100とは

50色ソックス

50色ソックス

アシャの部屋

エチオピア生まれで22歳のアシャと僕の関係は、いわゆる恋人同士というよりも、友だちのような、家族のような関係が主で、恋人である関係はおまけのようだった。

イーストヴィレッジにあったアシャのアパートをはじめて訪れた時、部屋があまりに簡素で僕は驚いた。

12畳くらいのキッチン付きのリビングと、6畳くらいのベッドルームという間取りだったが、リビングには、小さな丸テーブルと椅子が2脚。壁に沿って作られた本棚があり、そこには本がぎっしりと収まっているけれど、それ以外の家具はなかった。木の床には何枚かラグが敷かれていて、そのラグの上でアシャは、くつろいだり、本を読んだり、あるときは服の勉強をしたりして、いつも過ごしていた。

「私、ソファーのある生活に慣れていないのよね。楽ちんだけど、こうして広い床に座っているほうが落ち着くわ。たしか日本人もそうよね。家の中では靴を脱ぐのも私にとっては当たり前だし」

アシャはそう言って、床にごろりと横になって、ヨガのポーズをとった。

「アハハ。アシャの部屋ってヨガスタジオみたいだね。でも悪くないよ。僕も子どもの頃は、日本ならではの畳というマットが敷かれた床で生活していたから、こうしているのはなんだか懐かしくて楽しいよ」

きれい好きなアシャは毎朝部屋の掃除をしてから出かけると言う。たしかに、アシャの部屋でくつろいでいる時、床はいつもピカピカに磨かれていて、ちりひとつ落ちていることはなかった。

「服のデザインをしたり、何か物事を考えたりする時、ごちゃごちゃした部屋よりも、何も無いようなすっきりした部屋のほうが、私は落ち着くのよね。ここニューヨークは隙間を見つけるものむつかしいくらいゴミゴミしているし、余白なんてひとつもないじゃない。だから、自分の部屋はいつも清潔で、気持ちいい風が通り抜けるようでありたいの。だから、こんなふうにモノがないのよね。そうそう、この前、ロウェナがウチに遊びに来たんだけど、『何ここ空き家?』っていうのよね。失礼しちゃうわ。でも、こうして彼女と床に座って、おいしいコーヒーを飲んでいたら、『意外と落ち着くわ』と言ってくれたのよ。でもテレビくらい買いなよといわれちゃった。大きなお世話よね。アハハ」

アシャの部屋 ストーリーイメージ

アシャの実家にはテレビが無かったという。その分、両親は彼女に本を買い与え、欲しい本はすべて買ってくれたらしい。「テレビは自分の時間を奪っていくような気がしてならない」とアシャは言った。前に付き合っていた彼氏はテレビが大好きだったらしく、彼の家に行くとずっとテレビがつけっぱなしになっていてそれが嫌だったとも言った。

「アシャが暮らしの中で大切にしていることって何?」

床で寝転んで、窓からそよぐ風を味わうように目を閉じていたアシャに僕は聞いてみた。

50色ソックス

ユニクロの大定番として

コーディネートを選ばない細かいリブ編み、カラバリ豊富な50色展開、さらに消臭機能も付いたユニクロを象徴する定番ソックスです。

芯となるポリウレタン弾性糸にナイロンを巻きつけた加工糸“フィラメントツイストヤーン”を使用することで、締め付けのない絶妙なはき心地が実現。ほどよい厚みは、スニーカーはもちろん、滑りやすい革靴の中でズレて邪魔になることはありません。オンでもオフでも活躍間違いなしのLifeWearです。

50色ソックス
50色ソックス

芯となるポリウレタン弾性糸にナイロンを巻きつけた加工糸“フィラメントツイストヤーン”を使用することで、締め付けのない絶妙なはき心地が実現。ほどよい厚みは、スニーカーはもちろん、滑りやすい革靴の中でズレて邪魔になることはありません。オンでもオフでも活躍間違いなしのLifeWearです。

