100とは

デニムジャケット

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育児とは

子どもが生まれた時、僕とアシャは、この尊い宝ものであるいのちに対して、かぎりない愛情はもちろんのこと、この子がこれからの未来を生きていくために必要なことはなんだろうか。僕らは何を与えていくべきなのか。それをよく話し合った。

まずはじめに確かめあったこと。それは、育児は二人でやっていこう。どちらか一人の役割ではなく、一緒に考え、分かち合い、支え合ってやっていこうということだった。

細かなことも含め、育児についていろいろと話していく中で、アシャが話してくれた印象的なことがあった。

「わたしね。子どもの頃、いちばん嬉しかったことって、おとうさんとおかあさんが仲良くしていることだったの。いちばん悲しかったのは、おとうさんとおかあさんが喧嘩したり、仲良くしていないことだった。二人が仲良くしていること。それはわたしにとって、もっとも安心できることだったの。きっとどんな子どもでも、その感じ方は同じと思うわ」

僕自身もそうだった。幼い頃、何がつらかったかというと、両親が言い争いをしているのをそばで聞いていることだった。不安で不安で仕方がなかった。そんな時は、まるで家が風吹く崖の上に建っていうようにドキドキして怖かった。

「だからね。わたしこう思うの。育児にいちばん大切なことって、夫婦がすごく仲良くしていることだって。この子が少しずつ大人になっていくにつれて、結婚っていいな。自分も早く結婚したいなと思えるように、そのお手本になれるかどうかわからないけれど、自分の家は絶対に大丈夫なんだ、と思ってもらえるように、安らぎを感じるように、わたしたちの日々の関係を見せることだと……」

「うん。そうだね。僕は母に言われたことで、こんな嬉しい言葉がある。それはある日、学校の成績が下から数えるのが早いくらいに悪かった時、『あなたはそのままでいいと思うの。おかあさんにとっては、ありのままのあなたがいちばん嬉しいのよ』と言われたんだ。このとき、勉強ができるとかできないとか関係なく、ありのままの僕のことを好きでいてくれんだという母の言葉に安心をしたんだよね」

「すてきな言葉ね……」

そう言ったアシャは、僕の手を握って、ベビーベッドですやすやと眠る赤ん坊を見つめた。

「そうは言っても育児ってむつかしいと思う。うまくできないことだらけだと思う。なぜならはじめてだから……」

育児とは ストーリーイメージ

「わたしのおかあさんが亡くなる前に、残してくれた手紙があるの。そこにはこれからのわたしたちに向けたおかあさんなりのアドバイスっていうのかな、育児や夫婦についてなど、そういうことがたくさん書いてあったわ」

アシャはそう言って、その手紙が入った封筒を僕に渡した。

デニムジャケット

絶妙なバランス

よりスタイリッシュなデザインに生まれ変わったデニムジャケットです。生地は、「コーンミルズ」社とユニクロが共同開発したオリジナル。デニム特有の美しいタテ落ちと、従来のデニムにはないストレッチ感を融合させた自慢の素材です。

ストレッチを入れすぎると、製品の加工や縫製時に歪んで波打ってしまうため、着心地のよさと縫製の仕立て栄えの両方を兼ね備えたベストバランスを探しました。

デニムジャケット

ストレッチを入れすぎると、製品の加工や縫製時に歪んで波打ってしまうため、着心地のよさと縫製の仕立て栄えの両方を兼ね備えたベストバランスを探しました。

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子どもに教えたいこと

封筒の中には、手紙と一緒に、一枚の写真が入っていた。

その写真はアシャのおとうさんとおかあさんが一緒に写っているものだった。おとうさんはデニムジャケットを着て、白いシャツにチノパンをはいている。おかあさんはレモン色のブラウスに白いカーディガンにデニムのパンツだった。写真の裏を見ると、アシャが生まれた年に撮られたものだった。

「この写真。ちょうど僕らと同じ歳くらいだね。アシャが生まれた時だから、今の僕らと同じタイミングだね」

僕はアシャのおとうさんのしあわせそうな表情をじっと見つめた。

「この頃って、おとうさんとっても苦労していたんだよね。でも、すごくしあわせそうな顔をしている。おかあさんと一緒にいることがすべてのちからになっていたんだね、きっと」

「うん。そうね……。デニムジャケットなんて着ちゃって」とアシャは笑った。

僕はおかあさんの手紙のある一節に目をとめた。そこにはこんなことが書いてあった。

「きっとこれから生まれてくる孫に向けて、あなたたち夫婦に教えておきたいこと。それはあなたたちの小さな子どもに教えてあげてもらいたいことです……」

ここまで読んだ僕は、つづきをアシャに聞こえるように音読した。

「人は一人ひとり違うということをしっかりと教えてあげてくださいね。この世界にいる人はみんなあなたと違うということ。同じ人なんかいないのです。人はみんな違う。だからこそ、自分の考えていること、思うこと、感じていることは、言葉にして伝えなければいけない。そして、その反対に、自分以外の人の言葉にしっかりと耳を傾けること。そして、その考えや思いを、よいわるいと判断せずに、理解してあげること。これが大切。子どもの時に、世界の人はみんな考えていることや思っていることが違うと教えてあげてください。子どもの成長、そして学びは、そこからはじまるのですから……」

僕が読んだ手紙を聞いたアシャは「小さい頃のことを思い出すわ……。このことって、おかあさんによく言われたことよ。人はみんな違う。違うからあなたの思い通りにしようとしたらだめ。よく話し合って、人のことを知りなさい、理解しなさいって。そうやって世の中を見つめなさい、と」

「ほんとうに大切なことだね……」。僕はアシャが、いつも人の話しをよく聞こうとする姿勢や、自分の価値観を人に押し付けようとしないことの理由がよくわかった。

子どもに教えたいこと ストーリーイメージ

「ね、写真撮らない。うちの両親みたいに」

アシャは、窓の近くの棚に、フィルムの入ったカメラを置いて、セルフタイマーをセットした。

「あ、待って!」と言って、僕はクローゼットからデニムジャケットを取り出して羽織った。

僕とアシャは手をつないでカメラの前に立った。

カシャンとシャッターが降りたとき、この写真には、どんな自分の顔が写ったのだろうと思った。

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細やかな表情

ユーズド感のあるリアルな表情は、ユニクロが誇るロサンゼルスの「ジーンズイノベーションセンター」で色味を作り上げたもの。袖や背面の色落ちなど細やかに調整し、店頭に並ぶデニムジャケットすべてが個体差なく同じクオリティになるようにこだわりました。また、身頃の加工や色によってステッチカラーを変えているのもポイント。

たとえば68カラーのワンウォッシュには新品のような濃いめの金茶、63カラーには加工した色に合うような色あせたものを使用。カジュアルはもちろん、チノパンやトラウザーに、インナーはハイネックやモックネックなどを合わせた大人のきれい目カジュアルで着ていただくのもおすすめです。

デニムジャケット

たとえば68カラーのワンウォッシュには新品のような濃いめの金茶、63カラーには加工した色に合うような色あせたものを使用。カジュアルはもちろん、チノパンやトラウザーに、インナーはハイネックやモックネックなどを合わせた大人のきれい目カジュアルで着ていただくのもおすすめです。

清潔感があって、
着ていて疲れない、
こんなデニムジャケットが、
ほしかった。

松浦弥太郎
デニムジャケット
086 MENデニムジャケット
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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