100とは

ハイウエストチノワイドストレートパンツ

ハイウエストチノワイドストレートパンツ

約束の場所

待ち合わせ場所の「コーヒーショップ」に、アシャは、まだ姿を現さなかった。彼女はここに来るのだろうか、来ないのだろうか、僕にはわからなかった。

たまたま居合わせた老人が、僕に旅の話を続けた。

「私は三十歳の時、中国の上海を訪れました。そこで一人の中国人の女性と出会い、恋に落ちたのです。しかし彼女の家は厳しくて、アメリカ人の私との交際を許してくれなかったのです。上海で一緒にいられない私たちは、外国への旅を計画したんです。最初はパリへ行きました。パリでは半年ほど一緒に過ごし、毎日が夢のような日々でした。パリで私たちはずっと一緒にいられるしあわせを噛み締めたのです。彼女は料理が上手で、どこに行っても市場を見つけて、そこで新鮮な食材を買い、泊まっているキッチン付きの部屋で毎日料理をしてくれました。おいしかったです。家庭料理というのはいいですね。それまで私は、毎日ハンバーガーやサンドイッチで空腹を満たすためだけに、飲み込むように食べてきました。それが、彼女のおかげで野菜炒めやスープ、ご飯といった、香りを嗅ぎ、食感を楽しみ、よく噛んで味わうという食生活に変わったのです。私はその時、人生が変わったと思いました。こんなに体調がよくなると思わなかったのです。それから私たちはロンドンへと向かいました」。

老人は遠い目をしながら旅の話をさらに続けました。

「こんな人と家庭を作れたら、なんてしあわせなんだろうと思いましたね。医食同源という中国人の食の知恵は素晴らしいです。どんな時でもからだを冷やす食べ物を食べない生活というのでしょうか。それだけで私の体調はほんとうによくなりました。体調がよくなると、心も明るくなり、人を思いやる気持ちも湧くのです。人生が楽しくなるのです」

「ロンドンではどんなふうに過ごしたのですか?」と僕は聞いた。

「ロンドン……。実は、私たちにとってロンドンは悲しい場所になったのです。ロンドンに到着すると、彼女の両親が待っていたのです。というのは、彼女は心配をかけないために両親に旅行の予定を伝えていたのです。中国人は家族をほんとうに大切にしていますので常に連絡をしていました。でも、まさか両親が私たちを待っているなんて思いませんでしたから、びっくりしました」

「それでどうしたんですか?」。老人の話の展開に引き込まれた僕は結末が気になった。

「両親は彼女を上海に連れて帰るつもりでした。私との交際を反対していましたからね。彼女は私との別れを悲しみましたが、両親を悲しませることはできないと上海に帰る決心をしました。そのとき、彼女はこう言ったのです。『必ずまた会いましょう。あの場所で……』と。僕らには約束の場所があったのです。それはいつかのパリでした」

約束の場所 ストーリーイメージ

「二人がよく過ごしたリュクサンブール公園の池のまわりのベンチが僕らの思い出の場所でした。私たちは一年後、そこで落ち合う約束をしたのです。彼女は私を愛してくれていたので、そこでもう一度会って、旅を再開しようと。それまでに両親を説得すると約束したのです」

僕は、老人の話が、僕とアシャとの関係と重なっていて驚いた。そして思わずこういった。

「僕の話も聞いてもらっていいですか?」

ハイウエストチノワイドストレートパンツ

トレンドのシルエット

旬なシルエットにストレッチ性を加えたハイウエストチノワイドストレートパンツです。生地は適度な肉厚感のあるコットンツイルのチノ素材を採用。表面を少し起毛させることで生まれる上品な風合いが魅力です。

ウエスト周りは女性らしい立体感をキープしつつ、膝から裾にかけて細くなるテーパード仕様。全体的にすっきりとした印象に仕上げました。さらにハイウエスト&ジャストレングスの縦長シルエットは、脚長効果もあります。

