100とは

ステテコ

ステテコ

思い切りのハグ

よく晴れた日曜日の朝、ニューヨークからアシャとニコがやってきた。しばらく、ポートランドで暮らすつもりだ。

僕らはダウンタウンにある、自然派スーパーマーケットに隣接されたデリカテッセンで遅めの朝食を取ることにした。

フルーツ好きのニコは、小さくカットされたいちごやメロンやオレンジを好きなだけボウルによそってご満悦だった。

「思い切りハグをして……」

サンドイッチを食べ終えたアシャが、僕のそばにやってきて言った。

「私のために。ニコのためにもね……。ハグに照れないで……」とアシャは耳元でささやいた。

僕の悪いクセは、ハグに照れてしまうことだった。特に家族に対するスキンシップは、照れを理由にスキップしてしまう時があった。

夫婦の仲の良い姿を、いつも子どもにたっぷりと見せること。これが二人の約束だった。それが子どもにとっていちばんのしあわせだと思っていたからだ。

子どもは些細なことでも不安になりがちだ。ニューヨークとポートランドに家族が離れて、しばらく会っていなかったからこそ、今、夫婦がしっかりとハグをして、互いに愛し合う気持ちを確かめる必要があった。

ニコが産まれてからというもの、僕とアシャは、どうやって育てていこうかと何度も何度も話し合ってきた。二人とも悩んだり迷ったりの連続だった。しかし、とにかくたくさん話し合って、二人の気持ちや考えを一緒にしようと努めた。

そうやって僕らが見つけた大切なこと。それは、将来のしあわせよりも、今日、今のこの瞬間が子どもにとってしあわせであるように精一杯、接しようということだ。

そして、親の期待を押しつけるのもやめよう。とにかく、自分たちが子どもと一緒にいる時間を、心から大切にしたいという気持ちでいようと。

僕はアシャをぎゅっと抱きしめ、そのまま彼女とハグを続けたまま見つめ合った。ニコのほうに振り向くと、ニコはプイと横を向いて嬉しそうに微笑んでいた。

そのあとに「おいで……」とニコを引き寄せて、ぎゅっとハグをして、「大好きだよ」と言って身体を離した。すると「もっとハグして!おかあさんよりも長く!」とニコは言った。

そんな二人の姿をアシャは嬉しそうに見つめていた。二人とハグをしたことで、僕自身の心もポカポカとあたたまり、それこそ、今、この瞬間が最高にしあわせなひとときとなった。

思い切りのハグ ストーリーイメージ

「やっぱりみんなで食べるのがいちばんおいしいね!」とニコは言った。

いつも元気なニコだけど、こんなふうに僕ら夫婦の仲の良い姿を見せると、もっと元気になって、顔色もぱっと明るくなるのだった。

お父さんはお母さんが大好き。そしてお母さんもお父さんが大好きであることを、目に見えるようにたっぷり見せることは、子どもにとってほんとうに安心できることだと改めて思った。

親は子どもを元気にし、また子どもは親を元気にしてくれる。それはまず、親が子どもの今この瞬間を、思い切りしあわせにしようとする気持ちがあってのことなのだ。

ステテコ

夏の必須アイテム

日本の伝統的下着として愛されたステテコをユニクロがアップデート。カジュアルで外ばきしやすいスクラブシャンブレー(無地 / ストライプ)、部分的に織りの変化をつけ、通気性と表面感が特徴のパナマチェック、伝統的な絞り染め、草木染めをイメージした和柄プリントシリーズ、ブルーをテーマにした北斎ブルーとミッキーブルー。そして新たに開発した「エアリズムメッシュ素材」を用いたエアリズムステテコ。

