100とは

ウルトラライトダウンジャケット

ウルトラライトダウンジャケット

おそろいのダウン

ここ数日のアシャはいつもと違っていた。

カフェのバイトから帰ると、なんだか一人で思い悩むように、ぼんやりしている時間が多かった。窓の近くに椅子を置いて、そこに座ったアシャは、いつまでも窓の外をじっと眺めていた。

「どうしたの? 何か悩みでもあるの?」

「ううん、大丈夫。少し考えたいことがあるだけよ。心配しないで」

「もし何かあったらいつでも話してごらん」

「ありがとう。その時は相談するね……」

アシャはそういうと、小さく深呼吸して、また窓の外に目を向けてぼんやりした。

僕は、ジャックと進めていた古書を扱う仕事が順調に進んでいて、自分の顧客も広がりつつあり、毎日が仕事で充実していた。最近は、高額で貴重な古書の取引を目前に控えていて、少しナーバスにもなっていた。

僕はアシャにできるだけ自分の仕事について話すようにしていた。しかし、アシャは僕の話を聞いても、「そうなんだ。よかったね、がんばってね……」というだけで、すぐに自分だけの世界に戻ってしまう状況だった。

なんだか二人の関係が近いようで遠い雰囲気であることを感じた僕は、ある日、アシャを誘って、セントラルパークの散歩に出かけた。その日は冬を感じさせる寒さがあり、僕とアシャは、今年最初のダウンジャケットを着る日になった。

「今年最初のダウンだ」

「うん、そうね。あったかくして出かけよう」

「マフラーはいるかな?」

「そうね、セントラルパークはきっと寒いからマフラーをしていきましょう」

アシャと僕のダウンは、同じサイズの色違いだった(アシャは大きめを着るのが好きだったから)。いつか買い物をしたとき、「色違いで揃えておけば、その日の気分で選べるからいいね」とアシャが言って、僕らはブラウンとグレーを選んだ。

「私はグレーであなたはブラウンね。時々、交換しましょ」とアシャはいった。

木枯らしの舞うセントラルパークウエスト通りを、僕とアシャは手をつないで歩いた。

映画「ゴーストバスターズ」の舞台になった、アールデコ様式の55セントラルパーク・ウエスト・アパートメントは、アシャの好きな建築物で、この前を通るたびに「いつかここに住みたいな」とアシャはつぶやいた。

おそろいのダウン ストーリーイメージ

「ねえ、あなたに相談があるの……。私どうしたらいいかわからないことがあるの……。話してもいいかしら」

アシャは僕の手をぎゅっと握ってからいった。

ウルトラライトダウンジャケット

とまらない進化

抜群のあたたかさと軽さ、さらにスタイリッシュに進化したウルトラライトダウンジャケットです。空気を内包し、高い保温力を持つふわふわのダウンを90パーセント、ハリと膨らみを生み出すフェザーを10パーセントで配合。羽毛のかさ高性を示す単位「フィルパワー」の数値は、一般的に550以上が高品質とされていますが、ウルトラライトダウンは640以上。驚きの軽さと保温効果が自慢です。

表地はマットで極細のナイロンマットタフタ生地、キルトの幅を少し狭くすることで洗練されたルックスに仕上げました。

ウルトラライトダウンジャケット
ウルトラライトダウンジャケット

表地はマットで極細のナイロンマットタフタ生地、キルトの幅を少し狭くすることで洗練されたルックスに仕上げました。

ウルトラライトダウンジャケット

冬のパリ

僕とアシャは、セントラルパークの大きな樫の木の下に置かれたベンチに腰掛けた。

「この前のおばあちゃん覚えている? ほら、カフェで出会ったセーターを着たおばあちゃん。娘さんを病気で亡くした……」

「うん、覚えている。アシャのこと大好きになって、それから毎日のようにカフェに来てたって言ってたよね」

「あのおばあちゃん、英語が上手だけど、実はフランス人で、ニューヨークのアパートを売ってしまって、来月パリに帰るんだって」

「そうなんだ。さみしくなるね。アシャは自分のおかあさんのように慕っていたから」

「あのね。私が服作りの勉強をしていることをおばあちゃんに話したら、とても喜んでくれたから、いくつか私の作った服をプレゼントしたの。そうしたら、とっても感激してくれて、その服をいろんな人に見せたらしいの」

「アシャの服は、シンプルで心地よいから、おばあちゃんとかが着やすい服だもんね。よかったね、喜んでくれて」

「うん、でね、服作りをするならパリに行くべき。私と一緒にパリで住まない?って誘われたの。おばあちゃんのいとこが、パリで有名なブランドの会社を経営してるから、そこで働きながら学べばいいって……」

僕はびっくりしたのと同時に、ここ数日、アシャが思い悩んでいた理由が、このことだったとわかった。

「おばあちゃんはいつパリに引っ越すの?」

「来月よ。すべて面倒みるから、あなたは身一つで来ればいいわ、といってくれているの……どう思う?」

僕はなんて答えたらいいかわからなかった。アシャがパリに行くことは、僕らが別れることを意味しているのかもしれない、けれども、アシャにとって、こんなに幸運なチャンスはない。止めたいけれど、止められない。僕は黙ってしまった。

「おばあちゃんにはいつ返事するの?」

「明日。明日返事するって約束しちゃったの。 もちろん、あなたのことも話したわ。おばあちゃんはあなたとよく話し合いなさいといってくれたの」

冬のパリ ストーリーイメージ

「ね、歩きながら話さない? そういえば、公園の脇に、おいしいパン屋さんができたの知ってる?」

アシャは重苦しい雰囲気を消そうとしたのか、元気な声でいった。

「冬のパリは、ニューヨークよりも寒いらしいよ。アシャ、寒いの苦手でしょ」

「パリはきっと寒いよね……。でも……」

アシャはダウンジャケットのポケットに手を入れて、落ち葉を踏みしめて歩いた。

僕は「手をつなごう」といって、アシャの手を握った。

ウルトラライトダウンジャケット

こだわりを凝縮

ウルトラライトダウンは「ミニマル」にこだわります。まずは色の設計。表地、裏地、ファスナーなど各パーツの色見本を何度もつくり、色味の統一を徹底。

そしてシルエット。軽さと2層仕立ての着心地を成立させながら、制限ある中で洗練されたフォルムを作り出すために幾度もパターンを制作しました。さらに、薄くて柔らかい生地の縫製を美しく仕上げるため、縫い針や縫い糸、運針数、ミシンの調整に至るまで数々の試作を繰り返し、ベストなバランスを追及しました。

ウルトラライトダウンジャケット
ウルトラライトダウンジャケット

そしてシルエット。軽さと2層仕立ての着心地を成立させながら、制限ある中で洗練されたフォルムを作り出すために幾度もパターンを制作しました。さらに、薄くて柔らかい生地の縫製を美しく仕上げるため、縫い針や縫い糸、運針数、ミシンの調整に至るまで数々の試作を繰り返し、ベストなバランスを追及しました。

ぬくもりがほしいとき、
僕はこのダウンを着る。
そして街を歩くんだ。

松浦弥太郎
ウルトラライトダウンジャケット
066 MENウルトラ
ライトダウン
ジャケット
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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