50色ソックス

自分の頭で考える

アシャは静かに目を開けて、ゆっくりと起き上がって、あぐらをかいて座ってこう言った。

「まずは自分の頭で考える、ってことだと思う。さっきも言ったけれど、こんなふうにすっきりした空間を大事にしているのも、できるだけリラックスして、考える時間を大切にしているからなのよ。人は普通に暮らしていても、人生を悩んだり、未来に不安を抱いたり、今日の問題に向き合ったり、どう解決しようか、どう対処しようか、どっちにしようかと選ばなくてはならないことばかりじゃない? でもそういうことを、あたかも、どうでもいいとばかりに自分の頭で考えずに、世の中や便利なことに頼って、ま、いいかとしてしまうことって多いと思うの。自分自身の問題に無関心になるって一番よくないわ」

アシャはゆっくりと静かな言葉で話した。

「うん、確かにそうだね。困ったことや、できないことや、わからないことが起きたとき、知識や情報に頼って、たとえば普通こうだからとか、みんながこうしているとか、今までこうだったからという知識からの判断で、ひとつも自分の頭で考えてない場合が多いと思う。確かに知識も情報も必要だけど、まずはじっくりと自分で思考することは暮らしに大切なことだね」

「そう、あなたの言う通り、思考するのが大切。それなのに今の世の中って、思考する時間を作るのがむつかしいくらい忙しくなっているのが怖いわ。人に思考させないようにしてるのかしら」

「私ときどき思うんだけど、自分が何かにコントロールされているんじゃないかって怖くなるときがある。ここにはテレビも新聞もないけれど、外で仕事をしていると、否が応でもいろんな情報が耳や目に入ってくる。だからこうして、静かで、広くて、一人でいられるゆったりした部屋が、私には必要なの。日々の困ったこと、怖いこと、不安なことを自分の頭で考えるために……」

アシャは脱いだソックスをくるくるっと丸めて裸足になった。小麦色をしたアシャの肌に、白くて小さな貝殻のような足の爪がかわいく見えた。

自分の頭で考える ストーリーイメージ

「ねえ、ソックスって何色が好き? 私は自然をイメージしたアースカラーが好き。ブラウン系とか、グレー系とか、そういうの」

「僕はグレーが好き。どんな服にも合うからね。あとは白かな」

「あなたはいつも白を選ぶよね。すてきよ」

アシャは丸めたソックスを指で転がしながら言った。

「私ソックスを丸めると、いつもお母さんを思い出すの。お母さんはいつもこんなふうに洗濯したソックスをひとつひとつ几帳面に丸めていたなって。日本でもソックスって丸める?」

「僕のお母さんは、こうするんだ」

僕は丸まったアシャのソックスを一度広げて、ソックスのリブの部分だけを丸めて、左右のソックスをひとまとめにした。

「あ!それはお父さんのやり方と一緒!アハハ。あなたってほんとうに私のお父さんと似てるのね」

そう言ったアシャは僕の額にキスをして、「とっても楽しいわ」と言った。

50色ソックス

足元から色遊びを

発色にこだわり、ソリッドカラーは鮮やかさを大切に糸から染色。杢や霜降りは立体的で表情豊かな色糸を編み込みました。

春夏と秋冬シーズンでは、トレンドを加味した新色を入れ替え。流行の色をまずはソックスから取り入れてみるのもおすすめです。ソリッドカラーの白、黒、ネイビーはスーツやフォーマルな装いに、杢や霜降りはヴィンテージチノやデニムと相性抜群。またワントーンコーディネートでの色合わせや、ワンポイント使いなど、いつものスタイルの幅を広げてくれる自慢のアイテムです。

50色ソックス
50色ソックス

春夏と秋冬シーズンでは、トレンドを加味した新色を入れ替え。流行の色をまずはソックスから取り入れてみるのもおすすめです。ソリッドカラーの白、黒、ネイビーはスーツやフォーマルな装いに、杢や霜降りはヴィンテージチノやデニムと相性抜群。またワントーンコーディネートでの色合わせや、ワンポイント使いなど、いつものスタイルの幅を広げてくれる自慢のアイテムです。

嬉しいソックスって、
どんなソックスなのかを、
とことん考えたのです。

松浦弥太郎
50色ソックス
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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