100とは

EZYアンクルパンツ

EZYアンクルパンツ

安らぎの場所

コーヒースタンドのカウンターというのは、どうしてこう落ち着く場所なのだろうか。しみじみとそう思った。

マグカップに注がれたコーヒーを一口飲み、隣に座っているアシャを見た。アシャは、カウンターの上に置いた両手の上にあごをのせて、目をつむっていた。久々に帰ってきたニューヨークの喧騒を懐かしむように。

何かあるたびに僕は、街のいたるところにあるコーヒースタンドに救われてきた。あてどなく道を歩きながら、昔ながらのコーヒースタンドを見つけ、カウンターの席が空いていると、なんだかほっとする自分がいた。僕のような外国人でも、そこに居てもいいと許される場所のように感じたからだ。

「カウンターの席って落ち着くよね。私、いくらでも居られるわ。一人でも不思議とさみしい気持ちにならないから」

アシャがぽつりと言った。

「うん。こうして二人で居ても、隣あって座っているからか、何も話さなくてもいいというか、ぼんやりできるし。コーヒースタンドのカウンターは都会に暮らす人にとって、もうひとつの家のような場所かもしれないな」

コーヒースタンドには、あらゆる人が訪れる。二時間もカウンターに座っていればそれがよくわかる。タクシードライバー、旅人、警察官、忙しいサラリーマンや学生、そして老人。いくあてのない人など様々だ。彼らは一杯のコーヒーが目当てなのではない。人生の休息、いや、今日の安らぎを求めてやってくる。

カウンターに座り、注文したコーヒーを一口飲んで、ふーとため息をつく横顔にはそんな心境が現れている。そう。皆、同じように、場末のコーヒースタンドに救われているのだ。

「アシャ。そろそろ行こうか。MOMAがオープンしたはずだよ」

「うん。でも、もう少しここに居たい……」

僕が声をかけると、アシャはうとうとしながら答えた。何年かぶりのニューヨークだ。アシャもきっと安らぎを味わっているのだ。

僕はもう一杯、コーヒーを頼んだ。ふと外に目をやると、店の前を、馬に乗った警官が通り過ぎていった。その時、一瞬、僕は馬と目が合った。

安らぎの場所 ストーリーイメージ

昔ニューヨークに来た頃、早朝のミッドタウンをあてどなく歩いていたとき、ビルの一角に厩舎があるのを見つけて驚いたことがあった。こんな大都会に厩舎があるなんてと。レンガの壁に小さく開いた窓から、一頭の馬の瞳が見えたのだ。

馬は少し離れたところから僕をじっと見つめていた。僕は窓に近づいて馬に手を伸ばした。馬は小さく首を振りながら近寄ってきた。

すると、馬の世話をしていた警官がやってきて、僕に「やあ、おはよう」と言い、馬を厩舎の奥に連れていった。

今、店の前を通り過ぎた馬は、あの時の馬ではなかろうか。きっとそうだと僕は思った。

EZYアンクルパンツ

あたらしいシルエット

ウエストはゴムベルトとスピンドル(ウエストを絞るヒモ)のイージー仕様、さらにベルトループもついたEZYアンクルパンツ。新たに仲間入りした“リラックスフィット”は、モモ周りをゆったり、ひざ下をテーパードさせたリラックス感あるニューシルエット。あらゆる体型、年代のお客様にはいていただいた時に、ただ大きいだけになっていないか、だらしなくなっていないかを徹底的に検証して完成しました。

生地は伸張率20パーセント、伸張回復率65パーセントの高いストレッチ性を誇る、織りの目の深いツイル素材を使用。先が丸い縫製針、糸切れしにくい縫製糸を使い、きれいな仕上げにもこだわりました。

EZYアンクルパンツ

生地は伸張率20パーセント、伸張回復率65パーセントの高いストレッチ性を誇る、織りの目の深いツイル素材を使用。先が丸い縫製針、糸切れしにくい縫製糸を使い、きれいな仕上げにもこだわりました。

