100とは

ウォッシャブルVネックセーター

ウォッシャブルVネックセーター

誰に、いくらで売るか

20ドルで手に入れた、アンディ・ウォーホルの「A GOLD BOOK」を売却することにした理由はふたつあった。

ひとつは、この本を心から欲しいと思っている人がいるなら、その人の元に置かれることが、本にとって一番いいと思ったこと。

もうひとつは、誰も信じないような値段で買うことができたのは、これから学ぼうとしている本探しの仕事をはじめるチャンスだと思ったこと。

「誰に、いくらで売るんだい?」と、ジャックは僕に聞いた。

売りたいものを持っていても、それを誰に売ったらよいのか、僕にはわからなかった。そこで思い出したのは、ジャックが教えてくれた「熟知」という言葉だった。

「まずは、ニューヨークでアートブックを収集しているコレクターを徹底的に調べて、その中で『A GOLD BOOK』を、最も探している人を見つけようと思う」と僕は答えた。

「そうだ。客のことを熟知すること。それが最初の一歩だね」とジャックは言った。

僕は、週三日のジャックの本探し以外の日で、アートブックコレクターについての徹底したリサーチを始めることにした。

とはいっても、アートブックは、ジャックの仕事の範疇でもあったので、そこで知り得ることも多かった。

ジャックは、コレクターの顔をした、ブローカーにだけは売ってはいけない、と言った。彼らは自分で本を探すことなく、苦労せずに右から左に本を売りさばくだけで、その利ざやだけを目的にしているからだ。

もちろん、それでビジネスが成り立つなら良いとするブックハンターもいるけれど、大事なのは、真のコレクターとの取引だと、ジャックは教えてくれた。

「いいかい、ブローカーの後ろには誰一人いない。しかし、真のコレクターの後ろには最低でも10人のコレクター がいる。いや、もっといるだろう。だから、真のコレクターと良い取引をすることで、自分の実力が自然とコレクターの輪に広まっていくんだ」

「僕は本の話をしたいからね。ブローカーはお金の話しかしないんだ。だから、いくら儲かるといっても、僕はブローカーから距離感を持って仕事をしている」とジャックは言った。

それには僕も同感した。

誰に、いくらで売るか ストーリーイメージ

そんなある日、僕は「ストランド書店」のビルの階上にある、希少本専門とする売り場を訪れた。そこは、古本ではなく、19世紀の美しい挿絵本といった、いわゆる価値の高い古書が整然と並び、部屋の雰囲気も、本というよりも、ギャラリーのようだった。

すると、どこかで聞いたことのある声が聞こえてきた。そちらの方を振り向くと、そこには「A GOLD BOOK」のいざこざの際、その場にいたジャックの顧客の老紳士の姿があった。

ウォッシャブルVネックセーター

お客様の声を聞くこと

春の新作より、素材をスーピマコットンに変更しました。これまで採用していたコットンカシミヤは、風合いは良いものの「毛抜け」の問題がある。これはシャツを着る機会の多い男性のお客様からいただいた声でした。

何度も試行錯誤を繰り返し、表地糸に希少なスーピマコットンを、裏地にナイロン糸を使用した新たな生地を開発。毛抜けは大幅に軽減され、滑らかな風合いを持ちながら毛玉ができにくく、かつ洗濯機でも洗えるセーターが完成しました。

ウォッシャブルVネックセーター
ウォッシャブルVネックセーター

何度も試行錯誤を繰り返し、表地糸に希少なスーピマコットンを、裏地にナイロン糸を使用した新たな生地を開発。毛抜けは大幅に軽減され、滑らかな風合いを持ちながら毛玉ができにくく、かつ洗濯機でも洗えるセーターが完成しました。

ウォッシャブルVネックセーター

赤色のセーター

「こんにちは。お元気ですか?」と僕は老紳士に声をかけた。

老紳士は僕のことを忘れていたようで、「どこでお会いしましたか?」とていねいに答えてくれた。

あの時の経緯を話すと「ああ、あの時の日本の方でしたか。失礼しました」と老紳士は握手を求めて、あいさつをしてくれた。

「ひとつ教えていただいてもいいでしょうか?僕はこれからジャックからブックハンターの仕事を教えてもらおうと思っているのですが、アートブックのコレクターの方々はどの古書店に一番いるんですか?コレクターのことを学びたいんです」と僕は聞いた。

「ニューヨークには古書店がいくつあるか知っているかい?おそらく200以上はあるだろう。しかし、その中で路面店は半分くらい。残りの古書店は、路面店ではなく、ビルの一室で予約制の古書店として存在しているんだ。多くのコレクターは、こういった予約制の古書店に出入りしているもんだよ」と老紳士は言った。

親切な老紳士の顔を見ていたら、あの後、「A GOLD BOOK」を手に入れた話を思わずしたくなったが、僕は我慢をした。老紳士はジャックの顧客であるからだ。

ニューヨークにはたくさんの古書店がある。しかし、ビルの一室で、ひっそりとコレクター相手に商売をしている古書店もたくさんあることを僕ははじめて知った。

「アートブックならここに行けばいい」と老紳士は、バッグの中からメモ帳を出し、店の名前と電話番号を書いて僕に渡してくれた。

「私の紹介だと言えば、きっといろいろと教えてくれるだろう」と老紳士は言った。

赤色のセーター ストーリーイメージ

その日の老紳士の出で立ちは、真っ白のボタンダウンシャツの上に、赤色のVネックセーターを着こなしていた。

「赤いセーターがお似合いですね」と僕が言うと、「これは娘にプレゼントされたんです。この歳で赤はちょっとどうだろうと思い、自分ではなかなか選ばない色ですが、着ていると必ず人に褒められるので、男でも赤のセーターはいいものだと思っているんです」と老紳士は照れくさそうに言った。

老紳士は自分の名刺を僕に渡して、「何かあったらいつでも連絡をください。私が何者かはジャックから聞くといい」と言った。

僕はふと、来月に控えた父の誕生日に、赤いセーターをプレゼントしようと思い立った。

別れ際に、「今日は何か、本を買ったのですか?」と聞くと、老紳士はバッグの中から一冊の本を僕に見せてくれた。タイトルには「Please Plant This Book」とあった。

「かわいらしい本でしょう。リチャード・ブローティガンを知ってますか? この本は、彼の詩集なんです」と老紳士は言った。

表紙には、小さな女の子の写真が印刷されていた。

「私の娘の小さな頃に似ているんです」と老紳士は言った。

ウォッシャブルVネックセーター

こだわりのフォルム

繊維が長いスーピマコットンはしっとりとしたドレープとやさしい肌触りが特徴。裏地にナイロンを這わせることで型くずれしにくく、永くご愛用いただけます。ベストなバランスを探したVネックの深みは、Tシャツでもシャツでも楽しめる日々の味方。

袖付けと肩周りの構造は腕の可動域に沿った設計、ボディラインに馴染むデザインに。袖と裾のリブはボディの付け根から段階的に編みのテンションを変え、ストレスにならない自然なフィットに仕上げています。

ウォッシャブルVネックセーター
ウォッシャブルVネックセーター

袖付けと肩周りの構造は腕の可動域に沿った設計、ボディラインに馴染むデザインに。袖と裾のリブはボディの付け根から段階的に編みのテンションを変え、ストレスにならない自然なフィットに仕上げています。

普段、自分では、
選ばない色を選んでみる。
すると、みんなからほめられる。

松浦弥太郎
ウォッシャブルVネックセーター
023 MENウォッシャブルVネックセーター
(長袖)
閉じる

LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

閉じる閉じる