毎シーズン、素材や色柄バリエーションを豊富にご用意する夏のLifeWearです。

ステテコ
ステテコ

毎シーズン、素材や色柄バリエーションを豊富にご用意する夏のLifeWearです。

ステテコ

我が家のステテコ

幼い頃、父はよく僕を落語に連れていってくれた。落語のあとにおいしいものを食べさせてくれるのが実に嬉しかった。

寄席がある繁華街を、着物を着た父と二人で歩くのは大好きだった。好奇心旺盛だった僕は、見るものすべてについて、「あれは何?」「これは何?」と父に聞いては困らせた。しかし父はそのひとつひとつをていねいに答えてくれた。

ある日、いつものように落語を聞きに行ったとき、落語家の噺の中に「ステテコ」という言葉が出てきて、僕はその言葉の意味を父に聞いた。

「下着だよ。ほらお父さんもはいている」と父は言って、自分の着物の裾を開いて見せてくれた。「ああ、それのことなのかあ。ステテコって変な名前だなあ」と僕は笑った。

僕は落語の帰り道、「ステテコ、ステテコ」という噺家が歌うように言った言葉を憶えて、ずっと口ずさんでいた。父も一緒に歩きながら口ずさんでくれた。

そんなステテコの思い出がある僕だが、ポートランドにステテコを持ってきていた。もちろん着物の下にはく昔ながらのものではなく、リラックスウェアとして作られた、肌ざわりの良いコットン製のステテコだ。

これまで何人の外国人に「その気持ち良さそうなパンツはなんだ?」と聞かれたかわからない。その都度、「日本の昔からある下着のひとつで……」と言葉が詰まり、イージーパンツだの、ハーフパンツだのと説明するのだが、結局「ジスイズ・ステテコ」と言って、「ステテコはステテコでしかなく、これは日本の伝統的な日常着」と少し強引に説明をしていた。

今回、アシャもニコも自分のステテコを持ってきていた。そして、ジャックが借りてくれた家に戻ると、二人はすぐにステテコに着替えた。

「やっぱり夏は日本のステテコよね」とアシャは言った。

暑い日は、部屋の中で家族全員がステテコをはいている時があるが、まさかポートランドでもその光景が見れるとは思わなかった。

我が家のステテコ ストーリーイメージ

アシャが初めてステテコをはいた時のことを今でもよく憶えている。最初ははくのをためらっていたアシャだったが、ステテコに足を入れた途端に「わあ、気持ちいい。こんなに楽な部屋着は他にはないわね!」といたく感動して、それからはなんの抵抗もなく、いつしかお気に入りの服へとなっていた。故郷エチオピアにも似たようなパンツがあり、その懐かしさもあったようだ。

「ステテコは日本古来のルームウェアだけど、きっと世界中の誰もが気に入る服のひとつよね。生地や柄を選べば、外も歩けるわ」

ニコは、僕が教えた「ステテコ、ステテコ」をふざけて歌うように口ずさんでいた。

ステテコ

夏の快適を追求

ステテコならではのヒザ下丈に、やわらかくて心地よいコットン100パーセント素材を使用。生地が重なるポケット袋をメッシュにして、軽量感と速乾性を工夫。さらにウエストのゴム裏をパイル状にして肌当たりを軽減、フロントは前開きで便利です。

サラリと快適なエアリズムステテコは、ドライ、消臭、接触冷感、抗菌防臭、ストレッチなどの機能が満載。ボトムスの下にはいても邪魔になりません。ご自宅でのリラックスはもちろん、ワンマイルウェアとして、ジム帰りやシャワー後に、旅先などシーンに合わせて夏を快適に過ごせるアイテムです。

ステテコ
ステテコ

サラリと快適なエアリズムステテコは、ドライ、消臭、接触冷感、抗菌防臭、ストレッチなどの機能が満載。ボトムスの下にはいても邪魔になりません。ご自宅でのリラックスはもちろん、ワンマイルウェアとして、ジム帰りやシャワー後に、旅先などシーンに合わせて夏を快適に過ごせるアイテムです。

はいたらわかる。
その優れた心地よさ。
最初の感動はもっとすごい。

松浦弥太郎
ステテコ
098 MEN ホクサイブルー
ステテコ
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MEN ステテコ
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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