100とは

ブロックテックパーカ

ブロックテックパーカ

夜中の電話

評価額の査定をするために、ウォーホルの「A GOLD BOOK」をケンに預けたことをジャックに話した。

「一言、僕に相談してくれたらいいのに……。預り証も何も交わしてないんだろ?」とジャックはため息をついた。

「うん。僕は、僕自身でケンと出会い、いろいろと話しをする中で、本の注文も受け、彼とのこれからの関係を築いていくためにも、リスクを承知で、あえて彼を信用し、あの本を預けたんだ」と僕は話した。

「君は一万ドル以上のキャッシュを数えてもらうがために、見ず知らずの他人に預けて、何も問題なく戻ってくると思っているのかい。いいか、ここはニューヨークだ。証書なしの口約束なんて、何が起きても、意味を成さないんだ。泣き寝入りするぞ」とジャックは言った。

ケンは夜には査定が終わるだろうから、結果がわかったらすぐに電話をすると言っていた。時計を見ると、20時を過ぎていた。僕は部屋の電話が鳴るのをじっと待っていた。

すると、すぐに電話のベルが鳴った。

「連絡が遅くなって申し訳ない。実はまだ査定が終わってないんだ。というのは、知人の仕事が終わらず、それを待っている状況で、もう少し遅くなるかも。なので、今日はもう遅いので、明日の午前中には必ず連絡をするよ。それでいいかい?」とケンは言った。

「わかった。電話をしてくれてありがとう、ケン。明日の午前中の返事を待っています」と答えて電話を切った。

ブロドヴィッチの献呈署名が入った、ウォーホルの「A GOLD BOOK」の市場価値は一万五千ドルを下ることはないとジャックは言った。

万が一、本が戻ってこなかったらどうしよう……。「この本を好きな人に持ってもらいたい」と言った年老いた女性の気持ちと、価値があることを知りながら、なぜか破格の安値で僕に売ってくれた古書店の店主の気持ちを思うと、胸がはちきれそうになった。

その晩、僕は寝ることができず、窓の近くに置いた椅子に座って、毛布を被りながら、そこから見える夜のブロードウェイをぼんやりと眺めて過ごした。

そうしながらも、うとうとしていると、電話のベルが鳴った。びっくりして受話器を取ると、ケンの声が聞こえた。

夜中の電話 ストーリーイメージ

「大変なことが起きた……。今すぐ会うことはできるかい? 君のアパートの近くに24時間営業のドーナツ屋があるだろう。30分後にそこで待ち合わせしよう」

ブロックテックパーカ

ファンクションの更新

ユニクロ自慢のブロックテックパーカは、お客様からの声をもとに、さらなるアップデートを行いました。防水・防風・耐久撥水・ストレッチ機能に加えて生地の裏面をサラサラした感触の素材へ変更し、透湿機能をプラス。汗によるムレやベタつきの心配がなくなりました。

その秘密は表地(1層)+特殊フィルム(1層)+特殊プリント(0.5層)の2.5層構造にあります。このフィルムとプリントが湿気を逃す機能を持っているのです。

ブロックテックパーカ
ブロックテックパーカ

その秘密は表地(1層)+特殊フィルム(1層)+特殊プリント(0.5層)の2.5層構造にあります。このフィルムとプリントが湿気を逃す機能を持っているのです。

ブロックテックパーカ

真夜中のブロードウェイ

何が起きたのだろう? この事態をジャックに連絡をしたほうがいいのだろうか? いや、これは僕自身の問題だ。今更ジャックを巻き込むわけにはいかない。僕は着の身着のままで外に出た。

夜中の2時のブロードウェイはしんと静まり返っていた。冷たい風に身体がブルッと震えた。上着を着るのを忘れた僕は、あわてて部屋に戻り、買ったばかりのフードのついたポリエステルのパーカーを羽織った。セントラルパークをランニングするために選んだものだった。

待ち合わせをしたドーナツ屋まで走っていると、まるで夜中にランニングしているニューヨーカーのようだと思った。

ドーナツ屋に着くと、ケンはすでに着いていて、神妙な顔をしてカウンターのスツールに座っていた。

「夜中に呼び出してごめん。まずは本を君に返すよ」

ケンは、僕が預けた「A GOLD BOOK」を返してくれた。しかも、本が痛まないようにきれいにラッピングされていた。

「知人にこの本の査定をしてもらうと、たまたまその場にいた上司に見つかり、一緒に査定してもらったんだが、この本を見た途端、大騒ぎになった。この本はどう低く見積もっても、2万ドルはすると言うんだ。しかも、こんなにきれいなコンディションの『A GOLD BOOK』は、おそらくウォーホル財団でさえ持っていないだろうと。よって、しかるべきタイミングで、オークションに出品するのが適切という結果なんだ」とケンは言った。

ケンはにっこりと笑って、「よかったね、それを君に早く伝えたくて駆けつけたんだ」と手を出して僕に握手を求めた。

「ケン、ありがとう」そう言うと、ケンはまるで自分のことのように喜んだ。

「とりあえず、まずは本を持ち主に戻して、一通りの報告をすると言って帰ってきたんだ」ケンの顔は、自分の役目をしっかり果たしたという達成感に満ちていた。

僕とケンはコーヒーで乾杯をして、軽くハグをし合った。

「あとは君の判断だ。こんな希少な本が発見されたというストーリーは,『ニューヨーク・タイムズ』も飛びつくだろうし、僕ごときのコレクターからすると、手にとって見れただけでしあわせなんだ。ほんとにありがとう」とケンは言った。

真夜中のブロードウェイ ストーリーイメージ

僕は迷うことなく決めた。

「この本はケンに売るよ。いや、ケンに持っていてもらいたい。僕の最初のクライアントとして、どうかこの本を受け取ってもらえないかい?」と僕はケンに言った。

「いやいや、無理だ。僕は、こんな高い本を買えるほどのお金は持っていないよ」と、ケンは手をブルブルと横に振りながら言った。

「金額はどうでもいいんだ。じゃあ、こうしよう。僕はこの本を、この店に忘れて置いて帰るよ。君は拾えばいい。じゃあ、また! あ、コーヒー代よろしく!」と言って、僕は本をカウンターの上に置いた。

「おいおい、ちょっと待てよ!」とケンは僕を追うようにスツールから降りたが、僕はすでにドーナツ屋を出て、真夜中のブロードウェイを走っていた。

僕は、なんだか嬉しくて嬉しくて、うさぎのように飛び跳ねるようにして走って帰った。

ブロックテックパーカ

もっと着やすく、もっと快適へ

縫い合わせによる余分な生地を極限まで減らすことで、より美しいフードの開きが実現しました。ポケットはダーツを入れることで収納力を確保し、モノを入れた時の膨らみを軽減。首裏にはループを取り付け、フックに引っ掛けて干せるようにしました。

袖口はステッチを廃止してソリッドな圧着仕様に、フードや裾のストッパーはシンプルに変更。ミニマルに仕上げました。スポーツからタウンユースまで幅広く愛用いただける自信作です。

ブロックテックパーカ
ブロックテックパーカ

袖口はステッチを廃止してソリッドな圧着仕様に、フードや裾のストッパーはシンプルに変更。ミニマルに仕上げました。スポーツからタウンユースまで幅広く愛用いただける自信作です。

なるほど、ありがとう。
なるほど、たすかる。
と、着るたびに言葉が出る。

松浦弥太郎
ブロックテックパーカ
029 MENブロックテック
パーカ
閉じる

LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

閉じる閉じる