ハイウエストチノワイドストレートパンツ
ハイウエストチノワイドストレートパンツ

ウエスト周りは女性らしい立体感をキープしつつ、膝から裾にかけて細くなるテーパード仕様。全体的にすっきりとした印象に仕上げました。さらにハイウエスト&ジャストレングスの縦長シルエットは、脚長効果もあります。

ハイウエストチノワイドストレートパンツ

運命のいたずら

「そうか。その彼女を約束したのが今日で、しかも、待ち合わせ場所はここなんですね。それはそれは奇遇というか、私と会ったのも不思議な縁ですね」

老人はコーヒーをひとくち飲んで、何度もうなずいてから、僕の目を見てこういった。

「それで彼女はまだここに来ていないってことですね。待ち合わせの時間を過ぎているのに」

「はい。まだ来ていません。僕らには五年という長い歳月が経ってしまったので彼女が来るのかわかりません。けれども、ずっと僕は彼女が来てくれると信じていました。だから、待ち続けようと思っています」

「待ち合わせ場所で思いつく場所は他にはありませんか?」と老人はきいた。

「実はパリで会えなかったのです。彼女とリュクサンブール公園の池のまわりのベンチで待ち合わせしたのですが、いつまで待っても彼女の姿はなかった。もしやと思って、私は次の日も一日中待ちました。けれども、彼女はやってこなかった。そうして、私と彼女は再会することが叶わなかった。しかし、後になってわかったのですが、彼女は別の場所でずっと僕を待ち続けていたんです。彼女の勘違いだったのですが、リュクサンブール公園には天門の泉という噴水があって、そこで彼女はずっと私を待っていたのです」

「だから、もう一度聞きます。二人にとっての思い出の場所が他にありませんか?と。もしやそこで彼女はあなたをずっと待っているかもしれませんよ」

老人は私のひざに手を置いて、まるで自分のことのように話してくれた。

「ストロベリーフィールズ……。セントラルパークのストロベリーフィールズ」

僕は二人にとってのもうひとつの思い出の場所を思い浮かべた。

「私はまだこのカフェにいる。あなたの彼女らしき女性が来たら、声をかけて待つように言うから、あなたはセントラルパークに行きなさい。私たちのようにちょっとした運命のいたずらで愛する人を失ってはいけません。ほら、早く!」

そういって老人は僕の背中を叩いた。

運命のいたずら ストーリーイメージ

僕はタクシーに乗って急いでセントラルパークを目指した。

着いたストロベリーフィールズは、観光客や地元の人で一杯だった。アシャがここにいるかもしれない……。そう思って彼女の姿を僕は探した。

アシャはどこにもいなかった。

呆然と立ち尽くしている僕の目の前を、アシャが好きでいつもはいていた、たっぷりしたサイズで、丈が短めのチノパンをはいた女性が通り過ぎた。背が低く、やせていたアシャは、あのチノパンがよく似合っていたのを思い出した。見ると、その女性は彼氏とここで待ち合わせをしていたようだった。

チノパンをはいた女性の後ろ姿に、僕は在りし日のアシャの姿を重ね合わせると、ぐっと寂しさが湧き上がってきた。

すてきなカップルだった。

ハイウエストチノワイドストレートパンツ

品よく心地よく

細くて繊細な両玉縁ポケット、ステッチは目立たないように抑えて、きれい目にはいていただけるように工夫しました。腰裏にはスレーキ(裏布)を使用した本格的なつくりも自慢です。体型を選ばないワイドストレートシルエットには、タイトめもしくはややゆったりめのトップスを合わせてメリハリある着こなしのバランスがおすすめ。

シンプルなディテール、洗練されたデザインなので上品なニットも、カジュアルなTシャツにも相性よく、幅広く楽しんでいただけるはずです。

ハイウエストチノワイドストレートパンツ

シンプルなディテール、洗練されたデザインなので上品なニットも、カジュアルなTシャツにも相性よく、幅広く楽しんでいただけるはずです。

カジュアルだけど、
ちょっぴりエレガント。
今年の私っぽさ。

松浦弥太郎
ハイウエストチノワイドストレートパンツ
076 WOMENハイウエストチノ
ワイドストレート
パンツ
(丈標準69~71cm)
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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