
アモルの接吻で蘇るプシュケ
アントニオ・カノーヴァ
意識を失い岩の上に横たわるプシュケという娘の傍らに、今まさに舞い降りた有翼の青年の名は、その翼と矢で一杯の矢筒からもわかる通り、エロス神(ラテン名はクピド)である。クピドの母にして美の女神であるウェヌスは、プシュケに、冥界から瓶を持ち帰るように、ただし決してそれを開けてはならぬと命じた。ところが好奇心を抑えきれなくなったプシュケは、恐ろしい煙を吸い込んだとたん、まるで死んでしまったように深く眠り込んでしまった。横たわったまま身じろぎもしない姿を見たクピドは、彼女のもとに駆け付けると、持っていた矢の先でそっとに触れ、死んでいないことを確かめる。彫刻家はこの瞬間を捉え、作品を生み出した。クピドは最愛のプシュケを優しく抱き上げ、自分の顔を相手の顔に寄せている。そしてプシュケはゆっくりと仰向けに倒れこみ、けだるそうに恋人の頭に手を回している。
Psyche Revived by Cupid's Kiss / Antonio CANOVA
© RMN-Grand Palais (Musée du Louvre) / René-Gabriel Ojéda