100とは

コーデュロイシャツ(長袖)

コーデュロイシャツ(長袖)

家族というしあわせ

ある日の夕方。台所に立ち、料理を作っている母の後ろ姿。姉は食卓にノートを広げて絵を描いている。父が仕事から帰ってくる。台所からいい匂いが漂い、それまで静かだった食卓がにぎやかになっていく。父が食卓に座ると、晩ごはんがはじまる。家族四人が食卓につくと、僕はとびきりうれしい気持ちになった。家族みんなで食べる晩ごはんのひととき。幼い僕にとって、一日の中でいちばん好きな時間だった……。

「あなたは私と家族になりたいと思ったことある?」

突然アシャからこう聞かれたとき、僕はふとこんな光景を思い出した。

好きな人と家族になりたいか? その時まで僕は、好きな人とどんなふうに過ごしていきたいのかという、自分と相手という二人の関係のことしか考えたことがなかった。だから、その問いにどう答えたらよいかわからなかった。

好きな人との結婚の先には、当然、家族を築くというしあわせがあるのはわかる。しかし、好きな人と家族になりたい、という、あまりにストレートな発想にびっくりしてしまった。

「私はいつも好きになった人に対して、この人と家族になりたいかどうかを考えるわ。だって、たとえば、私とあなたが愛し合うのは、家族という未来を作るためだと思うから。けれども、とても好きだけど家族になりたいと思わない人もいるわ。それはそれで仕方がない。どうしても家族像が目に浮かばないというか……」

アシャは言葉を続けた。

「この人と家族になりたいって思う理由ってなんだろうと考えるけれど、それは理屈ではないし、言葉で表せるものでもないと思う。ある時、ふと思うことかもしれないし…。私は自分の家族を愛しているし、いつか自分の新しい家族を作りたいといつも夢見ているの。二人でも立派な家族でありたいの。それが私にとってのしあわせのかたちなのよ」

アシャは立ち上がって、座っている僕を後ろから抱きしめて、こう言った。

「答えなくて大丈夫。でも私の夢を知っておいてね。あなたが答えたくなったときに教えてくれたらいいわ」

アシャはそう言って、キッチンに立ち、お湯を沸かしてコーヒーを淹れる準備をした。僕はアシャの後ろ姿を見ながら、いつかの母の後ろ姿を重ねた。

家族というしあわせ ストーリーイメージ

「あなたにプレゼントがあるの」

コーヒーを注いだマグカップをテーブルに置いたアシャは、そう言って微笑んだ。

コーデュロイシャツ(長袖)

ベーシックにこだわる

高い保温効果が魅力のコーデュロイシャツは、秋口から冬にかけての強い味方です。今季はとことんベーシックに仕上げました。

凹凸の細かすぎないコーデュロイ素材に変更してカジュアル感をアップ。襟はボタンダウン仕様からレギュラーカラーにして羽織りとしても着ていただけるように。フロントは本前立てのスタンダードなデザイン。身頃はすっきりと、生地のドレープがきれいに見えるシルエット。レギュラーフィット展開なので幅広いスタイルの方に着用いただけます。

コーデュロイシャツ(長袖)
コーデュロイシャツ(長袖)

凹凸の細かすぎないコーデュロイ素材に変更してカジュアル感をアップ。襟はボタンダウン仕様からレギュラーカラーにして羽織りとしても着ていただけるように。フロントは本前立てのスタンダードなデザイン。身頃はすっきりと、生地のドレープがきれいに見えるシルエット。レギュラーフィット展開なので幅広いスタイルの方に着用いただけます。

コーデュロイシャツ(長袖)

ポカポカのシャツを着て

アシャは、畳まれたシャツを紙袋から取り出した。

「今日は、私とあなたが最初にデートをしてから3ヶ月の記念日よ。お祝いなんて変だけど、普段からいろいろと支えてくれていることの感謝をさせてね。このシャツをひと目見て、もし私が男だったら絶対に着たいと思ったから、あなたにどうかと思って…」

コーデュロイの上品なシャツだった。色はブラック。レギュラーカラーで、これからの季節にぴったりの肌ざわりだった。

「アイロンかけるからちょっと待ってて」

アシャは新品のシャツにアイロンをかけようとした。

「私のお母さんは、父にシャツを買ってくると、まずは自分でアイロンをかけてから父に着せてたのよ。新品なのにどうしてだろうと思っていたけど、わが家ではそれが当たり前だったの。母いわく、新品は畳みシワがあるし、まずは自分の手をかけてから、父に着せたいんだって。私その気持ちはよくわかるわ」

広げたシャツに霧吹きで水をたっぷりとかけ、アイロン台にのせて、アシャはシャツにアイロンをかけはじめた。

「コーデュロイだから、裏からアイロンをかけないとね」

コーデュロイの風合いをなくさないように、あて布を当てて、シャツの裏地にアイロンをやさしくかけて、アシャは生地を伸ばしていった。

「いいシャツってアイロンがかけやすくて、軽くかけるだけでぴしっとなるのよね。私はアイロンがけが大好きよ」

アシャはシャツの隅々まで、楽しそうにアイロンをかけて、最後にシャツの表面をブラッシングして、やわらかいコーデュロイの毛並みをそろえた。

「ね、ほら、新品よりも、すてきになったでしょ。さすが私のお母さんね。アイロンがけしたシャツを好きな人が着てくれるって嬉しいわ。はい、プレゼント」

アシャはシャツを僕に手渡した。

ポカポカのシャツを着て ストーリーイメージ

アイロンの熱でぽかぽかのシャツを、僕は羽織った。自分でアイロンをかけたシャツよりも数倍肌ざわりが心地よかった。ボタンをはめてアシャの前にまっすぐに立つと、アシャはパチパチと拍手をした。

「ほら、やっぱりあなたに似合うわ。私の勘は大当たり!」

「ありがとう、アシャ……」

「こちらこそよ……いつもありがとう」

「これ着て散歩に行きたい! 外に出かけよう!」

そう言うと、アシャは子犬のように飛び上がって喜んだ。

コーデュロイシャツ(長袖)

男のシャツとして

ボタンは壊れにくい本貝調のプラスチック素材、両脇の裾部分にはツイル織りの補強布(ガゼット)をつけた本格仕様。さらに直接肌の当たりやすいカフス、ヨーク裏には別布を用いて着心地を改善し、ヘビーデューティなシャツに仕上げました。

秋口は色を楽しんでサラリと1枚で、また今年は厚手ニットとレイヤードしてツイードジャケットを羽織り、デニムに足元はカントリーシューズなどを合わせたブリティッシュスタイルに挑戦してみるのもおすすめです。

コーデュロイシャツ(長袖)
コーデュロイシャツ(長袖)

秋口は色を楽しんでサラリと1枚で、また今年は厚手ニットとレイヤードしてツイードジャケットを羽織り、デニムに足元はカントリーシューズなどを合わせたブリティッシュスタイルに挑戦してみるのもおすすめです。

ジャケット感覚で、
ふわっと羽織って、
街を歩き回りたい。

松浦弥太郎
コーデュロイシャツ(長袖)
061 MENコーデュロイ
シャツ
(長袖)
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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