100とは

感動パンツ

感動パンツ

着こなしを

「トップスは、どんなにカジュアルでもいいけれど、パンツはきれいなラインがプレスされた、上質なスラックスをはくといいわ。Tシャツにきれいめのスラックスという、シンプルなコーディネートって、私すごく好き」

アシャは僕によくこう言った。それまでは、カジュアルか、フォーマルか、そのどちらかしか自分のスタイルにはなかったが、こんなふうに、カジュアルとフォーマルを混ぜたような、ファッションセンスという言い方がよいのかわからないが、服の選び方や組み合わせ、こんなふうにしたらいい、という着こなしについて、僕はアシャからたくさん教わった。

一言で言うと、普通だけどおしゃれ。

一般的に男というのは、好きな服についてのこだわりは強く、身に着けたら、それで満足してしまう傾向がある。しかし、コーディネートやバランスまでを考えていないので、いいものを身に着けているかもしれないが、すてきに見えない、というパターンが多い。正直、僕自身がそうだった。

「何を着るかよりも、どう着るかのほうが大切で、その人が何を着ていたかという印象よりも、どんな着こなしをしていたかという印象のほうが記憶に残るのよ。服が人を輝かせてくれるのではなく、着こなしが人を輝かせるの。あのね、私はそんな提案ができる服を作りたいの」

カフェで働きながらファッションビジネスを学んでいるアシャはこんなふうに話した。

アシャの着こなしはまさにそうで、周りの女性が彼女を見て、真似したくなるのは着ている服ではなく、彼女のように着こなすことだったりする。

その日のアシャは、きれいにプレスされたカーキ色のワイドパンツに、白いサマーニットのアンサンブルを着て、真っ白なテニスシューズをはいていた。そして、首元にさらりと巻いた黄色のスカーフがアクセントになっていた。姿勢良く歩くアシャに、道行く人は皆、目を奪われた。

着こなしを ストーリーイメージ

「男の人のTシャツにデニムのスタイルもすてきだけど、靴をスニーカーにしてしまうと、うーん、悪くはないけれど、ちょっと子どもっぽいというか、カジュアル過ぎるかもね。まあ、休日ならいいけれど。だから、スニーカーを革靴にするだけで、ぐっと印象が変わるのよ。その場合ソックスはショートか、素足がいい」

こんなふうに、アシャは会うたびに、僕の着こなしにダメ出しをしてくれた。それもいいけれど、こうするともっとよくなるよ、という言葉のおかげで、いつだって僕は素直に耳を傾けられた。

そして、バランスよく着こなせた時は、心から「とってもすてき」と、ほめてくれるのだった。特に、きれいにプレスされたスラックスをはいていると、ニコっと笑って、「すてきよ」と言ってくれた。

こんなふうに、僕は在りし日のアシャを思い出して、再びニューヨークにやってきた。

感動パンツ

おどろきのはきやすさ

超軽量・超伸縮・超速乾がコンセプトの感動パンツです。英国に起源を持つトラウザーパンツが持つ、品格はあるけど動きづらい、伸びないという常識を変えたアイテムです。

生地は東レと開発したポリエステル100%の、糸からこだわったオリジナル素材。足通りのスムーズさと、空気のようなはき心地に驚いていただけるはずです。生地だけでなく、ウエスト部分もストレッチ仕様。どんな動きにも締め付けを感じることはありません。

感動パンツ
感動パンツ

生地は東レと開発したポリエステル100%の、糸からこだわったオリジナル素材。足通りのスムーズさと、空気のようなはき心地に驚いていただけるはずです。生地だけでなく、ウエスト部分もストレッチ仕様。どんな動きにも締め付けを感じることはありません。

感動パンツ

キッチンで

暮らしていたアパートのキッチンは、右の壁側にシンクとガス台があり、左の壁側は作業台があり、その下は収納になっていた。その壁と壁の間、そう、人が一人動けるくらいの空間に、木の白いスツールを置いてみた。ちょこんと。

スツールは三本足の北欧メイドで、実を言うと、道端に捨てられていたのを拾って、白いペンキを塗ったものだ。

小さなキッチンに置いたスツールに腰掛けると、まるで乗り物のコクピットに座ったような、懐かしい居心地良さを感じた。子どもの頃に押入れに入った時のような、なんだか、ここにずっと座っていたいような感じ。

ブーンという換気扇のファンの音や、大して料理をしないくせに買ってしまった、いろいろなスパイスの混ざった匂いも、不思議なことに、却って心地良い理由になっていた。手を伸ばせば何でもある感じもうれしかった。

キッチンっていいな。

そんなふうに、アパートの中で新しい居場所を見つけてしまった僕は、部屋に帰ると、そこに座り、コーヒーを飲み、読書をしたり、新聞を読んだり、時には昼寝をしたり、ぼうっとしたりして過ごした。座った位置から小窓を覗くと見える、庶民的な教会の景色にもいやされた。

そうそう、アシャにはじめて手紙を書いた場所も、このキッチンだった。

キッチンで ストーリーイメージ

ユニオンスクエアパークの目の前にある、「コーヒーショップ」という名のカフェに通うようになり、そこで働くアシャと知り合った。

顔を合わせれば、二言三言話すようになってから一週間ほど経ったある日、いつしか僕はアシャに会うのが楽しみになっていた。

どんなにつらいことがあっても、どんなに不安なことがあっても、彼女の笑顔で何もかもが吹き飛んで、明るい気持ちになれた。

この気持ちを言葉で伝えたくて、せめて「いつもありがとう」という感謝だけでも言葉で伝えたくて、そのチャンスを待っていた。

しかし、働くスタッフの中でも大人気のアシャと二人きりになるのは難しかった。それならば、彼女に手紙を書こうと思った。手紙を渡すことくらいはできるだろう。そう思って僕はペンを取った。

これってラブレター? いやいや、「ありがとう」を伝えるだけさ。何をどう書こうか?どんな便箋、もしくはポストカードを使おうか。そんなことを考えたらドキドキしてきた。

アシャの顔、瞳、立っている姿を思い浮かべると、僕は、ますます何を書いたらよいかわからなくなった。

何も書かずに、ただただ、キッチンのスツールに座って過ごすばかりだった。そういえば、手紙なんてしばらく書いてなかった。

胸が痛くなった。

感動パンツ

夏場のあらゆるシーンに

ポケット裏の当て布、ウエスト周りには特殊加工で格子状に穴をあけた「Air dots」を使用。さらに抗菌防臭機能をプラスして夏場にうれしいアップデート。素材は超軽量でストレスフリーなはき心地の「ウルトラライト」で、ウールライクとコットンライクを展開することで幅広い着こなしを楽しんでいただけます。

ビジネスやゴルフはもちろん、アンクル丈に裾上げすればスマートな街着としても活躍すること間違いなしです。

感動パンツ

ビジネスやゴルフはもちろん、アンクル丈に裾上げすればスマートな街着としても活躍すること間違いなしです。

今日は、
何回感動するかな?
それが楽しみで、
選んでいる。

松浦弥太郎
感動パンツ
041 MEN感動パンツ
(ウルトラライト・
ウールライク)
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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