
今回、これまで以上に“シンプルなコレクション”を目指した理由を教えてください。
本当に必要とされる最小限のものを作り提供することが、私たちの目標だからです。そして、これを叶えるには、現代のニーズの背景を見つめ直さなければなりません。日々の暮らしの中での機能や新たな生活様式を、注意深く検証する必要があるのです。ひとつひとつのアイテムが単体で優れた機能性を発揮するだけでなく、それらを組み合わせて着ることで、さらに新しい機能を生み出すことのできるような「洗練されたワードローブ」とはどのようなものかを常に考えています。
常に追求している“新たなミニマリズム”。今シーズンはどのように表現されたのでしょうか。
裁断の方法や素材の性質などにこだわりながら、端的なわかりやすさを重視しています。実用的な美意識と洗練された色彩に導かれた、シンプルさと高度なクオリティ。そして、機能性を中心に据えることで、裁断やディテールのデザインが進化していきます。それによって、さまざまなシーンの装いに合わせて活躍できる衣服が生まれるのです。汎用性が高ければ高いほど、それは時を超えて愛される服となるでしょう。また、年齢や社会的背景、地域や文化の違いを超えて理解され、親しまれるような服づくりを目指しています。
ユニセックスのラインナップにこだわる理由をお聞かせください。
周りの人たちを観察していて感じるのですが、私たちの装いはごく自然に進化しています。そして、衣服はオープンなものだと思うのです。それは、ジェンダーの違いよりも、パーソナリティに関わるから。一人ひとりがどんな風に衣服を理解して、それぞれのワードローブに取り入れるか、というところに可能性を感じています。どのような装いをするべきかという社会的な規律も、かつてほど明確ではありません。人々が自由に、そしてクリエイティブに、衣服を身に着けるようになった今、コレクションの考え方が進化するのは、当然のことだと考えています。
最新コレクションのエッセンスを特に象徴するのは、どのアイテムでしょうか?
ポケッタブルロングコートですね。とても機能的で実用的、そして汎用性にも優れています。年齢やジェンダーの枠を超え、あらゆる人がそれぞれの着こなしを楽しめるようなアイテムです。
今シーズンのカラーパレットをデザインチームと、どのように作り上げましたか。
洗練された絶妙な中間色が、Uniqlo Uのアイデンティティです。いつも始まりは、直観的に心惹かれる色との出合い。それは大抵、アーティストの作品や写真の展覧会、映画やアートブック、そして街を行き交う人々の装いからインスピレーションを得ています。そこからちょうどいい色調とちょうどいい色の組み合わせを見つけ出し、馴染みやすく魅力的でありながらも、新鮮で刺激的なカラーパレットを完成させていきます。
今回のコレクションでは、多くのアイテムがカットソー(裁断と縫製)技術で作られています。これにはどのような背景があるのでしょうか。
これはとても自然なことで、人々の装いの大きな進化によるところが大きいです。例えばカットソーの代表的なアイテムであるTシャツは、今ではあらゆる人のワードローブに欠かせない、最も普遍的な衣服のひとつだと考えています。そして、大胆で遊び心に溢れたUniqlo Uの色彩を実現できるのが、カットソーの技術でもあります。これにより、デザインを手掛ける私たちは、新しいことに挑戦することができるのです。