100とは

プレミアムリネンシャツ(長袖)

プレミアムリネンシャツ(長袖)

仕事の証を

ペギーさんの顧客のために、二千冊の本を収集し、新しく誂えた本棚に収める仕事は無事に終わった。

顧客は、たくさんのゲストを招待し、インテリアの主役になった本棚と本のお披露目パーティを開いた。

「ランボーの『地獄での一季節』と、エドワード・ウエストンが撮った希少な写真集『草の葉』の横に、鈴木大拙の禅の本があり、その隣にはケルアックの『路上』の初版がある。エズラ・パウンドとエリオットの貴重な詩集や、『ホビットの冒険』の初版揃い、O.ヘンリーのニューヨーク短編集もある。なんてすばらしいセレクトなんだ。出来ることなら本棚そのまま持ち帰りたくなるくらいだ」

ある著名な詩人は、本棚の本をくまなく見てこう言い放ったという。

「実を言うと、これらの本は僕が集めたのではなく、二人の若い書籍商が、僕のためにニューヨーク中から集めてくれたものなんです。僕ではなく、彼らの素晴らしいセンスなんです。僕はこれから一冊一冊読んで、この本が飾り物にならないようにしたいと思います」

顧客は、こんなふうにスピーチをして、その場にいない僕とジャックに敬意を表してくれたと、ペギーさんは嬉しそうに話してくれた。 その謙虚さにゲストは感動し、とてもいいパーティだったと言った。

その数日後、顧客から僕とジャックに、特別ボーナスがメッセージとともに届けられた。

「すてきな本をありがとう。これからの人生における新しい友だちとして、大切に読ませていただきます。二人の仕事に、敬意と感謝を送ります。ありがとう」

僕とジャックはいただいたボーナスを使って、リトルイタリーの小さなレストランを貸し切り、本の収集にちからを貸してくれた古書店店主、コレクター、ブックハンターらを招待し、ワインと料理を振る舞った。

仕事の証を ストーリーイメージ

僕とジャックは、集めた二千冊すべての本に、ある仕掛けを施していることをみんなに話した。

本の扉ページの裏の片隅に、米粒ほどの大きさの「YJ&CO」というスタンプを押したことだった。それは僕とジャックと仲間たちという印で、今回の仕事の証を本のどこかに残したかったのだ。だから、万が一、その印のある本が市場に流れたら、ただちに引き取って自分の手元に置いてほしい、と。そして、コピーした二千冊のブックリストを全員に配った。

「そんな仕掛けをしてあるのか。そりゃ嬉しい。買ってもらった本でもあるけれど、集めたのは僕らだ。これだけセンスの良い二千冊の本を集めるのは、もう二度と出来ないし、僕らでなければできない仕事だった。その証がある本はさらに希少になるぞ! そうだ、このブックリストも希少といえば希少だ」と、ブックハンターの一人は言った。

「確かにもう出来ないだろう。というか、これだけの本はもう揃わないだろう……」

ニューヨークで四十年、古書店を続けている店主はこう言った。

「さあ、みんな乾杯しよう」

僕らは夜通し飲み食いしながら、互いの仕事を称えあい、その喜びを分かち合った。

プレミアムリネンシャツ(長袖)

最高級のリネンシャツ

ユニクロのこだわりと情熱を込めたリネン100%のシャツです。最高級のリネンを生み出すことで知られるフランス・ノルマンディ地方。その中でもナンバー1のメーカーに原料となるリネンづくりを依頼。その後の紡績、パターン、縫製といったシャツ作り全ての工程を信頼する中国の会社と一貫して製作しました。

たくさんのお客様に本物のリネンシャツをお届けしたい。フランスと中国、ユニクロのパートナーシップが最高品質とコストパフォーマンスを実現しました。

プレミアムリネンシャツ(長袖)
プレミアムリネンシャツ(長袖)

たくさんのお客様に本物のリネンシャツをお届けしたい。フランスと中国、ユニクロのパートナーシップが最高品質とコストパフォーマンスを実現しました。

プレミアムリネンシャツ(長袖)