EZYアンクルパンツ

パンツと靴

コーヒースタンドは賑わっていた。若い店員がカウンターの中で忙しそうに働いていた。

彼は、少し大きめの白いTシャツに、ネイビーのくるぶし丈のパンツ。そして真っ白なスニーカをはいていた。

じっと見つめる僕に気がついた彼は、愛想よく僕にウインクをして、「何か追加の注文ありますか?今、ドーナツが揚がりましたよ」と言った。

「うん。ドーナツをもうひとつください」と言うと、彼は「わかりました。あなたのシャツはとてもクールですね」と言った。

その日の僕は、自分にとっての定番であるストライプのシャツを着ていた。

「君の服もすてきだなと思って見ていたんです。パンツがとても似合ってますね」と言うと「これが僕の定番なんです。仕事の時も、デートの時も、いつもこのネイビーのパンツをはいているんです」と彼は言った。

「僕にとってのこのシャツもそうなんです。自分の定番をほめられると嬉しいよね」

僕がそう言うと、少し離れたところから、僕のシャツをもう一度眺めて「うん。よく似合っている」と笑顔で言った。

彼のパンツは太すぎず細すぎず、足首が少し見える丈のせいで、すっきり見えて、トップスにどんな服を持ってきても、バランスがとれる、まさに定番にしたいパンツだと思った。

そんなやりとりを隣で聞いていたのか、「やっぱり男の人の着こなしで大事なのはパンツよ。そして靴もね」とアシャが口をはさんできた。

「たしかに靴も大事。着こなしにおいて、靴とパンツはいつもセットなんだ。要するに、いいパンツをはく。これは基本。で、そのパンツに合ったいい靴をはく。パンツと靴のバランスが悪ければ、着こなしのすべてが台無しになる。僕はそう思っている」と彼は言って、皿に載せたドーナツを僕の目の前に置いた。

「女性の場合はどうなのかしら?」とアシャが聞くと、「うーん。これはあくまでも僕の持論だけど、女性は髪型かな。髪をきれいにまとめていたり、とにかく髪型をエレガントにきちんとしていれば、あとはどんな服を着ていても、すてきに見えるんだ。僕は毎日ここでいろんな人を観察しているからわかるんだ」

パンツと靴 ストーリーイメージ

「髪ね。たしかにそうかもしれない」と僕が言うと、「男の人はそう見ているのね」とアシャが言った。

「さあ、そろそろMOMAに行こう」と僕はアシャに声をかけて、ドーナツを頬張った。

「何を観るんだい?」と彼が聞いたので「ジャクソン・ポロック!」と僕とアシャは声を揃えて答えた。

すると彼は親指を立てて、満面の笑顔でうなずいた。

EZYアンクルパンツ

クリーンな素材感

ウールのような上質感のある素材を用いた“ウールライク”は、表面に起毛加工することで、よりふくらみのあるソフトな風合いに。洗濯後もシワになりにくく、手入れが簡単なイージーケアをプラス。さらにストレッチ性もありはき心地は抜群です。アンクル丈だからこそ実現したすっきりとした裾幅は、革靴、スニーカー、サンダルと様々なシーンにフィット。

今季はセンタープリーツを入れることでより立体的できれいなシルエットに仕上げました。縫い目を利用したポケットは開きにくく、サイドラインを美しく見せてくれます。ウエストに使用しているゴムベルトは、表地の色、素材と完全に一致しているので、ベルトなしでのタックインもスタイリッシュに。夏のビジネスウェアとしても活躍間違いなしです。

EZYアンクルパンツ
EZYアンクルパンツ

今季はセンタープリーツを入れることでより立体的できれいなシルエットに仕上げました。縫い目を利用したポケットは開きにくく、サイドラインを美しく見せてくれます。ウエストに使用しているゴムベルトは、表地の色、素材と完全に一致しているので、ベルトなしでのタックインもスタイリッシュに。夏のビジネスウェアとしても活躍間違いなしです。

いいパンツは、
どんな服にも合う。
いつでもどこにでも、
はいていける。

松浦弥太郎
082 MENEZY
アンクルパンツ
(ウールライク・
丈標準65~71cm)
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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