伝統や工芸を基本にしたが、それ以上に自然とともにあることを尊んだ。自然こそが人の暮らしに欠かせない存在だからだ。他国以上にデザインと工芸の関係が近く、ローマンをはじめ、数々の人材を輩出したエーランド島のカペラゴーデン手工芸学校(スウェーデン)もマルムステンが創立したものだ。
翻ってスウェディッシュ・デザインの現代性は何だろう。スウェーデンを拠点とするデザイナーや作家は、ほかよりも強い倫理観を持つように思う。社会的な状況への強いメッセージ性もさることながら、自然への敬意からか環境意識が高い。ストックホルムのデザインユニット、フォーム・アス・ウィズ・ラブは早くから持続可能なものづくりを念頭に置いてきた。今年のミラノデザインウィークで注目されたスタジオTOOJは、砂、そしてトウモロコシの殻、籾殻、サトウキビなどの再生可能な資源を使い、3Dプリントで一体成形したテーブルなどを発表。彼らはサステナビリティと倫理的な生産にこだわりたいという。一方でスウェーデンの自然観がもたらすクリーンなフォルムや色使いは不変だ。街を歩くと、彼らのそれは家具やプロダクトデザインだけでなくファッションにも現れる。コンフォートでいてタイムレス。マルムステンから続く自然観をもとにした精神性は、今もスウェーデンの人々を形づくる支柱だ。自然とともにあるからこそ、その生活は美しく豊かなのだ。
Illustration by Harper Ouk
Yoshinao Yamada山田泰巨
Design and Architecture Journalist
1980年、北海道生まれ。ミラノデザインウィークなど国内外のデザインイベントをはじめ、国内外の建築、デザイン、アートの分野で豊富な取材経験を積む。雑誌『Casa BRUTUS』『ELLE DÉCOR JAPON』『GQ』などで編集や執筆を行う。また21_21 DESIGN SIGHTの展覧会『Material, or』の企画協力など、展示企画にも携わる。
- Photography by Osamu Yokonami
- Photography by Lam Yi Ling (Landscapes)
- Styling by Natsuko Kaneko
- Hair & Makeup by Tony Lundström
- Coordination by Miki Osako
- Special Thanks to Yukiko Yamane
- Film by Marcus Werner
- Text by UNIQLO
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