朝のドーナツ屋で

「さあ、これからどうする?」とジャックは言った。

「君はもう一人前のブックハンターだ。ここニューヨークで仲間もいる。コレクターのクライアントもいる。ペギーさんからの仕事もある。僕がいなくても本の仕事はいくらでもやっていけるだろう」

僕とジャックは、リトルイタリーからの帰り道、ブロードウェイを歩きながら話した。

「うん、僕はニューヨークに来て、ジャックと出会って、本の仕事を通じていろいろなことを学ばせてもらった。それは、本の仕事に限ったことではなく、どんな仕事にも通じる大切なことばかりだった。その多くは人と人とのつながりというか、すべてはコミュニケーションだということを知ったんだ。コミュニケーションとは何か。それは相手に愛情を伝えることだとわかったんだ。仕事とは、困っている人を助けること。そのために世の中の人の感情を深く理解すること。そういうことを僕はニューヨークという街で気づいたんだ」

僕は独り言のように話した。

「ああ、そうだね。君が気づいたことはほんとに大事なことだ。その気づきという種を、これからどんなふうに育てて、どんな花を咲かせたいのか、よく考えるといい。それが君のこれからのビジョンだね、きっと」

ジャックは夜が明けようとして青くなった空を見上げて言った。

「それより今日、君が着ているリネンのシャツいいな。リネンのシャツは、着て二日目の身体になじんだシワがなんとも言えない良さがある。それ二日目だろ」

「これはジャックからもらったシャツだよ。元々、自分のものだったのに何言ってんの?」と僕は笑った。

「そっか。同じ服でも着る人によって、違って見えるな。君のほうが似合ってる」とジャックは言った。

「ビジョンの話だけど、明日、『コーヒーショップ』で出会ったアシャと会うんだ。彼女も自分のビジョンが何かを今探している。もしかしたら、僕と彼女のビジョンが重なるかもしれない。そんな予感がしているんだ」

「アシャはいい子だ。あんなピュアな子は珍しい。君らは同じ世界を生きているから、きっと何か新しい扉を開くことが出来ると思うよ」

ジャックは僕の言葉にこう答えた。

「でも、一度、僕は日本に帰る。今まで身勝手に旅を続けてきたから、親孝行をしたいんだ。自分の経験が日本で役に立つかもしれないし。そしてまた必ずニューヨークに来るよ」と僕は言った。

「君はもう僕のルーティンを知っているね。だから、いつニューヨークに来ても、僕を捕まえられるだろう」とジャックは笑って言った。

朝のドーナツ屋で ストーリーイメージ

「さあ、あったかいコーヒーを飲んで帰ろう」

ジャックは僕らがはじめて一緒にコーヒーを飲んだドーナツ屋のドアを開けた。朝のドーナツ屋は、揚げたてのドーナツの甘い香りが充満していた。

僕とジャックはコーヒーを注文し、カウンターに座り、何も語らずにぼんやりと過ごした。

「僕らはここで別れよう……」

ジャックはカウンターに肘をつき、マグカップを両手で包みながら言った。

「うん、そうだね」と僕は答えた。

第一部・終

プレミアムリネンシャツ(長袖)

極上の着心地と楽しみ

生産段階で空気を含ませてふんわりさせる「エアタンブラー加工」を行い、ゴワつきのないコットンのような柔らかさを実現。またリネン素材では避けられない生地表面のネップ(糸のかたまり)を全て手作業で取り除き、極上の風合いを生み出しています。

今季は色付けにもこだわりました。13色の無地、6色のストライプとチェックをご用意。先染め、後染め、デラヴェ加工(特殊な染めの一種)と、色ごとに最適な染め方を採用して表情豊かなバリエーションを展開しています。

プレミアムリネンシャツ(長袖)
プレミアムリネンシャツ(長袖)

今季は色付けにもこだわりました。13色の無地、6色のストライプとチェックをご用意。先染め、後染め、デラヴェ加工(特殊な染めの一種)と、色ごとに最適な染め方を採用して表情豊かなバリエーションを展開しています。

夏だけでなく、
一年中着たくなる、
リネンの肌さわり。

松浦弥太郎
プレミアムリネンシャツ(長袖)
038 MENプレミアムリネンシャツ
(長袖)
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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