100とは

ハイライズストレートジーンズ

ハイライズストレートジーンズ

結婚とは

アシャと出会って六年と三ヶ月。そのうちの五年は遠く離れていたけれど、互いの心の隅っこから、相手の存在が消えることはなかった。今思えば、その五年が僕らのきずなを確かめさせたのだ。決して無意味な五年ではなかった。

「ねえ、わたしたちこれからどうする?」

ある朝、目を覚ますと隣にいたアシャがこう言った。

「うん。そうだね。一緒にいよう。いや、一緒にいたいな」と僕は答えた。

「それってプロポーズ?」と言って、アシャは笑った。

「うん。まあね」と僕は答えた。

僕は、ベッドの横に置かれた花瓶に挿してあったチューリップを一輪抜き、黙って両手でアシャに渡した。

アシャは僕の目をじっと見つめてから、両手で受け取り、「ありがとう……」と小さくつぶやいた。そして、「コーヒーを淹れるわ」と言って、キッチンに立った。

僕とアシャの結婚はこうして決まった。

不安と心配は人一倍あった。いや、二倍も三倍もあった。現実的にこれから二人でどんなふうにやっていくのかなど、なにひとつ決めていなかったし、結婚してからのことは、わからないことだらけだった。けれど、だからといって二人が離れるイメージは互いに微塵もなかった。

「ただ一緒に手をつないで歩いていくだけよ」

アシャがぽつりとこう言った時、不安や心配は考えれば考えるほどに膨らんでいくけれど、僕の心の中には迷いがないのがわかった。

これまで僕はアシャと何をしてきたのか。そうだ。僕らは一緒に歩いてきたのだ。

雨の日も風の日も、荒れた地面や坂道、時には地面に手をつきながら。それでも一緒に歩いてきた。知らない街の知らない道を、遠くにかすかに見える光に向かって、ふたりでゆっくりと歩いてきた。はげましあい、支え合い、生かしあいながら、手をつないで歩いてきたのだ。

だから、これからも歩いていく。いや、アシャと一緒に歩いていきたい。そう思った。

結婚とは ストーリーイメージ

不安なく心配のない道であれば、一人で歩けばいい。そうではないから、僕らは二人で歩いていくのだ。

「準備? そんなもの必要ないわ。迷いがないなら今、出発よ」

アシャはよくそう言って、即行動に移す人だった。そうやって、自分の人生を切り拓いていた。失敗も挫折を恐れずに。

「ただ一緒に手をつないで歩いていくだけよ」

これが僕らにとっての結婚だった。

ハイライズストレートジーンズ

美しいストレートシルエット

どなたにも美しく着こなせるストレートシルエットが自慢の、ハイライズストレートジーンズです。ストレートフィットに最適な12.5オンスの肉厚な生地は、体のラインを拾わずにまっすぐな脚のラインを演出。ストレートがもっとも表現できるレングス設定にもこだわりました。

リラックスフィットながら、ウエスト、ヒップ周りがすっきり見えるデザインとパターンを何度も試作、フィッティングを繰り返してたどり着いたフォルムです。

ハイライズストレートジーンズ
ハイライズストレートジーンズ

リラックスフィットながら、ウエスト、ヒップ周りがすっきり見えるデザインとパターンを何度も試作、フィッティングを繰り返してたどり着いたフォルムです。

ハイライズストレートジーンズ

オキーフの言葉

アシャはいつもコーヒーを片手に、その日のコーディネートをあれこれと決めるのが好きだった。

「ねえ、見て、このデニム。すてきでしょ。オキーフっぽくない?」

アシャは、白いTシャツを、ハイウエストでストレートなデニムにタックインして僕に見せた。

アシャはアメリカを代表する画家のジョージア・オキーフを敬愛していた。オキーフのシンプルな服の着こなしには、服作りにおいてかなり影響を受けていて、特に若い頃のデニム姿が大好きだったようで、昔に撮られたオキーフのそんな写真は額装して飾るほどだった。

「ねえ、わかる? オキーフがデニムをはいてオートバイの後ろに乗っている写真とか、ほら、牛の頭蓋骨を手にして立っている写真。どちらもハイウエストなデニムでかっこよくて、かわいいのよ」

大好きなオキーフのことを語り始めるとアシャは止まらなかった。

オキーフがオートバイの後ろに乗っている写真は僕も大好きだったのでよく憶えていた。

「裾を膝下まで無造作にロールアップしていて、白いスニーカーをはいていたよね。彼女がニューメキシコでヒッチハイクしたときの写真でしょ」

「そうそう、ストレートで太いデニムだからこそ、ハイウエストがかわいいのよ。牛の頭蓋骨を持った写真はシャンブレーのシャツをタックインしてカーディガンを着ているんだけど、そのコーディネートも大好き」

アシャは鏡の前でデニムのウエストをぐっと上げて、「今ってこういう気分よね。ちょっと前はスケーターみたいに腰ばきもしたけど」とつぶやいた。

僕はアシャの言葉にうなずくことができた。確かにそうだ。特に女の子は、ストレートで太めのデニムを、ウエストでぎゅっと絞ってはくくらいが今はすてきに見える。トップスもゆったりしたブラウスやTシャツを合わせるほうがいい。

オキーフのように、白いキャンバスのスニーカーを合わせて、アシャはご満悦だった。

画家のジョージア・オキーフの、自分のやりたいことをやり抜く強さは、コーディネートを真似して楽しんでいるアシャにも備わっていた。

オキーフの言葉 ストーリーイメージ

「成功するかしないかは全く関係ありません。大切なのは、自分が知らなかったことを知るということ」。

オキーフが残したこんな言葉を、アシャは心から大切にしていた。

これから一緒に歩いていく。僕とアシャは、ただそれだけでしあわせだった。

ハイライズストレートジーンズ

ヴィンテージのような風合い

生地は世界に誇る日本屈指のデニムメーカー、カイハラ社と開発した最高品質デニムを使用。ヴィンテージデニムにも匹敵する本格的な見た目ながら適度なストレッチ性を持ち、快適なはき心地です。

表情を決定づける加工は、ユニクロが開設したロサンゼルスの「ジーンズイノベーションセンター」で徹底的に研究。数十バージョンに及ぶサンプルからベストな色を選び商品化しました。手に取った瞬間に最高の風合いを楽しんでいただけるはずです。

ハイライズストレートジーンズ

表情を決定づける加工は、ユニクロが開設したロサンゼルスの「ジーンズイノベーションセンター」で徹底的に研究。数十バージョンに及ぶサンプルからベストな色を選び商品化しました。手に取った瞬間に最高の風合いを楽しんでいただけるはずです。

すてきなあのひとは、
歩くのが好き。だから、
デニムが似合うんだ。

松浦弥太郎
ハイライズストレートジーンズ
083 WOMENハイライズ
ストレートジーンズ
(丈標準72cm)
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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