100とは

コンフォートジャケット

コンフォートジャケット

パリのおしゃれ

パリでのアシャの五年間は、長いようで短いものだった。

レネーさんと一緒の住まいはマレ地区にあり、パリ生活を楽しむには充分過ぎる環境だった。娘を病気で亡くしたレネーさんにとってアシャは娘と同様で、五年間という月日において、何一つ不自由のない暮らしを彼女に与え続けた。

「ここで服作りを好きなだけ学びなさい」。レネーさんはアシャにそう言った。

アシャは服作りを学ぶために、ある小さな洋裁店で働き始めた。まずは服のための裁縫の基本を身につけたかったのだ。そして、夜はフランス語の教室に通った。時間があれば美術館を観てまわり、街を歩き、ニューヨークでは感じられなかった、パリならではのファッションの有り様に刺激を大いに受けた。

最初にアシャが驚いたのは、パリに暮らす女性たちの価値観だった。それは着飾ることよりも、趣味や人付き合い、休暇といった日頃の暮らしのことを大切にしていて、ニューヨークの女性に比べて、服で自己主張する意識がパリの女性には少ないことだった。

流行よりも自分の価値観を大切にしていて、トレンドというよりも、シンプルで質のよい服を選び、いつも同じような服を着ている。そんな自分のスタイルを持つ女性がパリには多かった。

「昨日買ったばかりとわかる服を着ることくらい恥ずかしいことはないわ。どこのブランドかわからないような、質素で上質な普段着がいちばん楽で心地よいの」

洋裁店で一緒に働く女性がアシャにこう言った。

「おしゃれで新しい服は欲しくないのですか?」ときくと、「それよりもボーイフレンドと郊外にドライブするほうがいいわ」と女性は笑って答えた。

その女性は、いつもクルーネックのカシミヤニットの上にジャケットを羽織り、パンツスタイルだった。そんな着こなしも髪型もメイクもすべて彼女らしさに溢れていた。

「このジャケットはボーイフレンドが着ていたものを借りてるの。サイズが私にぴったりだから。パリではメンズの服を着る女性も多いのよ」

パリのおしゃれ ストーリーイメージ

アシャはそんなふうに話す彼女がうらやましかった。そういえばいつかの自分もニューヨークで付き合っていた彼の服をよく着ていたっけ、と思い出した。

アシャがすてきだと思ったのは、パリの人は男女問わず、普段着としてジャケットを着ている人が多かったことだ。だからか、不思議と皆、大人っぽく見えた。

いいジャケットが欲しいな。アシャははじめてそんなふうに思った。

コンフォートジャケット

超快適ジャケット

軽くてやわらかくてシワになりにくい、超快適なコンフォートジャケットです。一番のこだわりは生地にあります。着心地の良さを追求し、ソフトで伸縮性のあるジャージ素材でありながら、メンズジャケットの仕立てでも存在感を発揮するハリのある厚みを持ち合わせた、絶妙なバランスの生地です。

伸縮性のある生地は縫製とアイロンがけの難しさもありましたが、ミシンの糸調整や仕上げの方法を何度も検証して課題をクリア。そうして完成させた自信作なのです。

コンフォートジャケット
コンフォートジャケット

伸縮性のある生地は縫製とアイロンがけの難しさもありましたが、ミシンの糸調整や仕上げの方法を何度も検証して課題をクリア。そうして完成させた自信作なのです。

コンフォートジャケット

やさしくあるために

パリではジャケットの似合う男性がたくさんいる。アシャにとってそれは新しい興味だった。

「いつもすてきなジャケットを着てますね。ジャケットをすてきに着こなす秘訣ってあるんですか?」

ある日、アシャは行きつけのカフェで出会った四十代の男性にこう話しかけた。

「おかしなことを聞くんだね。あなたは驚くかもしれませんが、このジャケットは高いものではありません。いや、どちらかというと安い部類のものです。けれども、生地がなかなかよいので気に入ってるのと、着こなしの秘訣は自分の身体に合ったサイズを選ぶことですよ。あとはそうだね、どこに行くにも着ていくことだね。とにかくたくさん着ていれば、自然と自分に合ってくる。友だちや恋人と一緒だよ。毎日会っていればいつしか仲良くなるでしょう。ジャケットも一緒ですよ。服は飾るものではなく着るものだから」

男性はそう言って、アシャにウインクした。

パリのカフェはオープンな雰囲気に溢れ、二三回通えば、すぐに顔見知りができて、話し相手もできる。一人で来ている人が多いのもパリらしく、アシャは近所のお気に入りのカフェが大好きになった。

アシャは、ジャケットを着るパリの男性のちょっとした振る舞いにも好感を持っていた。
店でえばってみたり、大きな声で話したりしない紳士的な人ばかりだったからだ。

「ジャケットを着ると、もっと女性にやさしくありたいと思いますね。そんなふうに、ジャケットが、自分の立ち居振る舞いを整えてくれるってこともあるかもしれませんね」

男性はそう言って、アシャの手の上に自分の手をのせ、「それではまた」と頬に小鳥のようなキスをして立ち去った。

やさしくあるために ストーリーイメージ

着慣れた服を着ているだけだよ。それよりも週末をどんなふうに楽しく過ごそうか考えようよ。君がうれしいことをしようよ。

別れ際にアシャは男性にこう囁かれて、ドキドキしてしまった。

おしゃれをしようとしていない人が、おしゃれなパリ。アシャはそんなパリが好きになっていた。

この街が自分に合っているように思えた。

コンフォートジャケット

あらゆるシーンに

シンプルで無駄のないデザインにすることで、カジュアルなスタイリングからクリーンなビジネススタイルまで対応できるジャケットに仕上げました。

さらに汗をかいても乾きやすいドライ機能もプラス。シワになりにくい素材なのでバッグに入れて旅先でも活躍します。様々なシーンに寄り添うLifeWearです。

コンフォートジャケット
コンフォートジャケット

さらに汗をかいても乾きやすいドライ機能もプラス。シワになりにくい素材なのでバッグに入れて旅先でも活躍します。様々なシーンに寄り添うLifeWearです。

毎日着たくなる
こんなジャケットが
欲しかった。

松浦弥太郎
077 MENコンフォート
ジャケット
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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